Ch.7_マネジメントの組織|ドラッカーを読み解く #5

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
#1では第1章、#2では第3章、#3では第5章、#4では6章について取り扱いました。

#5では第7章のマネジメントの組織について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 7章を読み解く上での前提
2. マネジメントの組織(Ch.7)
2-1. 新しいニーズ(Section31)
2-2. 組織の基本単位(Section32)
2-3. 組織の条件(Section33)
2-4. 五つの組織構造(Section34)
2-5. 組織構造についての結論(Section35)
3. まとめ


1. 7章を読み解く上での前提

組織論、中でも伝統的組織論あたりをざっと調べた上で読み進めた方が良いと思います。流れが掴みにくいので、事前知識がないとしんどいと思います。


2. マネジメントの組織(Ch.7)

ちょっと流れの掴みにくい章だった印象です。Section34の五つの組織構造を主題として、Section31を背景、Section32、33を前提と見ておくのが良いのかなと思われました。ざっくりだけ知りたい方はSection34だけ読むのもありだと思います。


2-1. 新しいニーズ(Section31)
Section31では組織論について、フェヨールの職能別組織やスローンの分権組織についてこれ以上現実に適合する組織はないと触れた上で、今日これらでは間に合わない新しいニーズが出てきていると言及されています。Section31ではフェヨールやスローンの組織論から学んだことと忘れるべきことについてまとめられています。
学んだこととしては以下が挙げられています。

① 組織は自然と進化して行くものではないこと
② 組織構造の設計は最初に手をつけるべきではなく、最後に手をつけるべきであること
③ 構造は戦略に従うため、組織構造に取り組みには目的と戦略から考えねばならないこと

忘れるべきこととしては以下が挙げられています。(結論も含めて書くため、忘れるべきというよりは注意すべきことの形式でまとめます)

① 組織構造や個々の職務の設計は課題中心で行わなければならず人間中心に設計すべきではないこと(ただし、仕事の割り当てにあたっては人と状況に合わせてやっていかなくてはならない)
② 階層型か自由型かの論争はあまり意味がないこと
③ 絶対唯一の組織構造があると思わないほうが良いこと

上記について言及された後に、成果こそ組織の目標かつ良否の判定基準であり、均整や調和が組織の目的ではないと締めくくられています。

 

2-2. 組織の基本単位(Section32)

Section32では組織の基本単位に関して諸々まとまっています。まず四つの問題として、以下の四つの観点が挙げられています。

① 何を組織の単位とするか
② 何を一緒にするか、何を分離するか
③ いかなる大きさと形にするか
④ いかなる位置付けを行い、いかなる関係を持たせるか

次に組織の基本活動(組織の重荷を担う部分)について以下のようにまとめられています。

① 組織構造の設計は、「組織の目的を達成するには、いかなる分野において卓越性が必要か」との問いに答えることからスタートする必要があること
② 同時に「いかなる分野において成果があがらない時、致命的な損害を被るか、いかなる分野に最大の弱点を見るか」の問いに答えることも必要であること
③ 「本当に重要な価値は何か」について答えることも必要であること

また、これら三つの問いが明らかにする組織の基本活動を担う部分を組織の基本単位として定義されています。
次に企業内の活動は、その貢献の種類によって大きく四つに分類できるともされています。

① 成果活動: 組織全体の成果に直接あるいは間接的な関わりを持つ測定可能な成果を生む活動
② 支援活動: アウトプットが他の組織単位によって利用されることで初めて成果を生む活動
③ 家事活動: 組織運営に付随する活動
④ トップ活動: トップマネジメント系の活動

上記は詳細についても言及されていますが、長くなるので省きます。
また、後半部で意思決定の原則が言及されていたのでまとめます。まず意思決定の原則は「意思決定は常に可能な限り行動に近いところで行う必要があり、かつ影響を受ける活動全体を見通せるだけの高いレベルで行う必要がある」ということについて言及されています。わかりにくいので最適化問題に落とすと、低くするというのが目的関数で活動を見通せるというのが制約条件です。
Section32は比較的長く全て扱うと大変なので、このくらいにしたいと思います。


2-3. 組織の条件(Section33)

Section33ではまず組織構造の種類ということで、職能別組織、チーム型組織、分権組織、擬似分権組織、システム型組織の5つが挙げられています。仕事を中心に組み立てるのが職能別組織とチーム型組織、成果を中心に切り分けるのが分権組織と擬似分権組織、関係性に基づいて組み立てられるのがシステム型組織とそれぞれまとめられています。
次に、組織が最低限持たねばならない7つの条件として、明快さ、経済性、方向付けの容易さ、理解の容易さ、意思決定の容易さ、安定性と適応性、永続性と新陳代謝について挙げられています。冗長な印象なのでざっくりまとめると、判断基準がわかりやすく成果主義で安定していて新陳代謝がはかられる環境くらいに捉えるで十分かと思われました。
また、トレードオフとバランスが必要で、単純な組織であってもいくつかの組織構造を同時に適用することが重要であるとされています。


2-4. 五つの組織構造(Section34)

Section33で言及された五つの組織構造に関してまとめられています。
まず職能型組織は明快な反面適応性に欠ける組織構造で、うまく行っているいっている時は良いがうまくいかないとき非常な不経済をもたらし縦割りのようになってしまうとされています。また意思決定についても貧弱な組織構造とされています。

チーム型組織は異なる技能、知識を持つ人が特定の目的を持ってともに働く人の集まりとされています。柔軟性を持った集まりである反面、規模に問題があり7~8名が限界とされています。このため、トップマネジメントだったり新規事業のチームだったりに用いやすい組織構造のようです。おそらくR&Dなどもこの類に入り、振り返ってみるとこれまで関わった仕事は全てチーム型での仕事だった気がします。チーム型の仕事は新しいチャレンジが色々とできるので非常に楽しいです。
連邦分権制や擬似分権制はそれぞれカンパニー制事業部制とも言われる形態で、一つ一つの活動を成果で見た上で組織を切り分けていくような組織構造です。明確に成果単位で切り分けられるところは連邦分権制、切り分けが難しいところを擬似分権せいで運用していくとされています。比較的大規模のマネジメントに向いており、組織が小さい際にはあまり検討すべきでないとされています。
システム型組織は、チーム型組織を発展させたもので、チーム型では個人になっていたところが組織にもなりうるというのが違いです。条件が厳しい組織構造とされており、組織の目的が明確である、組織の基本単位が全て責任を持つ必要がある、組織の構成単位の全てが自らの目標以外にも責任を持たねばならないの三点が条件として必要であるとされています。NASAの月面着陸のような公共性の強いプロジェクト以外は厳しいかもしれません。


2-5. 組織構造についての結論(Section35)

組織構造の結論として簡単にまとめられています。最終的には組織構造は目的達成のための手段に過ぎないため、成果に着目して評価していくべきであると締めくくられています。


3. まとめ

実際には今回の5つの組織構造以外でも、マトリクス型組織やホラクラシー(システム型に入れても良いかもしれませんが)など、様々な呼び名があります。この辺は時代の変化によって色々と出てきていると思うので、ドラッカーを絶対視し過ぎないのも必要かと思われます。