Ch.9_マネジメントの戦略①|ドラッカーを読み解く #7

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
#1では第1章、#2では第3章、#3では第5章、#4では6章、#5では7章、#6では8章について取り扱いました。

Ch.1_企業の成果|ドラッカーを読み解く #1 - lib-arts’s diary

Ch.3_仕事と人間|ドラッカーを読み解く #2 - lib-arts’s diary

Ch.5_マネジャー|ドラッカーを読み解く #3 - lib-arts’s diary

Ch.6_マネジメントの技能|ドラッカーを読み解く #4 - lib-arts’s diary

Ch.7_マネジメントの組織|ドラッカーを読み解く #5 - lib-arts’s diary

Ch.8_トップマネジメント|ドラッカーを読み解く #6 - lib-arts’s diary
#7では第9章のマネジメントの戦略の中からSection40の規模のマネジメントからSection42のグローバル化のマネジメントについて取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. マネジメントの戦略①(Ch.9)
1-1. 規模のマネジメント(Section40)
1-2. 多角化のマネジメント(Section41)
1-3. グローバル化のマネジメント(Section42)
2. まとめ


1. マネジメントの戦略①(Ch.9)

1-1. 規模のマネジメント(Section40)
・本の内容の要約
物体の表面積は直径の二乗倍、容積は三乗倍で増加するのと同様に、組織の場合も容積や重量は表面積をはるかに上回って増加するので注意が必要である。この表面積と容積に関する法則は、規模と複雑さとの間に密接な関係があることを意味し、組織が大きくなれば中身の大部分が外部環境から遠ざかることに起因する。そのため内部機関が複雑になり、このように規模は複雑さを左右し逆に複雑さは規模を左右する。
同様に規模は戦略に影響を及ぼすし逆に戦略も規模に影響を及ぼす。小さな組織には大きな組織にはできないことができるし、逆に大きな組織には小さな組織にできないことができる。また、産業別市場別にそれ以下では存続できないという最小規模の限界や反対にそれを超えると繁栄を続けられなくなるという最大規模の限度がある。
適切な規模を知るにあたっては、従業員数、売上高、付加価値、製品、市場、技術、産業構造を複合的に評価する必要がある。が、規模の適切さを正確に示す一つの基準があるので、それぞれへのマネジメントについても加えた上で以下にまとめる。

・小企業
-> 代表が書類を見たり人に聞いたりしなくとも、中心的な成果に責任を持つものが誰かわかる規模感。中心的な人間は少数であり、十二人から十五人を超えることはない。小企業のマネジメントにあたっては戦略を必要とし、ニッチを見つけて際立った存在となるための戦略を持たねばならない。注意点としては、①事業は何か何であるべきかについて問い答えること、②トップマネジメントの役割を組織化することの二点である。

・中企業
-> 中心的な人間の回答にあたってトップマネジメントの同僚を何人か呼び相談して答える規模感。成果を左右する中心的な人間の数は四十〜五十人ほどである。中企業のマネジメントにあたっては特定の重要な分野において卓越性を持ちリーダー的な地位を維持することを重視すると良い。持てる資源の全てをあげて、成功の基盤となっている分野を確保することが要求され、それ以外の分野では抑制と禁欲が必要になる。

・大企業
-> 組織図や記録を調べなくては決定的に重要な人間が誰であり、どこにいるかなどはわからない。大企業のマネジメントにあたっては、フォーマルで明快な組織構造を作り上げ、全員が目標、優先順位、戦略を知らねばならない。規模の反面機動性を欠くため、原則として小さな事業や成功しても中ぐらいの事業にさえ育ちそうもないものには手を出すべきでない。一方で大企業と言えども革新を行うには冒険的な事業には手をつけなければならず、それは常に小さなものから始まることは意識しておく必要がある。

多くの企業は適切な規模を知らず、規模にふさわしい戦略や構造についてはさらに知らない。規模の誤りは組織にとって体力を消耗させるので、規模の大きさではなく規模の適切さを指標としておく必要がある。不適切さを判断する診断は簡単で、不適切な規模の組織には肥大化した分野、活動、機能があり、多額の費用と努力を必要としながら成果をあげられないので、そういった点に着目することで判断を行うことができる。

