Ch_6 産業構造の変化を知る(第四の機会)|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #5

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#4ではCh.5の「ニーズを見つける|第三の機会」について取り扱いました。

 #5ではCh.6の「産業構造の変化を知る|第四の機会」を取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 産業構造の変化を知る|第四の機会(Ch.6)
1-1. 産業構造の不安定性
1-2. 産業構造の変化が起きるとき
1-3. Ch.6を読んでみての感想、考察
2. まとめ


1. 産業構造の変化を知る|第四の機会(Ch.6)
1-1. 産業構造の不安定性(本の内容の要約)
産業や市場の構造は永続的であり一見極めて安定的に見えるため、内部の人間はそのような状態こそ秩序であり、自然であり、永久に続くものと考える。一方で現実には、産業や市場の構造は脆弱であり、小さな力によって簡単にしかも瞬時に解体する。その時はその産業に属するあらゆる者が直ちに行動を起こさねばならなくなる。
産業と市場の構造変化はイノベーションの機会である。業界に関わる全ての者に企業家精神を要求し、あらゆる者が「我が社の事業とは何か」を問わなければならなくなる。反対に構造変化はその産業の外部にいる者に例外ともいうべき機会を与える。ところが産業の内部にいる者には同じ変化が脅威に映る。したがって、イノベーションを行う外部の者は、さしたるリスクを冒すことなく、急速に大きな勢力を得ることができる。具体的にはDLJなどの例がある。
ただし多くのケースにおいて共通点があることに注意が必要である。それはイノベーションを行った者が、もともと機会の存在を知っていたことであり、彼らは最小のリスクの元に成功することを確信していたが、なぜ確信を持つことができたのかは次節の1-2で言及する。


1-2. 産業構造の変化が起きるとき(本の内容の要約)
イノベーションの機会としての産業構造の変化にあたっては下記を意識する必要がある。

1. 産業が急速に成長している時はイノベーションの機会としての産業構造の変化がほぼ確実に起こると考えると良い
-> 産業の急速な成長は最も識別しやすい前兆であるので意識しておくとよい。この前兆はあらゆるケースに共通して見ることができ、ある産業が経済成長や人口増加を上回る速さで成長するとき、遅くとも規模が二倍になる前に構造そのものがほぼ間違いなく劇的に変化し、それまでのやり方が確実に陳腐化し始める。

2. 産業の成長が二倍に成長する時を同じくして、それまでの市場の捉え方や市場への対応を変える必要がある
-> それまで業界トップの地位にあった企業の市場の捉え方が現実を反映せず、歴史を反映しただけなものになってくるが、報告や数字は古くなった市場観に従ったままになりがちなので注意が必要である。急激な成長に直面した企業は、それだけで満足し安易に利益を得ようとするが、そのような対応は競争相手の登場をもたらすだけである。

3. いくつかの技術が合体した時も産業構造の急激な変化が起こる
-> PBX(機内交換機、社内に設置する電話交換機)におけるAT&TとROLMの関係性のように新しい分野において、優位性を持っている側の見逃しが起こりうるので注意が必要である。

4. 仕事の仕方が急速に変わるときにも、産業構造の変化が起こる
-> 1970~1980年頃のアメリカで開業医から病院への移行が起こったように、仕事の仕方が急速に変わるときにも産業構造の変化が必ず起こる。

また、産業構造の変化を利用するイノベーションは、その産業が一つあるいは少数の生産者や供給者によって支配されているとき効果が大きい。長い間成功を収め、挑戦を受けたことのない支配的な地位の生産者や供給者は傲慢になりがちであり、新規参入者が現れても、とるに足らない素人と見てしまい、シェアが増大を続けても対策を講じることができない。
産業構造の変化が起こっているとき、リーダー的な生産者や供給者は必ずと言って良いほど市場の中でも成長しつつある分野の方を軽く見て、急速に陳腐化し機能しなくなりつつある仕事の仕方にしがみつきがちである。一方で、それまで通用していた市場へのアプローチや組織や見方が正しくあり続けることはほとんどない。
したがって、イノベーションを起こした者は放っておかれがちであり、そこに新規で台頭するチャンスが生じる。


1-3. Ch.6を読んでみての感想、考察
産業構造の変化は大規模でも小規模でも起こる話なので、こちらについては色々なところに応用が可能である印象を受けました。
市場のセグメンテーションをどう定義してどの変化を利用するかを考えることで、リーダーシップ戦略とニッチ戦略のどちらにおいても利用できる考え方であると思われました。

 

2. まとめ
現在ではこの本が執筆された1985年時よりもさらに産業構造の変化が早いため、チャンスが多くある分野のように思われました。SWOT分析などで、Opportunity(機会)とThreats(脅威)に分けるので、それも関連付けた上で把握しておくと良さそうでした。