Ch_3 予期せぬ成功と失敗を利用する(第一の機会)|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #2

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#1ではPart1の「イノベーションの方法」から、Ch.1の「イノベーションと企業家精神」とCh.2の「イノベーションのための7つの機会」について取り扱いました。

#2ではCh.3の「予期せぬ成功と失敗を利用する|第一の機会」について取り扱います。
以下目次になります。

1. 予期せぬ成功と失敗を利用する|第一の機会(Ch.3)
1-1. 予期せぬ成功
1-2. イノベーションへの要求
1-3. 予期せぬ成功が意味すること
1-4. 予期せぬ失敗
1-5. 分析と知覚の役割
1-6. 外部の予期せぬ変化
1-7. Ch.3を読んでみての感想、考察
2. まとめ

 

1. 予期せぬ成功と失敗を利用する|第一の機会(Ch.3)
1-1. 予期せぬ成功(本の内容の要約)
予期せぬ成功ほどイノベーションの機会となるものはなく、これほどリスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。一方で、予期せぬ成功はほとんど無視され、困ったことに存在さえ否定される。例としてはニューヨーク最大の百貨店メイシーの家電市場の見落としによる失敗が挙げられる。
このようにマネジメントにとって、予期せぬ成功を認めることは容易ではなく、勇気がいる。現実を直視する姿勢と、間違いを率直に認めるだけの謙虚さがなければならない。予期せぬ成功をマネジメントが認めないのは、人間誰しも長く続いてきたものが正常であって、永久に続くべきものと考えがちであるからである。また、予期せぬ成功は腹が立つなど感情的な矛先にもなりやすい。
しかし、マネジメントが報酬を支払われているのは判断力に対してであって、無謬性に対してではない。マネジメントは、自らの過誤を認め受け入れる能力に対しても報酬を支払われている。特にそれが機会に道を開くものであるときこのことが言えるが、このことを理解している者は稀である。
さらによく起こることとして、予期せぬ成功は気づかれさえされず注意もされない。そこに誰かが現れ、利益をさらっていく。そのため、予期せぬ成功に気づくような報告システムが必要である。


1-2. イノベーションへの要求(本の内容の要約)
予期せぬ成功がもたらすイノベーションの機会を利用するには分析が必要であり、予期せぬ成功は兆候である。予期せぬ成功が、単にマネジメントの視野、知識、理解の欠如を示しているに過ぎない場合もある。
予期せぬ成功はイノベーションのための機会であるだけではなく、イノベーションに対する要求でもある。予期せぬ成功は、自らの事業と市場の定義について、いかなる変更が必要かを問うことを強いる。それらの問いに答えた時初めて、もっとも成果が大きいイノベーションの機会となってくれる。
予期せぬ成功に沿って想定していないニーズに直面した際は、迅速にニーズに応じる必要がある。


1-3. 予期せぬ成功が意味すること(本の内容の要約)
予期せぬ成功は体系的に探求しなければならない。まず行うべきは、予期せぬ成功が必ず目に止まる仕組み、注意を引く仕組みを作ることである。マネジメントが手にし、検討すべき情報の中に適切に位置付けることである。そしてそのようにして提示された予期せぬ成功の全てについてマネジメントなる者は次のように問わねばならない。

1. これを機会として利用することは、我が社にとっていかなる意味があるか
2. その行き着く先はどこか
3. そのためには何を行わなければならないか
4. それによって仕事の仕方はいかに変わるか

予期せぬ成功は機会であるが、それは要求でもあり、機会の大きさに見合う取り組みと支援をマネジメントに対し要求するものである。

 

1-4. 予期せぬ失敗(本の内容の要約)
予期せぬ失敗が機械の兆候と受けとめられることはほとんどない。失敗の多くは単に計画や実施の段階における過失、貪欲、愚鈍などの結果であるが、慎重に計画し、設計し、実施したものが失敗したときには失敗そのものが変化とともに機会の存在を教える。マーケティングの前提としての顧客の価値観や認識などが変わっているのかもしれない。これらの変化は全てイノベーションの機会である。
マネジメント、特に大組織のトップマネジメントは、予期せぬ失敗に直面すると、一層の検討と分析を支持するが、それは間違った反応である。予期せぬ失敗が要求することは、トップマネジメント自身が外に出て、よく見、よく聞くことである。予期せぬ失敗は、常にイノベーションの機会の兆候として捉えなければならない。トップ自らが真剣に受け止めなくてはならない。


1-5. 分析と知覚の役割(本の内容の要約)
イノベーションとは組織的かつ体系的な仕事であるが、それは分析的であるとともに知覚的な仕事でもある。もちろんイノベーションを行おうとする者は、見聞きしたものを論理的かつ詳細に分析する必要があり、知覚だけでは駄目である。しかし、実験と評価を伴う分析といえども、その基礎となるのはあくまでも変化、機会、現実と認識のギャップに対する知覚であり、双方のバランスが重要である。
ここで分析といっても、実際のところ企業家たる者にとって、現実が変化した原因を知る必要はなく、なぜ起こったかはわからなくともイノベーションに成功することは可能である。


1-6. 外部の予期せぬ変化(本の内容の要約)
上述の節では予期せぬ成功や失敗は企業や産業の内部で起こるものとして論じてきた。しかし外部の事象、すなわちマネジメントが今日手にしている情報や数字には現れない事象も同じように重要な意味を持つ。事実それらの事象は、企業や産業内部の事象よりも重要であることが多い。1970年代にメインフレーム・コンピュータに注力していたIBMが、パソコン市場にも力を入れて1980年代に大きく成長したパソコン市場でもトップの地位を占めたなどが具体的な例である。
外部の予期せぬ変化をイノベーションの機会として利用し成功するための条件は、その機会が自らの事業の知識と能力に合致していることである。外部の予期せぬ変化といえども、既存の能力の新たな展開の機会として捉えなければならず、自らの事業の性格を変えてはならず、多角化ではなく展開でなければならないので注意が必要である。


1-7. Ch.3を読んでみての感想、考察
Ch.3を通して予期せぬ変化に対する捉え方や実際の成功例、失敗例を多く知れたので非常に良かったです。
特に予期せぬ成功を把握して、その成功に必要な投資を行うという判断ができるかどうかというのが重要だというのは意識したいなと感じました。
予期せぬ成功を把握、知覚するにあたっては、評価体系からも影響を受けるため、いかに機会を見逃さないかという視点で分析や情報の可視化が重要になるのだなと思われました。


2. まとめ
同様の形でこの後の六つの章で機会についてまとめられているようなので、それぞれ詳細の内容を見たのちにもう一度全体を俯瞰すると良さそうでした。