Ch.5 メッセージドリブン(「伝えるもの」をまとめる)|『イシューからはじめよ』読書メモ #6

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「イシューからはじめよ」について読書メモをまとめています。

イシューからはじめよ|書籍|英治出版
読むにいたった経緯などは#1にまとめましたのでこちらのご確認おお願いいたします。

はじめに&本の考え方(序章)|『イシューからはじめよ』読書メモ #1 - lib-arts’s diary
基本的には章単位でまとめていければと思います。
#2では第1章の「イシュードリブン」について、#3では第2章の仮説ドリブン①について、#4では第3章の仮説ドリブン②について、#5では第4章のアウトプットドリブンについて取り扱いました。

Ch.1 イシュードリブン(「解く」前に「見極める」)|『イシューからはじめよ』読書メモ #2 - lib-arts’s diary

Ch.2 仮説ドリブン①(イシューの分解とストーリーラインの組み立て)|『イシューからはじめよ』読書メモ #3 - lib-arts’s diary

Ch.3 仮説ドリブン②(ストーリーを絵コンテにする)|『イシューからはじめよ』読書メモ #4 - lib-arts’s diary
https://lib-arts.hatenablog.com/entry/issue_driven5
#6では第5章のメッセージドリブンについて取り扱います。
以下目次になります。
1. メッセージドリブン(「伝えるもの」をまとめる)
1.1 「本質的」「シンプル」を実現する
1.2 ストーリーラインを磨き込む
1.3 チャートを磨き込む
2. まとめ
3. 本を通してのまとめ


1. メッセージドリブン(「伝えるもの」をまとめる)

1.1 「本質的」「シンプル」を実現する
・本の内容の要約
Ch.4までに取り扱った、イシューやそれを元にしたストーリーラインに沿って分析・検証が済んだら、あとはイシューに沿ったメッセージを人に力強く伝わる形でまとめる必要がある。これを筆者は「メッセージドリブン」と呼んでいる。仮説ドリブン、アウトプットドリブンに続く、イシューに対する解の質を高める「三段ロケット」の最後にあたる。
まとめ作業に取り掛かる前には「どのような状態になったらこのプロジェクトは終わるのか」という具体的なイメージを描く必要があり、単に資料や論文ができれば良いわけではない。人の心にインパクトを与え、価値を納得させることで本当に意味のある結果を生み出すことができる。検討報告の最終的なアウトプットは、ビジネスではプレゼンテーション、研究では論文の形が多いがこれは第一に聞き手・読み手と自分の知識ギャップを埋めるためにあることに注意が必要である。受け手に「①意味のある課題を扱っていることを理解してもらう」、「②最終的なメッセージを理解してもらう」、「③メッセージに納得して、行動に移してもらう」のようになってもらうことを目指すべきである。
どんな話をする際も、受け手は専門知識は持っていないが、基本的な考えや前提から始め最終的な結論とその意味するところを伝えるという「的確な伝え方」をすれば必ず理解してくれる存在として信頼すべきだ。「賢いが無知」というのを受け手の想定としては基本とする。「なんとなく面白いもの」や「多分大切だと思うもの」などは必要なく、「本当にこれは面白い」や「本手王にこれは大切だ」という内容だけを伝えれば良い。

 

・読んでみての感想、考察
非常に興味深い論述でした。「賢いが無知」は発表する際も発表を聞く際にもよく意識しますし、適切な考え方だと思います。
一点だけ気になったのが、ちょっとロジカルに寄り過ぎかなという気はしました。おそらく本の筆者の方は頭の良い方でかつ経歴的に頭の良い周りに囲まれて仕事して来られたと思うのでこれで正解だとは思うのですが、一般向けのプレゼンテーションなど状況においてはここまでロジカルに寄せ過ぎない方が良いのかなと思いました。
とはいえ、プロジェクトチーム内でのディスカッションであればついて来れない層は振り落として良いと思いますので、ある程度ステークホルダーのスクリーニングが可能な際は書かれている内容は非常に参考になる考え方だと思います。
また、経験則ですが「行動に移してもらう」というのはなかなか難しく、話の中でさりげなく伏線を張るべきですが、意識し過ぎると誘導にもなってしまいます。これはこれで賢い聞き手の印象が悪いです。この際にうまい言い方は個人的には自分が既に行っていると伝えた上で「一緒にやりましょう」が良いかなと思っています。これもステルスマーケティングにならないように気をつけたいですが、自分が本当に価値があると思うことしか話さないというスタンスで基本いると、ステルスマーケティングにはならないです。この際はオーナーシップを持つ必要があるのでビジネスシーンによっては難しいかもしれませんが、権限委譲をうまく行うことでそういった組織作りは可能ではないかと思います。

 

