Ch_9 新しい知識を活用する(第七の機会)|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #7

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#6ではCh.7の「人口構造の変化に着目する|第五の機会」とCh.8の「認識の変化を捉える|第六の機会」について取り扱いました。

 #7ではCh.9の「新しい知識を活用する|第七の機会」について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 新しい知識を活用する|第七の機会(Ch.9)
1-1. 知識によるイノベーションのリードタイム
1-2. 知識の結合
1-3. 知識によるイノベーションの条件
1-4. 知識によるイノベーションに特有のリスク
1-5. ハイテクのリスクと魅力
1-6. Ch.9を読んでみての感想、考察
2. まとめ

 

1. 新しい知識を活用する|第七の機会(Ch.9)
1-1. 知識によるイノベーションのリードタイム(本の内容の要約)
発明発見という新しい知識に基づくイノベーションは、いわば企業家精神のスーパースターであり、これが一般にイノベーションと言われているものである。もちろん、新しい知識によるイノベーションが全て重要なわけではなく、取るに足りないものも多い。歴史を変えるようなイノベーションのうち、知識によるイノベーションはかなり上位に位置付けられる一方で、イノベーションの元になる知識は必ずしも技術的なものである必要はなく社会的な知識もそれと同じかそれ以上に大きな影響を及ぼす。
「知識によるイノベーション」はその基本的な性格、すなわち実を結ぶまでのリードタイムの長さ、失敗の確率、不確実性、付随する問題などが他のイノベーションと大きく異なる。さすがスーパースターらしく、気まぐれであってマネジメントが難しい。
「知識によるイノベーション」の第一の特徴がリードタイムの長さである。ペニシリン、コンピュータ、銀行、マネジメントなど、様々な具体的なケースにおいて知識が技術となり、市場で受け入れられるようになるには、25年〜35年を要するなど、リードタイムの長さは人類の歴史が始まって以来さして変わっていない。


1-2. 知識の結合(本の内容の要約)
「知識に基づくイノベーション」の第二の特徴は、科学や技術以外の知識も含め、いくつかの異なる知識の結合によって行われることである。雑種の成長力とメンデルの遺伝学の再発見の掛け合わせでできたハイブリッド・コーン、ガソリンエンジンと空気力学の組み合わせでもたらされたライト兄弟の飛行機、数学や科学の知識がかけ合わさってできたコンピュータなど様々な発明が異なる領域同士の組み合わせでもたらされている。
また、イノベーションが行われるのは、ほとんどの場合必要な諸々の要素が既知のものとして利用できるようになり、どこかで使われるようになった時である。必要な知識の全てが用意されない限り、知識によるイノベーションは時期尚早であって、失敗は必然である。
全ての知識が用意され、結合されるまでは知識によるイノベーションのリードタイムは始まりさえしない。


1-3. 知識によるイノベーションの条件(本の内容の要約)
知識によるイノベーションは、その特徴ゆえにその他のイノベーションとは異なった下記の三つの固有の条件を伴う。

1. 分析の必要性
-> 知識によるイノベーションに成功するには、知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化など全ての要因を分析する必要がある。

2. 戦略の必要性
-> 知識によるイノベーションを成功させるには戦略を持つ必要がある。

3. マネジメントの必要性
-> 知識によるイノベーション、特に科学や技術の知識によるイノベーションに成功するには、マネジメントを学び実践する必要がある。

 

1-4. 知識によるイノベーションに特有のリスク(本の内容の要約)
綿密な分析、明確な戦略、意識的なマネジメントをもってしても、知識によるイノベーションには特有のリスク、特有の不確実性が伴う。最初にイノベーションが起こりそうでありながら何も起こらないという期間が長期にわたって続き、突然爆発が起こり、数年にわたる開放期が始まり脚光が当てられ、五年後には整理期が始まりわずかだけが生き残る。
電機産業、自動車産業、銀行など、どの業界においても上記のプロセスは当てはまり、最終的には合併や吸収を繰り返し、4つほどに収斂している。いずれの場合も生き残った企業は例外なく初期のブーム時に生まれたもので、ブームの後では新規参入は事実上不可能となる。知識に基づく産業には、数年間にわたって新設のベンチャー・ビジネスが逃してはならない開放期がある。
また、知識を元にしたイノベーションを行おうとする者は、「時間が敵だということ」と「過当競争によりイノベーションを行おうとする者の生き残りの確率が小さくなってきていること」の二つを認識しておく必要がある。


1-5. ハイテクのリスクと魅力(本の内容の要約)
投機熱を伴う開放期の後に厳しい整理期が続くというパターンは、特にハイテク産業で表れやすい。理由としては、ハイテクは脚光を浴び、多くの新規参入と投資を引きつけるからである。その他の事業とは異なり、ハイテクは中くらいの成功には何の価値もない伸るか反るかの勝負として捉えられる。
このようなことが起こるのは、調査、技術開発、技術サービスに多額の資金を注ぎ込まなくてはならないからであり、ハイテク企業はたとえ現状を維持するためであっても常に速く走らねばならない。このことは整理期が訪れた時に、ごく短期の嵐を乗り切るのに必要な資金的余裕さえ残していない企業がほとんどであるということを意味する。
新知識によるイノベーションを行う者は多くのことを要求され、他のイノベーションとは要求されるものは全く異なり、直面するリスクが異質である。反面リスクも大きければそれだけリターンも大きい。他のイノベーションも富を手に入れることはできるが、新知識によるイノベーションは名声まで手に入れることができる。


1-6. Ch.9を読んでみての感想、考察
一般的に言われているイノベーションが第七の機会としてCh.9でまとめられていました。最後になった理由としては、確実性や再現性などを考えた際に不確実で取り扱いが難しいというのがこれまでの論述から読み取れます。
「リードタイムが長い」や「知識の組み合わせが必要」など様々な考察がなされており、これにあてはめて様々な分野を考察していくと面白そうでした。


2. まとめ
最近だと量子コンピューティングが話題でとても話題として興味深いのですが、話を聞いている印象だとなかなか大変そうです。
現状はリードタイムと開放期の間くらいにいる印象なので、大きなブレークスルーが起きるのかまたリードのままに戻るのかは非常に興味深い業界なのではないかと思います。