Ch.9_オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #12

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#11では第8章の『組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか』を取り扱いました。

Ch.8_組織設計:流行を追うか、適合性を選ぶか|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #11 - lib-arts’s diary

#12では第8章の『オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図』を取り扱っていきます。
以下、目次になります。
1. 新たな視点を提供するオーガニグラフ
2. オーガニグラフの基本概念
3. オーガニグラフの具体例
4. オーガニグラフの応用型:「国境なき医師団
5. 組織のハブとしてのコンピタンシー
6. マネジメントの位置付けを問い直す
7. 感想・まとめ


1. 新たな視点を提供するオーガニグラフ(簡単な要約)
実際の企業活動を垣間見るにあたって実際に中に踏み入れてみると、どこを見てもヒトやモノが慌ただしく行き交っていることがわかる。一方、組織概要について問い合わせると小さな長方形を整然と積み重ねた組織図を渡されることが多い。
だが、組織図を見てわかるのは、せいぜいマネジャーの名前や肩書きぐらいである。組織図はさも大切なもののように扱われているが、役立たないこともある。組織における伝統的なヒエラルキーが崩壊し、これまでには見られなかったような複雑極まりない組織形態がそれに取って代わっているために、企業における業務の仕組みを理解するのは並大抵のことではなくなってきている。
上記の話を受けて組織の実態を表現しその理解を促すような新手法を構築しようと模索してきたのだが、「組織図」を意味するフランス語のオーガニグラムからヒントを得て、新手法を「オーガニグラフ(organigraph)」と名付けた。オーガニグラフでは誰がどの役職に就いているかを示すよりもむしろ事業活動を俯瞰することに重点をおいている。例えば石油化学会社のオーガニグラフの作成にあたっては、各業務が原油の調達->輸送->精製->販売のような流れに沿ってオーガニグラフが作られている。
オーガニグラフを見た際に、順序通りに整然と進められる業務は中央による一元的なマネジメントがうってつけだが、取引価格の交渉などを必要とするウェブ状の業務をうまくこなすためには分権的な組織構造が必要になる。このように様々な関係を図示して見ると各部門にはそれぞれ異なる経営姿勢が求められることがわかる。


2. オーガニグラフの基本概念(簡単な要約)
オーガニグラフにはセット(集合体)とチェーン(連鎖)という二つの概念が用いられている(それぞれグラフ理論におけるノードとエッジになぞらえておくと良いです)。一つ目の「セット(集合体)」は機械やヒトの集まりであり、一般に施設や資金、全体的な管理機能といった経営資源が共有されており、それがまさに一つの組織を構成している。二つめの「チェーン(連鎖)」はオーガニグラフにおいて繋がりの情報を示すために用いられており、例えば自動車の組立ラインは流れ作業のプロセスをチェーンと見立てて理解することができる。バリューチェーンサプライチェーンにおけるチェーンも似た意味で用いられているのでそちらも意識しておくと良い。
また、オーガニグラフにおけるセットやチェーンの組み合わせのパターンとしてハブとウェブがある。「ハブ」はヒトやモノ、情報などの調整が行われる中心的な「場」を意味する概念であり、物理的な場所だけでなく抽象的な調整機能もハブに含まれる。また、「ウェブ」はヒトやモノ、情報がより複雑な関係を織りなしている場合をウェブという概念で表現している。
オーガニグラフを導入した新しい組織概念はこれまでとは別の角度から組織を見ることを可能にし、戦略上の発想を豊かにするという付加価値を生み出す。

3. オーガニグラフの具体例(簡単な要約)
セットやチェーン、ハブ、ウェブといった「形」を組み合わせてオーガニグラフを描くと、実に様々な「絵」が出来上がる。オーガニグラフにはこれといって決まった形式があるわけではないので、型にはまった組織図を作成する場合とは違い、想像力や柔軟な発想を駆使して独自のアウトプットを作り上げる必要がある。オーガニグラフの作成にあたっては名前や肩書きよりも実際の関係や業務プロセスであり、それを理解しないことにはオーガニグラフをうまく作成することなどできない。
(本文中に様々な図表が載っていますがここでは省略します)


4. オーガニグラフの応用型:「国境なき医師団」(簡単な要約)
(こちらも3節と同様に図表を元にしないとわかりにくいため省略します)


5. 組織のハブとしてのコンピタンシー(簡単な要約)
コングロマリットが高い独立性を持つ事業部の集合体(セット)であることは前述の通りだが、このことは多角化が進んだ企業、とりわけ他業種の企業を買収して成長してきた企業についてよくあてはまる。このような企業では複数の事業部がポートフォリオを形成しており、これを統括する本社が資本の流れを管理し、業績を評価するために全社に統一的な財務基準を設定している。
一方で近年では、コングロマリット化による企業成よりも、コアコンピタンス(中核的能力)を重視する考え方が主流となっているので、この点についても注意が必要である。


6. マネジメントの位置付けを問い直す(簡単な要約)
組織をこれまでとは違った角度から捉えると、多くのものを得ることができる。その中でもとりわけ大きな意義を持つのはマネジメントについての理解を新たにできる点である。
組織形態は経営哲学を映し出す鏡であり、経営に対する考え方の違いが投影されている、組織がセット型であれば、そこでのマネジャーの主な役割は、各分野の実務から距離を置いてそれらの観察や比較を行うことであろうと推測できる、例えば、コングロマリットの本社執行役員は各事業部を監督するにあたって常に経営資源の配分を念頭においている。それこそが彼らの主な仕事だからである。


7. 感想・まとめ
#12では第9章の『オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図』を取り扱いました。オーガニグラフと聞くと難しそうな印象を受けたのですが、グラフ理論の延長で考えておくと良さそうだったので、あまり難しく考えても良さそうだと思われました。
#13では第10章の『政府の組織論』について取り扱っていきます。