 

・読んでみての感想、考察
中小企業と大企業についてはこれまでぼんやりとしか考えてこなかったので、考え方的に非常に参考になりました。社員数で言うと、100名ほどまでが小企業、2,000名ほどまでが中企業、それ以上が大企業くらいの感覚で捉えておくと良いのかなと感じました。
そう考えた際にそれぞれの規模に応じたマネジメントの話は納得のいく話ではあったので、非常に参考になりました。


1-2. 多角化のマネジメント(Section41)

・本の内容の要約
組織は単純であれば明快であるので、多角化していないほどマネジメントしやすい。一方で多角化に成功する条件は市場、技術、価値観の一致である。多角化を調和させ、一体性を保つための方法は以下の二つしかない。

① 共通の市場の元に、事業、技術、製品、製品系列、活動を統合し、それによって多角化しつつ一体性を保つこと
② 共通の技術の元に、事業、市場、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つこと。

この二つのうち、市場による統合の方が成功しやすい。また、注意すべき点が二つあり、①市場が何であるかを決めるのは生産者ではなく顧客であることと、②多角化が成功するのは戦略が有効な場合に限られることの二つである。
共通の市場あるいは共通の技術を軸にしない多角化は失敗する。それに加え重要なのが体質の一致である。組織内で共通の姿勢がなければならない。体質の不一致がコングロマリットがうまくいかない原因にあげられることもある。

 

・読んでみての感想、考察
共通の市場で考える方が進めやすいというのと、体質の一致も考えねばならないというのが印象に残りました。市場にフォーカスをする方が進めやすいのは企業の目的は「顧客の創造」だとしているので、顧客について知るには技術よりも市場にフォーカスする方がやりやすいというのは納得な話でした。
また、企業体質や価値観については以前に企業買収などの話を聞いた際に、体質の一致などを考えるというのが当時はしっくりこなかったのですが、色々と経験した上で改めて読んでみると納得のいく話でした。ベースの価値観が違うと必要以上に軋轢も生じるので、この辺はマネジメント上で注意すべきポイントだなと思いました。

 

1-3. グローバル化のマネジメント(Section42)
・本の内容の要約
グローバル企業の出現の原因は、国境、文化、イデオロギーを超越する真のグローバル市場の出現であり、それにより国境が決定要因でなくなってきている。今日の決定要因は没国家のグローバル市場になっている。グローバル企業は、その意思決定が経済の合理性に基づいており、政治的な主権の意思から絶縁しているために問題とされており、この方向性では解決策がない。グローバル企業の行動は何をしようと政治的な問題となり、これは政治的主権と経済的現実が相容れないために問題とされる。
この緊張関係を解決するには国際的な取り決めが必要であり、グローバル企業受け入れの条件、所有権の制限、利益の送金や資本の還元など様々な制限について何かしらの取り決めが必要になる。
国際的な取り決めとしての行動規範によってこれらの問題を解決することが、グローバル企業を経済と政治の調和を実現するための手段とするための唯一の道であり、これらの問題は政治的、法律的な問題である。反面、これらの問題について考えることこそ、グローバル企業のトップマネジメントの責任であり機会でもある。
グローバル企業は、今日最も重要な経済的な存在であり、それはグローバル経済という新しい現実を反映した存在であるがゆえに重要である。

 

・読んでみての感想、考察
主権国家の考え方と相容れないというのがなかなか興味深い内容でした。国際政治や国際関係論などで取り扱う主権国家や集団安全保障の歴史との対比で考えると主権国家について客観的に見えて非常に面白いのですが、その枠組みを前提で見ると非常に参考になる内容でした。


2. まとめ
規模の大きなマネジメントの話で抽象的な内容ではありましたが、マネジメントの規模が大きくなるに従って人文学系の教養も必要になるなというのを改めて感じました。