1.2 ストーリーラインを磨き込む
・本の内容の要約
ストーリーラインの構造を磨き込むにあたっては「1.論理構造を確認する」、「2.流れを磨く」、「3.エレベータテストに備える」の三つの具体的なプロセスがある。
プロセス①の「論理構造の確認」では、Ch.2(#3)で取り扱ったように「WHYの並べ立て」か「空・雨・傘」のどちらかを取っているはずなので、まずは最終形がこの二つのどちらかの構造でスッキリ整理できていることを確認すると良い。ここで「WHYの並べ立て」の場合は理由が一つくらい崩れても破壊的な影響は受けないことが多いが、「空・雨・傘」の場合は「空」の前提が崩れたり、それを受ける「雨」で大きな洞察が外れたりしていると、「傘」にあたる全体のメッセージに大きな影響が出るので注意が必要である。そのため、同時に全体の構造を見直しながら構造上不要になった部分を剥ぎ取っていきつつ、「空・雨・傘」の構造で整理するのが難しくなった場合は、「WHYの並べ立て」への組み替えができないかを考えると良い。もしもこの際に全体のメッセージに影響が出た時はむしろ「発見」だと捉え、全体のストーリー構造を見直すと良い。
プロセス②の「流れを磨く」では「混乱の中から一つの絵が浮かび上がってくる」ものではなく、「一つのテーマから次々とカギになるサブイシューが広がり、流れを見失うことなく思考が広がっていく」ものを優れたプレゼンテーションだと意識すると良い。リハーサルを通して、論理構造や分析チャートの説明を通して、全体の流れに不要なものが混じっていないか確認すると良い。
プロセス③の「エレベータテスト」では、20~30秒で複雑なプロジェクトの概要をまとめて伝えるようにできるようになると良い。このスキルはトップマネジメントをクライアントとして仕事を行うコンサルタントや大規模プロジェクトの責任者には必須のものである。ピラミッド構造でストーリーをまとめ、結論のポイントやその下に同じ構造で要点をまとめることで、状況に合わせて「何をどのレベルまで説明するか」を自在にコントロールすることができる。

 

・読んでみての感想、考察
こちらについても納得の内容でした。内容や話の流れを整理しておくことで、時間の尺や聞き手のレベル、シチュエーションによって話し方を変えられるのは理想だと思います。
これまでの経験上で説明がうまいなと感じた方は最初にいくつか相手に質問を投げかけ、その反応を見て情報の出し方を変えていた印象です。参考にさせていただいて大分うまくなったなと自分でも思うのですが、聞き手が複数人いてレベルがまちまちの際などはなかなか難しいので、この辺は日々意識が必要だなと感じています。

 

1.3 チャートを磨き込む
・本の内容の要約
チャートはP.217の図3のように、「メッセージ(伝えたい内容、イシュー)・タイトル(図のタイトル)・サポート(図表群)」の3つの要素からできており、一番下には必ず情報源を書くことを意識すべきである。優れたチャートが満たすべき条件は、「1.イシューに沿ったメッセージがある」、「2.(サポート部分の)タテとヨコの広がりに意味がある」、「3.サポートがメッセージを支えている」の3つに収斂すると思われる。
1.のイシューに沿ったメッセージは、読んだままイシューに即しているという意味である。2.のタテとヨコの広がりは、「分析は比較」で、軸の広がりが明確な意味を持つ必要があるという意味である。3.のサポートがメッセージを支えるというのは伝えたい内容に即した図表を用いるということである。
また、チャートの磨き込みにあたっては「1.一つのチャートに一つのメッセージを徹底」、「2.タテとヨコの比較軸を磨く(明確な比較軸を設定する)」、「3.メッセージと分析表現を揃える」の三点を意識すると良い。

 

・読んでみての感想、考察
実際の数字を見た方がわかりやすいのであまり図表は好きではなく、作成まで至らないことが多いのでこの辺は必要になる際は意識した方が良いなと思いました。図表とメッセージの対応までは普段は行わないですが、規模の大きな話の際には必要になるのでこの辺は覚えておきたいと思います。
以前マクロ経済のレポート作成にあたって技術コンサルティングやベースのアルゴリズムのコーディングを行いましたが、その際のレポートが非常に綺麗なものだったので、見せ方次第で違うものになるなと感じたことがあります。この辺の綺麗な見せ方については少々意識をするようにしておきたいなと思います。


2. まとめ
プレゼンテーションにあたってはいつも色々と頭を悩ませるところではあるので、非常に参考になりました。
これまでできていたところも見落としていたところも色々とあったので、一つの方法として念頭におきながら参考にできればと思いました。情報共有や発表のガイドラインを作成する際にもある程度の統一した価値基準を作るべきなので、そういった意味でも参考になりました。

 

3. 本を通してのまとめ
自己流でうまくいっていた内容でも言語化できていなかったことや視点として抜けていたところがいくつかあり、読んでみて非常に参考になりました。
人に勧めるにあたっては、考え方としては非常に参考になりますが、実務経験が足りないうちに読むと方法論に逆に縛られ過ぎる印象でもあったので、少なくとも3年以上の経験がある上で読む方が良いのではと思いました。逆に経験が少ないうちは色々と挑戦してみるのも重要なので、フレームワークと同様に捉えて考え方の基本指針として置いてイレギュラーについては都度対応するというスタンスで読む方が良いのではと思いました。