Ch_15 ベンチャーのマネジメント|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #12

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社

#11ではCh.14の「公的機関における企業家精神」について取り扱いました。
https://lib-arts.hatenablog.com/entry/drucker-innovation_11
#12ではCh.15の「ベンチャーのマネジメント」について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. ベンチャーのマネジメント(Ch.15)
1-1. 市場志向の必要性
1-2. 財務上の見通し
1-3. トップマネジメント・チームの構築
1-4. 創業者はいかにして貢献すべきか
1-5. 第三者の助言
1-6. Ch.14を読んでみての感想、考察
2. まとめ

 

1. ベンチャーのマネジメント(Ch.15)
1-1. 市場志向の必要性(本の内容の要約)
企業であれ公的機関であれ、「企業家マネジメント」と言う時、ポイントは前半の「企業家」にある。一方でベンチャーについては後半の「マネジメント」にポイントがある。逆説(paradox)的ではあるが、既存の組織にとって企業家精神の障害となるのは既存の事業である一方でベンチャーにとっての起業家精神の欠如となるのは既存事業の欠如である。
永続的な活動としての事業がない状況におけるベンチャーは、いかにアイデアが素晴らしくともいかに資金を集めようとも、事業としてマネジメントされなければ生き残れない。マネジメントチームを作らなかったことで倒産寸前に追い込まれたエジソンの会社がその例である。
ベンチャーが成長するには四つの原則があり、第一に「市場に焦点を合わせること」、第二に「財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画を持つこと」、第三に「トップマネジメントのチームをそれが必要となるずっと前から用意しておくこと」、第四に「創業者たる起業家自身が自らの役割、責任、位置付けについて決断すること」である。
第一の「市場に焦点を合わせること」については、Ch.3で言及されていたように予期せぬ成功や市場を利用できるように自らを組織しておく必要がある。市場志向、市場中心でなければ競争相手のために機会を作っただけで終わってしまう。市場志向になることは特に難しいことではないが、そのためには予期せぬ成功や失敗などの予期せぬものを体系的に探さねばならない。予期せぬものを例外として片付けず、機会として調べねばならない。
最大の危険は、製品やサービスが何であり何であるべきかについて顧客よりも知っていると思い込むことであり、予期せぬ成功を屈辱とするのではなく機会として捉えねばならない。そして、企業は顧客のニーズを変えるのではなく満足させることによって対価を得るということを認識する必要がある。
以下、第二の原則を1-2、第三の原則を1-3、第四の原則を1-4でまとめる。


1-2. 財務上の見通し(本の内容の要約)
設立間もないベンチャーに特有の欠点は「市場志向の欠如」でありこれは初期段階における阻害要因である。また、次の成長ステップにおいて最大の阻害要因となるのが、「財務志向の欠如と財務政策の欠落」である。財務上の見通しを持たないことは、事業が成功するほど大きな危険となってしまう。
危険が生じる要因はいつも同じで「運転用のキャッシュがない」、「事業拡大のための資本がない」、「支出や在庫や債権を管理
できない」の三点である。これらは同時に起こることが多く、一つでも起こると体力を損ない、立て直しに非常な労力と苦痛を伴い、再び時間と頭脳を事業に集中できるようになった頃にはすでに機会を逃している。
上記の予防に至ってはキャッシュフローの分析と予測と管理が必要である。ここで言う予測は希望的観測ではなく最悪のケースを想定した予測であることは理解しておかねばならない。ベンチャーは成長に伴い資金が必要になるため注意が必要である。
自社にとって最も重要なことを最重要項目を三つ四つくらいに絞り込んでおけば、それらのことを意識し、注意し、必要に応じて迅速に対応できるようにしておくことで、マネジメント上の混乱を防ぐことができる。


1-3. トップマネジメント・チームの構築(本の内容の要約)
企業の成長がトップ一人でマネジメントできる範囲を超えた際にトップマネジメントの欠如が起こり得る。この対策としては簡単で、トップのチームを前もって構築しておくことである。チームは一夜にしてならず、機能するには時間がかかる。数年を要することが多く三年はかかる。実現方法は簡単であるが、そのためには創業者自信がいつまでもマネジメントを行うのではなく、いずれトップのチームに引き継ぐ決意をしておかねばならない。
トップマネジメントチームの構築にあたっては、以下の四つの準備を必要とする。
```
1. 創業者自信が事業にとって主な人たちと相談しなければならない。
2. 創業者など主な人たちの一人一人が、自分が得意とするものは何か、他の人たちが得意とするものは何かについて考えねばならない。
3. それぞれの強みに応じて、誰がいずれの活動を担当すべきか、誰がどの活動に向いているかを検討しなければならない。
4. 重要な活動の全てについて目標を定めなければならない。
```
ワンマンによるマネジメントが失敗する前にワンマン自信が上記に基づいて、同僚と協力すること、人を信頼すること、さらには人に責任を持たせることを学ばなければならない。創業者は付き人を持つスターではなく、チームのリーダーになることを学ばねばならない。


1-4. 創業者はいかにして貢献すべきか(本の内容の要約)
ベンチャーのマネジメントにあたって重要なのが1-3でもまとめたようなトップマネジメントをチームとして組閣することであるが、創業者自身にとってそれは事の始まりにすぎなく、ベンチャーが発展し成長するに伴い、創業者たる企業家の役割は変わらざるをえない。これを受け入れなければ事業は窒息し崩壊する。
考えるべきは「何をしたいか」や「自分は何に向いているか」ではなく、「客観的に見て今後事業にとって重要なことは何か」であり、その次に「自らの強みは何か」、「事業にとって必要なことのうち自らが貢献できることは何か」である。これらの問いについて徹底的に考える必要がある。自らがいかに貢献できるかの問いが常に満足のいく答えをもたらすとは限らず、時には創業者が手を引くこともある。


1-5. 第三者の助言(本の内容の要約)
ここまででまとめた話はベンチャーの創業者には外部の客観的なアドバイスが必要なことを教えてくれる。成長しつつあるベンチャーにおいて取締役会は創業者の相談相手になれることは少なく、そのような人材は社内では滅多に見つからない。
そのため、創業者の判断や強みを問題にできる外部の人間が必要であり、創業者たる企業家に対し、質問し、意思決定を評価し、市場志向、財務見通し、トップマネジメント・チームの構築など生き残りのための条件を満たすように絶えず迫っていく必要がある。これこそ、ベンチャーが企業家マネジメントを実現するための最大の要件である。
ベンチャーのマネジメントにあたっては規律を軽視しがちだが、規律のないところに自由はなく、やがて無秩序や独裁へと堕落する。ベンチャーが見通しと規律を必要とするのは、企業家精神を維持し強化するためである。


1-6. Ch.14を読んでみての感想、考察
ベンチャーのマネジメントにあたって抜けがちなポイントを、戒めている内容になっている印象でした。
市場志向、財務、トップマネジメントチームなどどれも気にすべき話だと思われました。


2. まとめ
トップマネジメントチームの構築や創業者の貢献の仕方については、トップ自らがこのような視点を持つことによって事業や企業に客観的な使命を持たせていけるのだと思われました。
非常に勉強になる内容でした。