Ch_5 ニーズを見つける(第三の機会)|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #4

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#3ではCh.4の「ギャップを探す|第二の機会」について取り扱いました。

 #4ではCh.5の「ニーズを見つける|第三の機会」を取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. ニーズを見つける|第三の機会(Ch.5)
1-1. 冒頭部
1-2. プロセス・ニーズ
1-3. 労働力ニーズ
1-4. 知識ニーズ
1-5. 五つの前提と三つの条件
1-6. Ch.5を読んでみての感想、考察
2. まとめ

 

1. ニーズを見つける|第三の機会(Ch.5)
1-1. 冒頭部(本の内容の要約)
予期せぬ成功や失敗、ギャップはすでに存在するイノベーションの機会である。しかし「必要は発明の母」とも言うこともあるので、Ch.5では存在していないもの、すなわちイノベーションの母としてのニーズについて検討する。
ここでのニーズは具体的で限定されたニーズであり、漠然とした一般的なニーズではない。それは予期せぬ成功や失敗、ギャップと同じように企業や産業の内部に存在する。その主なものは①プロセス上のニーズ、②労働力上のニーズ、③知識上のニーズの三つがあげられ、それぞれ1-2〜1-4でまとめる。


1-2. プロセス・ニーズ(本の内容の要約)
イノベーションの機会としてのプロセス・ニーズの利用は、ほかのイノベーションと異なり、状況からスタートすることはなく、課題からスタートする。知的発見によってすでに存在するプロセスの弱みや欠落を補うためのイノベーションである。そのニーズの存在を知らない者はないが、しかし誰も手をつけていない。一度イノベーションを行うや、直ちに受け入れられ、標準として普及していく。
また、プロセス・ニーズの多くのケースにおいて、白内障の手術ににおけるコナーの酵素のようにプロセス・ニーズを明確にすることが直ちに問題の解決につながるのでその点は意識しておくと良い。


1-3. 労働力ニーズ(本の内容の要約)
労働力ニーズもまた、イノベーションの機会となることが多い。1925〜1930年頃にAT&Tが開発した電話の自動交換機システムや、近年の(1985年頃の)ロボット・ブームも主として労働力ニーズによるものである。
日本がロボット先進国となったのは技術用の優位による者ではなく、その設計のほとんどはアメリカからの輸入であったが、日本はアメリカよりも4~5年、ドイツよりも10年早く最初の少子化に見舞われ労働力ニーズがためであると思われる。


1-4. 知識ニーズ(本の内容の要約)
イノベーションの機会としてのニーズには、プロセス・ニーズと労働力ニーズが最も一般的である。一方で、その利用がより困難であり、より大きなリスクを伴うが、非常に重要な意味を持つことが多いニーズとして知識ニーズがある。すなわち、科学者の「純粋研究」に対置される「開発研究」を目的としたニーズである。その知識ニーズを満たすには知的な発見が必要となる。具体的には写真技術の一般層への普及にあたって1880年代の半ばにイーストマン・コダック創立者ジョージ・イーストマンが新しい発見の知識を代用し、ガラス板をセルロイドに変えたなどが例としてあげられる。エジソンの電球開発もまた同様である。
今日可能性を現実のものとするための開発研究は、企業研究所はもちろん、国防、農業、医療、環境保護のための研究所において行われている。開発研究と言うと大規模に聞こえるかもしれないが、成功を収めているものの多くは、目標の小さい明確なプロジェクトであることは意識しておかねばならない。開発研究は的を小さく絞るほど、良い結果が出る。具体的には日本の自動車事故を三分の一に減らした視線誘導係の開発があげられる。


1-5. 五つの前提と三つの条件(本の内容の要約)
前述の例、特に視線誘導係の開発の成功は、ニーズに基づくイノベーション、特にプロセス・ニーズによるイノベーションが成功するには五つの前提があることを教えている。具体的には、①完結したプロセスについてのものであること、②欠落した部分や欠陥が一箇所だけあること、②目的が明確であること、④目的達成に必要なものが明確であること、⑤「もっと良い方法があるはず」と言う認識が浸透していること(受け入れ態勢が整っていること)の五つである。
またそれに加えて、ニーズに基づくイノベーションには三つの条件がある。第一は何がニーズであるか明確に理解されており、目標達成のために何が必要なのかが明らかになっていることである。第二はイノベーションに必要な知識が手に入り、実現可能ということである。第三に問題の解決策がそれを使う者の仕事の方法や価値観に一致しているかどうかである。写真については素人が気軽に撮影できるようには求められていたし、眼科の手術医は出血のないプロセスに強い関心を持っていた。一方でデータバンクのように問題を簡単に解決し過ぎるケースは記憶を重んじる専門職に馴染まないなどの理由でデータバンクは苦戦している(1985年時であることに注意)。ニーズによるイノベーションは機会を体系的に探すことができるが、一度ニーズを発見したならば、上記の五つの前提と三つのに照らしてみることが必要である。

 

1-6. Ch.5を読んでみての感想、考察
これまでを振り返るにニーズを見つけ出す思考は感覚的には色々と行っていたと思うのですが、あまり言語化しておらず1-5の前提と条件はほとんど意識していなかったなと思いました。
思考自体はできていたと思うので、再現性を高めたり説明に説得力を持たせたりするためにこの辺は意識して把握しておくようにしたいと思いました。


2. まとめ
Ch.2で「信頼性と確実性の大きい順に並べてある」という記述があったのですが、第一の機会、第二の機会に比べると少し優先度が落ちてきたかなという印象です。
とはいえ、感覚的にはわかっているけど、言語化できていないギャップを埋める考察で非常に参考になりました。