Ch.6_戦略クラフティング(後編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #9

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#7では第5章の『マネジメントに正解はない』を取り扱いました。

Ch.5_マネジメントに正解はない|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #7 - lib-arts’s diary
#8、#9では第6章の『戦略クラフティング』を取り扱っていきます。#8では「戦略は試行錯誤しながら形成されていく」までについて取り扱いました。

Ch.6_戦略クラフティング(前編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #8 - lib-arts’s diary
#9では同じく第6章の『戦略クラフティング』より、「プランニングと創発の共存」以降を取り扱っていきます。
以下、目次になります。
1. プランニングと創発の共存
2. 思いも寄らぬ方法が戦略を転換させる
3. 量子的飛躍理論からの洞察
4. 優れた戦略を想像するために
5. 感想・まとめ


1. プランニングと創発の共存(簡単な要約)
ある日は考え、別の日は仕事に専念するという工芸家はおらず、工芸家の頭はその指とつながっている。にも関わらず、大企業では頭脳と指の動きを分離しようとする。結果として、頭脳と指の間に不可欠なフィードバックループを断ち切ってしまう。
戦略は日常的な末端の活動から遠く離れた組織の高次元において作成されると考えるのは因習的なマネジメントにおける最大の誤りの一つである。事実この考え方は、ビジネスまたは公共政策に起きている衝撃的な破綻の多くを説明している。
実際に行動を行いながら次第に形成されてくる戦略のことをマギル大学の研究チームでは「創発戦略」と呼んでいる。要するに様々な行為が単純にパターンへと集約されていくということである。純粋にプランニングされた戦略の場合は一度立案されてしまえば学習の芽を完全に摘んでしまうが、創発される戦略の場合はむしろ学習が促される。すなわち各々が一つ一つの行動を積み上げながらその結果に反応していくうちにだんだんとパターンが現れてくるからである。
戦略を策定するプロセスはプランニングと創発の二つの繰り返しで行われていく。この際にプランニングは学習を排除する一方で創発は統制を排除するため、一方に偏りすぎるとどちらの方法もその意味を失ってしまうので注意が必要である。学習と統制は結びついていなければならず、純粋なプランニング戦略や純粋な創発的な戦略はこの世に存在しない。
純粋なプランニング戦略とと純粋な創発戦略は一本の線上の両極にあり。クラフティングはこの線上のどこかに位置することになる。二つの極のどちらかに寄ることもあるだろうが、ほとんどの戦略はこの線上の中間に落ち着くことになる。

 

2. 思いも寄らぬ方法が戦略を転換させる(簡単な要約)
優れた戦略はおよろ思いも寄らない場所で生まれたり、考えもしなかった方法で形成されたりする。したがって戦略を策定する唯一最善の法など存在しない。
計画的に創発を促す方法を、我々は「プロセス戦略」と呼んでいる。この方法では、マネジャーが戦略を形成するプロセス(組織構造の設計、人員配置、手続きなど)をコントロールしていくが、具体的な開発は他の人々に委ねる。
このプロセス戦略(アンブレラ戦略)はとりわけ高度の専門技術と創造性が要求されるビジネスで活用されており、これらの組織ではビジネスの実行者が戦略プランナーであることが許される時その効果が発揮される。これは、ヒエラルキーの下層部の人たちこそ、現場の状況を肌身で理解しており、かつ必要な技術的スキルを備えているからである。要するにこれらの組織は全員が戦略プランナーであり、また工芸家なのである。

 

3. 量子的飛躍理論からの洞察(簡単な要約)
戦略的マネジメントに関する因習的な見解とりわけプランニングに関する文献では、演歌は連続的であり組織はこれらの変化に常に適応しなければならないと述べるが、この見解には矛盾がある。なぜならここで語られる戦略という概念は連続性と安定性に拠って立っており、変化を前提としていないからである。
因習的戦略論に欠けている点は、いついかに戦略を変更すべきかである。戦略プランニングのジレンマは安定を求める力と変化を求める力をいかに調整するかにある。すなわち一方で努力を重視しながら効率を高め、他方で変化する外部環境に適応しながら、時流と歩調を合わせるという要請である。
ほとんどの組織が安定を望むが、それは別に戦略を転換させなくても既存の戦略を活用しながら成功を継続させられるからである。工芸家と同じく、組織も地震の能力を活用しながら既定路線に沿って継続的改善を続けていく。一方でその間世間はゆっくりと時には急速に変化しているため、戦略の方向性は徐々にあるいは突然に外部環境とずれてしまう。その際に組織はこれまでのパターンの多くを急遽変更し、組織は新たな安定を求めて新しい戦略、新しい構造、新しい文化を再統合して、その姿勢を立て直そうとする。
組織は変革と安定というダイナミズムを時間的に分離する一方、それぞれを重視して適時に融和させる必要があるようである。多くの戦略が失敗に終わるのは、これら二つのダイナミズムを混同してしまった場合、あるいは一方を無視してた方だけを偏重してしまった場合である。

 

4. 優れた戦略を想像するために(簡単な要約)
戦略家についての一般的な見解を述べれば、プランナーでありあるいはビジョナリーである。先見を持って将来を見据える行為、とりわけ想像的なビジョンが強く必要とされる。
これらに加えて、パターン認識者という役割を提示したい。これは戦略が計画的に策定されることもあれば、創発的にも形成されうるという一連のプロセスを管理する人物であると見る立場と言える。
また、下記などを意識しておくと良い。

・安定性を統御する
・非連続性を察知する
・ビジネスを理解する
・各種のパターンをマネジメントする
・変化と連続性を融合させる

 

5. 感想・まとめ
#9では第6章の『戦略クラフティング(Crafting Strategy)』から「プランニングと創発の共存」以降を取り扱いました。プランニングと創発の共存ということで、どちらかを選ぶではなく二つを一つの線上の極とすることでその間でバランスを取るとしているのが興味深い内容でした。あらかじめ演繹的に戦略を決めることと帰納的に経験から戦略を決めることのバランスが必要なのだと思われました。
#10では第7章の『戦略プランニングと戦略思考は異なる』について取り扱っていきます。