Ch.8_組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #11

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#10では第7章の『戦略プランニングと戦略思考は異なる』を取り扱いました。

Ch.7_戦略プランニングと戦略思考は異なる|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #10 - lib-arts’s diary

#11では第8章の『組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか』を取り扱っていきます。
以下、目次になります。
1. 組織構造の研究から何がわかるか
2. 五つのコンフィギュレーション
3. 組織診断ツールとしての各形態
4. 流行より適合を考えよ
5. 感想・まとめ


1. 組織構造の研究から何がわかるか(簡単な要約)
様々な事例からわかるのは「組織は皆同じであり、部品の単なる寄せ集めにすぎないものである」という思い込み(前提)が存在することである。そして組織設計に関わる様々な問題はこの前提から生まれている。反対の前提に立てば、優れた組織は構成ユニットに一貫性があり、一つの要素を変える際にはその他の全てに与える影響を考えなければならない。管理範囲、職務拡大の程度、分権の形、計画システム、およびマトリックス構造は、単独に取捨選択すべきものではない。
組織の特徴は、原子から天体に至る全ての現象に似て、自然に群れをなし、いくつかのコンフィギュレーション(相対的配置)に落ち着くということである。間違った特徴を組み合わせると組織はうまく機能しないし、自然な調和も生まれない。
これらの考えに照らして組織構造の研究について考えてみると、はっきり区別できる五つの携帯が明瞭に浮かんでくる。この形態をそれぞれ単純構造、機械的官僚制構造、プロフェッショナル的官僚制構造、事業部制構造、アドホクラシー(臨機応変)と名付けた。本章ではそれぞれの形態について説明し、それらがマネジャーにとって持つ意味を考察する。

 

2. 五つのコンフィギュレーション(簡単な要約)
五つの形態を説明し識別するために図表8-1のような五つの構成部分を考えた(以下説明はしますが、図表については本を直接ご確認いただけたらと思います)。五つの構成部分を下記のようにまとめる。

・戦略の司令塔
-> 一般的な言葉だとトップマネジメントと考えておくとよい。

・オペレーションの主役
-> 組織の基礎的作業を担当する人たち。トップマネジメントによって最初は雇われる。

・ミドルライン
-> 組織が成長するにつれ、トップマネジメントとオペレーションを行う労働者の中間にできる中間管理職。

テクノストラクチャー
-> 仕事の公的な計画とコントロールに関わるシステムづくりを担当する分析スタッフ。

・サポートスタッフ
-> 社員食堂やメール室から広報部や法律相談に至るまで組織における間接的サービスを提供する。

組織構造の主目的は多種多様に分割された仕事を調整することである。その調整をいかなる方法で実現するかによって、組織がどんな形を取るか決まってくる。
下記に五つの組織形態に関して説明を行う。

・単純構造
-> 1人か2~3人のトップと基礎作業の担当者のグループから構成される一つの大きな単位にすぎない。組織としては多くのものが欠落しており、行動のほとんどが標準化も公式かもされていない。調整昨日はほとんどトップマネジメントが直接監督し遂行するから、ミドルラインのラインマネジャーをほとんど雇う必要がない。

機械的官僚制構造
-> 調整のための作業プロセスの標準化とその結果としての非熟練職務、高度に専門化された職務に重点が置かれる。

・プロフェッショナル的官僚制構造
-> 大学や会計事務所などで多く取り入れられる構造。オペレーションの主役が専門訓練を受けたプロフェッショナルのため、分権化の程度が非常に高くなる。オペレーションの面でも戦略面でも、多くの意思決定権限は職階を超えて、直接オペレーションの主役であるプロフェッショナルたちへと動く。

事業部制構造
-> 一貫性のある統合された組織というより、ゆるい経営管理の下にかなり独立した事業体が結合した寄り合い所帯。プロフェッショナル的官僚制と似ているが、プロフェッショナル的官僚制では独立主体が個人であるのに対して、事業部制ではそれは事業部門と呼ばれるミドルラインの組織単位である。

・アドホクラシー
-> これまでの4つの組織構造はどれも宇宙産業、石油化学シンクタンク、映画制作のような複雑なイノベーションが要求される現代的な産業には向かない。第五の形態であるアドホクラシーのような相互に作用し合うプロジェクトチームの構造が好まれる。

 

3. 組織診断ツールとしての各形態(簡単な要約)
組織構造(形態)の理解にあたって重要なのはマネジャーが組織の経験するいろいろな引力と、組織が志向している形態を検討し、組織設計を改善できることである。言葉を換えればこの分類法は、組織設計上の諸問題点、特に組織の構成要素間の適合について診断する際に有効なツールとして役立つ。
例えば以下に四つの基本的な判断の基準を示す。

・内部要素に一貫性があるか
-> 組織も人間と同じで、どうありたいかをはっきり決めて、それをきちんとかつ健全に追求する方が主体性を喪失しない。

・外部統制は機能的か
-> 外部統制が加えられた時、よくあるのは機械的官僚制に傾斜することである。すなわち外部統制で最も被害を受けるのは単純構造とプロフェッショナル的官僚組織とアドホクラシーである。

・適合しない要素があるか
-> 組織の経営層は内部調和の必要性を認識して特別な療法を必要とする部分を別扱いすることがある。が、別扱いを覆い隠して内部の一貫性を求めても覆い隠されていないケースも多いので注意が必要である。

・構造は正しくても状況が変わっていないか
-> 内部の一貫性を達成し維持しているケースでも、状況が変わり置かれている状況に合わせて設計されていなくなってしまうケースもある。例えばたえずイノベーションが要求されるダイナミックな産業でかっちりした機械的官僚制を維持しようとしたり、逆に最小限のコストが要求される安定的な産業で柔軟なアドホクラシーを実現しようとしたりすることは意味をなさない。

 

4. 流行より適合を考えよ(簡単な要約)
結論的に言うと、一貫性、統一、適合、調和が組織設計上の最大要因であるが、かなりのコストを伴う。全てを満足させる組織はありえないので、最もうまく機能する方法を選びその結果を甘受すべきである。
それぞれのニーズに合うように何らかの新しい形態を作り出せば良いので、今どんな形態であるかではなく、自ら組織形態を創出するのだと考えておくとよい。

5. 感想・まとめ
#11では第8章の『組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか』を取り扱いました。組織構造については必要以上に考えすぎず、現在置かれている状況に対し、極力合理的かつ客観的に考えていくのが良さそうだと思われました。
#12では第9章の『オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図』について取り扱っていきます。