顧客志向、CRM、顧客|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #5

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE
#1ではまえがきと序文について、#2では広告(Advertising)、ブランド(Brands)、B2B(Business-to-Business Marketing)について、#3では変化(Change)、コミュニケーションとプロモーション(Communication and Promotion)、企業(Companies)、競争優位(Competitive Advantage)について、#4はコンサルタント(Consultants)、コーポレート・ブランディング(Corporate Branding)、創造性(Creativity)、顧客ニーズ(Customer Needs)について取り扱いました。(ABC順に並んでいるようです)

#5では顧客志向(Customer Orientation)、CRM(Customer Relationship Management)、顧客(Customer)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 顧客志向(Customer Orientation)
2. CRM(Customer Relationship Management)
3. 顧客(Customer)
4. 感想・まとめ


1. 顧客志向_Customer Orientation(簡単な要約)
スカンジナビア航空(SAS)の元CEOヤン・カールソンが著書で触れたように現代の企業経営では社員に顧客のことを考えさせるというのは非常に重要である。SAS社の年間利用者数は1,200万人であり、顧客は1回の利用につき平均5人のSAS社員と接する。したがって、対面、電話などを通じて顧客にポジティブなブランド経験を提供する機会は6,000万回以上あるとして、ヤン・カールソンは顧客第一の姿勢を浸透させたと述べている。
全社員が顧客に優れた価値を提供することに集中すれば社員及び会社にどれほどの利益がもたらされるかについて、今日のCEOは財務的見地から分析する必要がある。
このような顧客志向を目指してまずなすべきことは、自社にふさわしい人物を採用することである。採用候補者が適切なスキルを備えているかどうかという点だけではなく、望ましい態度の持ち主かどうかを評価しなければならない。また採用した人材には、十分な訓練を施すことも必要である。
企業は社員に向かって、一見矛盾した2つのメッセージを同時に発することが多く、あらゆる顧客を尊重する顧客第一主義と、収益への貢献度を反映させた異なる扱いの二点である。つまり、全ての顧客を大切に取り扱うべきであるが、平等に取り扱う必要はないということである。
・資産->投入(インプット)->提供物->チャネル->顧客
の流れで表される製品主導主義ではなく、下記のような知覚-反応マーケティングの流れを顧客志向の企業は用いている。
・顧客->チャネル->提供物->投入(インプット)->資産


2. CRM_Customer Relationship Management(簡単な要約)
カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM; Customer Relation Management)という言葉は人々に浸透し、新たな特効薬として期待が寄せられている。一方で、CRMとは何かを明確に定義しないまま議論しても実りがない。CRMに実際に取り組もうとするとハードウェアとソフトウェアを購入せざるを得ず、これによって個々の顧客の詳細な情報を元にターゲットマーケティングをより効果的に実施できるようになる。
だが、現実にはCRMがそれほどうまく機能しているとは言えない。大企業の中にはCRMシステムに500万ドルから1,000万ドルを投資しながら望ましい成果をあげられなかったところもある。旧態依然たる企業がテクノロジーを導入しても、以前より金のかかる旧態依然たる企業になるだけである。顧客中心企業を目指した組織再編が完了するまでCRMに投資すべきではない。組織再編が完了してはじめて、企業も社員もCRMの適切な活用法を理解できる。

 

3. 顧客_Customer(簡単な要約)
我々は現在、顧客が主導権を握る顧客経済の時代に生きている。これは製品生産能力の過剰からもたらされた結果であり、不足しているのは製品ではなく顧客である。
したがって、企業は製品マーケティング中心主義から顧客所有中心主義へと見方を改めなければならず、新しいボスは顧客である。企業はこのことに気づく必要がある。
企業は顧客を金融資産とみなし、他の資産同様適切に管理し最大化を図るべきである。企業がこの資産の価値を認識することで、マーケティングシステム全体を再設計し、顧客シェアや顧客生涯価値の獲得を目指すようになれば理想的である。ドラッカーは企業の目的を「顧客の創造であり、マーケティングイノベーションの二つが重要」の述べている。
製品は現れては消えるため、企業の課題は製品を長く保つ以上に、顧客を長期にわたって引き止める必要がある。そのために製品ライフサイクルよりも市場ライフサイクルや顧客ライフサイクルに注目しなければならない。
顧客に関して企業が目指すべき点については、1.自分が買い手の立場としてマーケティングの黄金律に従うことと、2.企業の成功は顧客の成功にかかっているのだと理解することの二点である。

全ての顧客を大切に扱うのは重要なことではあるが、平等に扱うという意味ではない。まず財務的観点からプラチナ、ゴールド、シルバーといった具合にカテゴリー分けした方が便利である。優良顧客にはより多くのベネフィットを提供すべきである。
また、さらに別の基準でも顧客を分類すべきで、下記に4つのグループについてまとめる。

1. 最も利益をもたらす顧客(MPCs; Most Profitable Customers)
2. 最も成長が見込める顧客(MGC; Most Growable Customers)
3. 最も脆弱な顧客(MVCs; Most Vulnerable Customers)
4. 最も厄介な顧客(MTCs; Most Troubling Customers)


4. 感想・まとめ
#5では顧客志向(Customer Orientation)、CRM(Customer Relationship Management)、顧客(Customer)について取り扱いました。顧客関連のテーマが多く、ドラッカーの「企業の目的は顧客の創造である」という話についても触れられていました。
#6では顧客満足以降について取り扱っていきます。