Ch_4 ギャップを探す(第二の機会)|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #3

f:id:lib-arts:20190403170719p:plain

 

上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#2ではCh.3の「予期せぬ成功と失敗を利用する|第一の機会」について取り扱いました。

 #3ではCh.4の「ギャップを探す|第二の機会」を取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. ギャップを探す|第二の機会(Ch.4)
1-1. 冒頭部
1-2. 業績ギャップ
1-3. 認識ギャップ
1-4. 価値観ギャップ
1-5. プロセス・ギャップ
1-6. Ch.4を読んでみての感想、考察
2. まとめ

 

1. ギャップを探す|第二の機会(Ch.4)
1-1. 冒頭部(本の内容の要約)
ギャップとは、現実にあるものとあるべきものとの不一致である。原因がわからず検討もつかないことがあるにも関わらず、ギャップの存在はイノベーションの機会を示す兆候である。地質学における断層のようなもので、断層では経済構造や社会構造に変化をもたらす不安定な状態となる。
ギャップは予期せぬ事象と同様に、一つの産業、市場、プロセスの内部に存在するが、同時にギャップはそれを当然のこととして受け止めてしまいがちな内部の者が見逃しやすいものでもあるので注意が必要である。
イノベーションの機会としてのギャップはいくつかに分類でき、①業績ギャップ、②認識ギャップ、③価値観ギャップ、④プロセス・ギャップの4つで、それぞれ1-2〜1-5で取り扱う。


1-2. 業績ギャップ(本の内容の要約)
製品やサービスに対する需要が伸びているならば、業績も伸びていなければならない。業績が伸びている際は利益を上げることは容易なはずである。そのような状況にありながら業績が上がっていないならば、何らかのギャップが存在すると見るべきである。これらのギャップを機会として利用する者は、長期にわたってその利益を享受することができる。
業績ギャップをイノベーションの機会として利用するには、まず解決すべき問題を明確にしなければならない。そして、既知の技術と既存の資源を利用してイノベーションを実現しなければならない。
開発のための努力は必要である一方、革新的な血的発見を必要とする状況であるならば、企業家の出番はまだ早く、機は熟していないというべきである。イノベーションは複雑であってはならず、単純でなければならない。


1-3. 認識ギャップ(本の内容の要約)
産業内部の者が物事を見誤り、現実について誤った認識を持つとき、その努力は間違った方向に向かい、成果を期待できない分野に集中する。その時、それに気づき利用する者にとっては、イノベーションの機会となる認識ギャップが生まれる。
認識ギャップは自ら明らかになることが多く、真剣な努力が自体を改善させずむしろ悪化させる時は、そもそも努力の方向性が間違っている時が多い。そのような時には単に成果の上がることに力を入れるだけで大きな成果が簡単に得られる。
事実、認識ギャップを利用するために華々しいイノベーションを必要とすることはあまりない。認識ギャップは産業や社会的部門全体について見られる現象であり、その解決策は通常、的を絞った単純で小さなイノベーションである。


1-4. 価値観ギャップ(本の内容の要約)
日本におけるテレビの普及、ロシアにおける車の普及、利殖の約束はしない支出が堅実で収入が支出を上回る顧客を対象にした証券会社など、価値観ギャップを利用したイノベーションもある。価値観ギャップの後ろには必ず傲慢と硬直、それに独断があり、詰まる所「貧しい人たちが何を買えるかを知っているのは、彼ら貧しい人たちではなく私である」という考え方である。
あらゆるギャップの中で最も多く見られるのがこの価値観ギャップであり、イノベーションを行う者が価値観ギャップを利用しやすいのはこのためである。しかも彼らは邪魔をされずに放っておかれ、生産者や販売者はほとんど常にと言ってよいほど、顧客が本当に買っているものが何であるかを誤解している。消費者にとっての価値や期待は、供給者の考えているものとは異なるのが常である。
そのような時、生産者が示す典型的な反応が、「消費者は不合理であって品質に対し金を払おうとしない」であるが、こう言った時こそ生産者が顧客の価値としているものと、顧客が本当に価値としているものとの間にギャップが存在すると考えるべきである。


1-5. プロセス・ギャップ(本の内容の要約)
「老人性白内障の手術における筋肉の切開と血管の縫合」や「肥料や殺虫剤の均等に散布する」などのプロセス・ギャップに着目するのも一つである。以下このようなプロセス・ギャップは運や勘によって見つけられるものか、それとも体系的、組織的に見つけるべきものなのかについて議論する。
プロセス・ギャップはなかなか見つけられない代物ではなく、消費者がすでに感じていることである。重要なのは消費者の声に耳を傾けることであり、真剣に取り上げることである。製品やサービスの目的は消費者の満足にある。この当然のことを理解していれば、プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用することは容易であり、しかも効果的である。
一方で限界もあり、プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用できるのは、その世界の中にいる者だけであり、決して外部の者が容易に見つけ、理解し、イノベーションの機会として利用できるものではないということは理解しておく必要がある。


1-6. Ch.4を読んでみての感想、考察
ギャップに着目するというのは非常に面白い考え方でした。中でも価値観ギャップは見逃されがちなので注意が必要だなと感じました。
それぞれをの存在を把握するには、業績ギャップは「市場の成長と自社の業績の比較」、認識ギャップは「投下しているリソースと自社の業績とのギャップ」、価値観ギャップは「顧客インタビューなどと自社の認識とのギャップ」、プロセスギャップは「顧客インタビューにおいて改善ポイントと改善後のギャップ」を探すように意識すると良いのではと思われました。


2. まとめ
日本企業でありがちなのが1-3でまとめた認識ギャップが多いのではないかと思われました。
現実の認識が全く別のところにあるから、社内のリソースを活かしきれず結果に繋がらないケースが多いのではという印象です。この辺は様々な視点から多面的に物事を見る訓練をすべきなのではという気がしました。