Ch_12〜13 企業家としてのマネジメント&既存企業における企業家精神[前半]|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #9

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#8ではCh.10の「アイデアによるイノベーション」とCh.11の「イノベーションの原理」について取り扱いました。

#9ではCh.12の「企業家としてのマネジメント」とCh.13の「既存企業における企業家精神」の前半部について取り扱えればと思います。(分量的に前半部としただけで、内容の繋がりをそこまで考慮していない分け方となっています)
以下目次になります。

1. 企業家としてのマネジメント(Ch.12)
1-1. 企業家としてのマネジメント
1-2. Ch.12を読んでみての感想、考察
2. 既存企業における企業家精神(Ch.13_前半)
2-1. 企業家たること
2-2. 企業家精神のための経営戦略
2-3. 企業家精神のための具体的方策
2-4. Ch.13[前半]を読んでみての感想、考察
3. まとめ

 

1. 企業家としてのマネジメント(Ch.12)
1-1. 企業家としてのマネジメント(本の内容の要約)
既存の企業であれベンチャーであれ、起業家精神には共通の原理がある。基本事項、機能する方法機能しない方法、イノベーションの種類と機会それぞれが共通している。いずれも体系的なマネジメントを必要とする。
とはいえ、既存の企業、公的機関、ベンチャーそれぞれについて異なる問題、限界、制約があるので、それぞれについての企業家としてのマネジメントを実践するための具体的な手引きが必要である。何をなすべきか、何に気をつけるべきか、何に気をつけるべきかなどについての手引きである。
既存の企業(Ch.13)、公的機関(Ch.14)、ベンチャー(Ch.15)のそれぞれについて、この後の章でまとめられているので、手引きの詳細はそちらを確認すると良い。


1-2. Ch.12を読んでみての感想、考察
Ch.12はCh.13〜Ch.15までの内容の前置きとして書かれていました。
それぞれ共通点もありながら相違点もあるということはこの後の章を読んでいく上で意識すべきだと思われました。

 

2. 既存企業における企業家精神(Ch.13_前半)
2-1. 企業家たること(本の内容の要約)
自動車、トラック、航空機、コンピュータなど今世紀(20世紀)最大のイノベーションは既存の大企業からは生まれなかった。一方で、大企業はイノベーションを行わず行うこともできないとの通年は半分も事実ではなく、企業家としてイノベーションに成功した大企業の例は多い。大企業の場合、ある分野では企業家としてイノベーションに成功し、ある分野では失敗しているという事実が評価を複雑にしていると思われる。
確かによく問題とされる大組織の官僚的体質や保守的体質は企業家精神にとって深刻な問題となるが、規模の大きさそのものはイノベーション精神の障害とはならない。障害は既存の事業そのものであり、特に成功している事業である。ただし大企業や中堅企業は小企業に比べるとこの障害をかなり容易に乗り越えている。
とはいえ既存の事業はイノベーションと企業家精神の障害となるので、問題が過去および現在の事業の成功に注意しなければならない。常時イノベーションに成功している既存の企業、特に企業家として成功している大企業や中堅企業の例に倣う必要がある。これらの例においては既存の事業と新しい事業の双方の成長が可能であることを示している。
企業家精神には以下の四つの条件がある。

1. イノベーションを受け入れ、変化を脅威でなく機会とみなす組織を作り上げねばならない。
2. イノベーションの成果を体系的に測定しなければならない。
3. 組織、人事、報酬について特別の措置を講じなければならない。
4. 行ってはいけない幾つかのタブーについて理解しなければならない。


2-2. 企業家精神のための経営戦略(本の内容の要約)
企業家精神のためには、組織の中の一人一人が新しいものを求める必要がある。トップマネジメントは「いかにしてイノベーションに対する障害を克服するか」に関心があるがこれは問題定義が間違っており、正しい問題は「いかにしてイノベーションを当たり前のこととし、それを望み、その実現のために働くようになるか」である。イノベーションを異質なものとして推進していたのでは何も起こらないため、日常業務とまではいかなくても日常的な仕事の一つとする必要がある。
何よりも組織の一人一人にとって、イノベーションが既存の事業よりも魅力的かつ有益なものになるようにする必要がある。イノベーションこそ、組織を維持し発展させるための最高の手段であり、一人一人の成功にとって最も確実な基盤であることを周知させる必要がある。
イノベーションを行うには以下の四つの段階がある。

1. 組織の衛生学
-> イノベーションを行うにはイノベーションに挑戦できる最高の人材を自由にしておかねばならず、同時に資金も投入できるようにしておかねばならない。いずれも過去の成功や失敗を廃棄しない限り不可能である。

2. ライフサイクル
-> 製品、サービス、市場、流通チャネル、工程、技術にはいずれもライフサイクルがあることを前提として現状を把握する必要がある。

3. イノベーションの目的設定
-> いかなるイノベーションをいかなる領域においていかなる期限で行う必要があるか明確にする必要がある。

4. 廃棄の制度化
-> 既存の事業、製品、サービス、市場、技術についての診断やイノベーションの必要などの把握により、イノベーション目標と期限について企業家としての計画を立てる必要がある。

上記が企業家精神のための経営政策である。既存の企業が起業家精神を発揮するには、自らの製品とサービスが競争相手によって陳腐化されるのを待たず、自ら進んで陳腐化していかねばならない。新しい事業の中に脅威ではなく機会を見出すようにマネジメントしなければならない。


2-3. 企業家精神のための具体的方策(本の内容の要約)
既存の企業において企業家精神を発揮するには以下にまとめる三つのマネジメント上の具体的な方策がある。

1. マネジメントの目を機会に集中させる。
-> マネジメント層に問題の報告がされがちな一方で、機会についても報告がなされる必要がある。

2. 各領域のマネジメントの人間を40~50人集め、戦略会議を開く。
-> 実際に会議でなされた報告よりも、戦略会議に参加した者の姿勢や価値観に与える影響が大きいというケースもあったとされている。

3. トップマネジメントが自ら開発研究、エンジニアリング、製造、マーケティング、会計などの部門の若手と定期的に会う。
-> 頻繁に開く必要はないが、年に2~3回は若手25名〜30名ほどと時間を共有することで、若手の育成やトップが若手の関心を理解することの二つを同時に実現することができる。


2-4. Ch.13[前半]を読んでみての感想、考察
まだ途中でありますが、様々な条件、戦略、具体的な方策についてまとまっており、非常に参考になりました。
この辺の各項目の箇条書きは何度か読み返して、チェックリストとして使用するのも有意義だと思われました。


3. まとめ
既存の企業(Ch.13)、公的機関(Ch.14)、ベンチャー(Ch.15)のそれぞれについて言及されているので、それぞれを対比で見ると非常に面白そうな印象を受けました。まだ、Ch.13の途中ですが、最後まで読んだ上でもう一度戻ってくると良さそうです。