Ch.3_仕事と人間|ドラッカーを読み解く #2

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
#1では第1章について取り扱いました。

 第2章は公共機関のマネジメントの話なので飛ばしまして#2では第3章の仕事と人間について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 3章を読み解く上での前提
2. 仕事と人間(Ch.3)
2-1. 新しい現実(Section9)
2-2. 仕事と労働(Section10)
2-3. 仕事の生産性(Section11)
2-4. 人と労働のマネジメント(Section12)
2-5. 責任と保障(Section13)
2-6. 『人は最大の資産である』(Section14)
3. まとめ


1. 3章を読み解く上での前提
2. 仕事と人間(Ch.3)


2-1. 新しい現実(Section9)
最後の文が要約となっているため抜粋します。(細かい文面は編集しています)

かくして今日、われわれは仕事と人のマネジメントに関して三つの挑戦に直面している。
① 被用者社会の到来
② 肉体的労働者の心理的、社会的地位の変化
③ 脱工業化社会における経済的社会的センターとしての知識労働知識労働者の台頭

それぞれまとめた表現だとわかりにくいので、それまでの流れを含めた上で要約をすると、まず①の被用者というのは組織で働く人のことを指しています。②については若干話が古いですが、産業構造の変化で第三次産業が中心となってきたということについて言及しています。③に関しても②と同様産業構造の変化についての言及がベースにありますが、知識労働者のマネジメントにあたっては先例がないと言及されており、しかも少人数ではなく複雑な大組織においてということが強調されています。
若干トピックが古い気もしますが、原理原則論を学ぶ上では具体例に縛られ過ぎないという意味で古いトピックベースで考察するのも有意義なのではと思います。

 

2-2. 仕事と労働(Section10)
Section10では仕事と労働をテーマに話を進めくれています。途中の箇所で、

・仕事と労働(働くこと)は根本的に違う

と言及されています。それぞれの定義としては以下のようにまとめられています。(論旨を元に若干編集しています)

・仕事
仕事とは、一般的かつ客観的な存在である。それは課題である。ものに対するアプローチをそのまま適用でき、分析と総合と管理の対象となる。
① 分析:基本的な作業を明らかにし、論理的な順序に並べ替えること
② 総合:個々の作業を一人一人の仕事に、そして一人一人の仕事を生産プロセスに組み立てる
③ 管理:必要な水準にプロセスを維持するためにフィードバックする

・労働
労働とはすなわち人の活動であり、五つの次元がある。
① 生理的な次元:労働を行うことで生理的に疲労する
心理的な次元:労働は人格の延長であり、自己実現である
③ 社会的な次元:組織社会では働くことが人と社会をつなぐ主たる絆となる
④ 経済的な次元:労働は生活の資源を生み出す(お金を稼ぐ etc)
⑤ 政治的な次元:労働を組織内で行う際には権力関係が伴う

上記のように、仕事は客観的かつ人が直接は関係ないもの、労働は人が介するものというのがここでの主な違いと思われます。

 

2-3. 仕事の生産性(Section11)
まず冒頭で仕事を生産的なものにするに当たって以下の四つのものが必要であると述べられています。

①分析:仕事に必要な作業と手順と条件を知る必要がある
②総合:作業を集めプロセスとして編成する必要がある
③管理:仕事のプロセスの中に管理手段を組み込む必要がある
④道具:道具が必要

上記はSection10での仕事の定義と同様です。
また、この後に基本事項として仕事は成果(すなわち仕事のアウトプット)を中心に考えねばならないと述べられており、技能や知識などのインプットからスタートしてはならないとされています。

・作業の組み立て、管理手段の設計、道具の仕様など必要な作業を決めるのは成果である

と述べられるなど、インプットはあくまで手段であり、目的となってはならないとされています。

2-4. 人と労働のマネジメント(Section12)
人と労働のマネジメントに関してのSection12の議論は、マクレガーのX理論とY理論から始まっています。

・X理論
人は怠惰で仕事を嫌うので強制しなければならず、自ら責任を負うことのできない存在として定義する(性悪説

・Y理論
人は欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲するとする(性善説

それぞれ軽くまとめると上記です。X理論は有効ではないと述べた時点でY理論を推すのかと思いきや、Y理論も有効ではないとしています。解決策を論じるに当たって、働くことが成果と自己実現を意味した時期や組織の典型が国家存亡のときであり、こちらをベースに人と労働のマネジメントを論じています。
国家存亡の時をベースに考えると極端なので、日本企業、ツァイスのアッベ(光学ガラスに関して)、IBMの様々な例を出しながら、人と労働のマネジメントの基礎を考えるにあたって『責任』にフォーカスをあてています。

 

2-5. 責任と保障(Section13)
人がSection12で言及した『責任』を負うためにはどうすれば良いかについてSection13では議論がなされています。責任を与えるに当たって以下の三つの条件が必要とされています。

① 生産的な仕事:
生産性に関してあまり直接的な言及はないが、Ch.1でまとめたイノベーションの定義のように、インプットからより価値のあるアウトプットを生み出すと考えておけば文脈上十分かと思われる。

② 成果に関するフィードバック情報:
自己管理が可能である必要があり、自らの成果についての情報が不可欠であるとされている。

③ 継続学習:
知識労働が成果を挙げるには専門化しなければならず、他の専門分野の経験や問題(ニーズ)に対し、自分の専門分野を適用できるように学習集団とならねばならないとされている。このことが継続学習を示唆していると思われる。

上記が『責任』を持って仕事に取り組む際に必要だと言及されています。
また後ろの方では、

・誰もが自らをマネジメントの一員とみなす組織を作り上げるという課題を組織は持つ
・責任の重荷を負うためには仕事と収入の保証が必要である

とも言及されていますが、こちらについては補足的な要素として見ておけば十分そうです。

2-6. 『人は最大の資産である』(Section14)
前半部では前置きとして、責任や権限、権力についてまとめられています。通常マネジメントとは権力を行使することだと思われがちですが、ドラッカーは否定しており、それぞれの責任に基づいて必要な権限を実行すべきだとしています。責任にフォーカスしたマネジメントへの言及はChapter5のマネジャーのところでより詳しくまとめられています。
後半部ではタイトル通り『人は最大の資産である』ということで、どの会社も『組織の違いは人の働きだけである』と述べられています。また重要なのは実際に行うことで、①仕事と職場に対して成果と責任を組み込み、②共に働く人たちを生かすものとして捉え、③強みが成果に結びつくように人を配置することだと述べられています。


3. まとめ
仕事は客観的なもの、労働は人が絡むものとしてまとめられており、仕事については論理的に理詰めで考え、労働については構成員の責任をどのようにマネジメントするかが重要な印象だと思われました。
組織マネジメントにあたって、権力としてマネジメントを捉える風土の組織に違和感を感じることが多かったので、責任にフォーカスすべきだというのはなかなか面白い考え方だなと感じました。