Ch.9_マネジメントの戦略②|ドラッカーを読み解く #8

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
#7では第9章のマネジメントの戦略の中からSection40の規模のマネジメントからSection42のグローバル化のマネジメントについて取り扱いました。

 #8では第9章のマネジメントの戦略の中からSection43の成長のマネジメントからSection45のマネジメントの正統性について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. マネジメントの戦略②(Ch.9)
1-1. 成長のマネジメント(Section43)
1-2. イノベーション(Section44)
1-3. マネジメントの正統性(Section45)
2. まとめ


1. マネジメントの戦略②(Ch.9)

1-1. 成長のマネジメント(Section43)
・本の内容の要約
成長は自動的には起こらないため、成長には戦略が必要である。また、長期にわたる高度の成長は不可能であり不健全なので、あまりに急速な成長は組織を脆弱化しマネジメントを不可能にする可能性があるので注意が必要である。成長そのものを目標にすることは間違いであり、大きくなること自体ではなく良い企業になることが正しい目標である。
成長のマネジメントにあたっては、第一に必要とされる成長の最小点について検討しておく必要があり、第二に成長の最適点について検討しておく必要がある。成長の最高点ではなく最適点こそ成長の上限としなければならない。
成長には準備が必要であり、ごく早い時期から成長のための準備をしておかねばならない。特に以下の三つのことを行っておかなければならない。

① 基本活動を明らかにし、それらの活動に取り組むべきトップマネジメント・チームを編成する
② 変化すべき時を知るために、方針と行動の変化を要求する兆候に注意する
③ 心底変化を望んでいるかを正直に判断する

基本的には組織の属人化を防ぎ、任せることが重要になってくる。また一方で、成長が必要であるとの結論に達していながら自らの行動を帰ることを欲していないことを自覚するに至ったトップには一つの道しかなく、身を引かねばならない。組織とは人間の成果であると同時に法的な所有関係にかかわらず負託であるため、自らの成果たる組織の要求に応えられないのであれば身を引くことが自らと組織に対する責務である。


・読んでみての感想、考察
成長の準備に関しては属人化の排除が必要と書かれている印象でした。10名〜100名ほどの組織で仕事をした際の印象としては、どの企業もこの段階になると属人化をいかに排除するかについて取り組んでいる印象でした。この辺の属人化の排除と成長への準備についてのうまくいくかいかないかはそれまでの会社の成長の際に必要な条件とは異なった条件が求められた印象で、この辺はなかなか興味深い内容だなという印象でした。

 

1-2. イノベーション(Section44)
・本の内容の要約
現代というイノベーションの時代において、イノベーションのできない組織は、たとえ今確率された地位を誇っていても、やがて衰退し、消滅すべく運命付けられる。イノベーションが生み出すものは単なる知識ではなく、新たな価値、富、行動である。
様々な組織が世の中には存在し、構造、事業、性格、組織、哲学も様々であるが、イノベーションを行う組織には以下の6つの共通の特徴がある。

イノベーションの意味を知っている
-> イノベーションとは科学や技術そのものではなく価値であり、組織の中ではなく組織の外にもたらす変化である。従って、イノベーションは常に市場に焦点を合わせなければならず、それを理解しておく必要がある。

イノベーションの力学を理解している
-> イノベーションが確率分布に従い、成果をもたらしてくれる分野を体系的に知る必要を知る必要がある。たとえば、需要の増大にもかかわらず収益が伸びない時には、工程、製品、流通チャネル、顧客ニーズを変えるイノベーションが大きな成果を生むなどである。

イノベーションの戦略を持っている
-> イノベーションの戦略は通常の戦略と同様に「われわれの事業は何か、何であるべきか」を考える必要がある。相違点としては、イノベーションの戦略は既存のものはすべて陳腐化すると仮定し話を進めていくことである。また、イノベーションの戦略は通常の戦略より成功率が低いのが前提としてあるため、目標を高く設定する必要がある。

④ 管理的な目標や基準とは別に、イノベーションのための目標と基準の必要を知っている
-> 既存事業について発すべき問いは「この活動は必要か、なくてもすむか」であり、必要である場合も次に発するべき問いは「必要最小限の支援はどれだけか」である。一方で、イノベーションについて発すべき第一の問いは「これは正しい機会か」であり、Yesである場合は第二の問いは「この段階において注ぎこむことができる最大限の人材と資源はどれだけあるか」である。(第三の問いは「手を引くべきか、どのように手を引くべきか」である)
このようにイノベーションにおいては通常の企業活動とは違った目標を設定する必要がある。

⑤ マネジメント、特にトップマネジメントの果たす役割と姿勢が違う
-> イノベーションを行うには、組織全体に継続学習の風土が不可欠である。重要なことは、変化が例外でなく規範であり、脅威でなく機会であるというしんに革新的な風土の醸成として、問題を定義することである。トップマネジメントの役割としては、アイデアを奨励するに止まらず、出てきたアイデアを「実験的、現実的、効果的なものにするにはいかなる形のものにしなければならないか」を問い続ける必要がある。

イノベーションのための活動を、管理的な活動のための組織から独立して組織している
-> 既存事業においては、今いる場所から行こうとする場所へと仕事を組織する一方で、イノベーションにおいては行こうとする場所から今しなければならないことへと仕事を組織する必要がある。イノベーションのためのチームは既存事業のための組織の外に独立して作らなければならない。変化ではなく沈滞に対して抵抗する組織を作ることこそ、マネジメントにとって最大の課題である。

 

・読んでみての感想、考察
非常に参考になる内容でした。新規事業を行う際に組織の力学は既存事業中心で基本的には動いているので、トップマネジメント自らが均衡を崩す必要があるというのは確かにそうだと思いました。
また、イノベーションは価値であり、常に市場に焦点を合わせる必要があるというのも非常に参考になる考え方でした。うまく行かないケースの大半はチーム内、組織内に価値判断基準をおくケースが多いので、この辺は注意すべき点だと思いました。

 

1-3. マネジメントの正統性(Section45)
・本の内容の要約
現代社会では組織社会であり、知識社会となっており、この二つの発展には相関関係がある。マネジメントはこの二つの発展の原因であり結果であると考えれば良い。
マネジメントの第一の役割は「組織本来の使命を果たすべくマネジメントすること」、第二の役割は「生産的な仕事を通じて人に成果をあげさせること」、第三の役割は「社会と個人に生活の質を提供すること」である。

 

・読んでみての感想、考察
マネジメントが社会ニーズとして生じてきて、その役割についての議論がされているようです。
この辺は目先のテクニカルなマネジメント論にこだわるというよりは、本質について考えようというメッセージとして捉えるのが良いのではと思われました。

 

2. まとめ
成長やイノベーションについてのマネジメントについて客観的に言語化されているケースは少ない印象ですが、色々と言及されており非常に面白かったです。なかなか読み応えのある内容でした。