Ch.6_戦略クラフティング(前編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #8

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#7では第5章の『マネジメントに正解はない』を取り扱いました。

Ch.5_マネジメントに正解はない|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #7 - lib-arts’s diary
#8、#9では第6章の『戦略クラフティング』を取り扱っていきます。#8では「戦略は試行錯誤しながら形成されていく」までについて取り扱います。
以下、目次になります。
1. 戦略プランニングか、戦略クラフティングか
2. 戦略は未来の計画であり、過去の踏襲でもある
3. 戦略は理路整然と意図され、計画されたものなのか
4. 戦略は試行錯誤しながら形成されていく
5. 感想・まとめ


1. 戦略プランニングか、戦略クラフティングか(簡単な要約)
誰かが戦略を計画立案(プランニング)する様子を想像してみるとすると、体系的に思案している様子を思い浮かべると思われる。たとえばオフィスで一人または数人の執行役員が椅子に座って、これからの行動の順序や方向を考えている姿である。そして他の人たちはここで決められた方向に従い、スケジュール通りに実行することになる。
上記の前提は、理性、合理的な統制、競合他社や市場に関するシステマティックな分析、自社の強みと弱みの分析、そしてこれらの分析がもたらす総合的な判断に基づいて、明快かつ具体的、そして網羅的な企業戦略を策定するなどがある。
一方で、戦略はクラフティングのように工芸的に創作されるというイメージの方が、実効性の高い戦略が生まれてくるプロセスを表しているのではないかと思われる。マネジャーが陶芸家であれば戦略は粘土であり、自社のケイパビリティという過去と市場の可能性という未来の間にマネジャーは座っていると考えることができる。第6章ではこの比喩について掘り下げていく。この際に戦略はどのように形成するかではなく形成されるかについて考えるものとする。


2. 戦略は未来の計画であり、過去の踏襲でもある(簡単な要約)
「戦略とは何か」と尋ねると大抵の人たちが一種の計画であり、未来の行動を明らかにするガイドであると定義すると思われる。しかし、戦略という言葉は未来を意図する行動を表現するためだけではなく、過去の行為を説明するためにも用いられる。実際戦略は企画され何かを意図させると共に実行に移され実現される。それがどのように取り組まれているかは「実現された戦略」を見れば一目瞭然である。
企業の行動に一定のパターンを見つけ出すことは別段難しいことではない。これはむしろ当然と思われ、というのも企業がパターンを変えるにあたっては生産ラインの工程を大掛かりに変更しなくてはならないからだ。
人間というものは、自分の意識下にある同期を否定することによって、他人ばかりか自分さえも欺こうとするので注意が必要である。


3. 戦略は理路整然と意図され、計画されたものなのか(簡単な要約)
戦略的マネジメントについてのこれまでの学術的見解によれば、集団の意思を読み取ったり戦略を策定しているのが誰かを知ったりすることは決着済みとされている。組織論の研究者たちはこれを「起因的属性(attribution)」と呼んでおり、この言葉はよくビジネス誌で用いられている。
とはいえ、この単純な仮定に基づいてフォーマルな戦略形成システムを構築する作業については、多くが失敗に終わり世に知れ渡るのはほぼ間違いないと思われる。
このような混乱から逃れ、さらに戦略形成プロセスの周りに積み上げてきた人為的な複雑性から解放されるためにも、我々は基本概念に立ち戻るべきである。その最たるものは「思考と行動の関係」であり、これは工芸家の基本概念であるのと同時に、戦略クラフティングのプロセスを解くカギとなるだろうと思われる。


4. 戦略は試行錯誤しながら形成されていく(簡単な要約)
これまで戦略立案について記した文献のほとんどが、戦略立案を「論理的に計画するプロセス」と描いている。これは戦略を立案しそれを実施すると考えられ、いかにも理にかなった手順のように思われる。
第6章を通した考え方として、行動が思考を触発し一つの戦略が創発されるとも考えることができる。この実行にあたっては、一人だけの組織の場合は実行者は計画者であるため、様々なイノベーションが迅速かつ容易に戦略へと具体化されていく。一方で大企業の場合はイノベーションを実現しようという社員は戦略を指示する経営幹部から10階層も地位が離れているかもしれないし、同じ仕事をしている何十人もの同僚たちに新しいアイデアを売り込んでいかなければならない場合もある。
ここでの論点としては単純きわまりなく、戦略は策定される場合もあれば自己形成される場合もあるということである。言い換えれば戦略は状況変化に即して形成されることもあれば、戦略立案から実施段階へと連続するプロセスを経て論理的に策定されることもあるということである。
プランニングと実行は別物であるという一般概念に問題があると思われる。時には実際の行動や経験を通して戦略が自己形成されることを認められるとより良い戦略策定ができると思われる。


5. 感想・まとめ
#8では第6章の『戦略クラフティング(Crafting Strategy)』から「戦略は試行錯誤しながら形成されていく」までについて取り扱いました。戦略は過去も表すものであるということや、試行錯誤しながら作り出していくということに対しては非常に納得感の強いものでした。この辺は全て数字で議論するには難しい点だと思います。
#9では後半部として「プランニングと創発の共存」以降について取り扱っていきます。