Ch.5_マネジャー|ドラッカーを読み解く #3

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
#1では第1章、#2では第3章について取り扱いました。

 #3では第5章のマネジャーについて取り扱えればと思います。

以下目次になります。

1. 5章を読み解く上での前提
2. マネジャー(Ch.5)
2-1. マネジャーとは何か(Section21)
2-2. マネジャーの仕事(Section22)
2-3. マネジメント開発(Section23)
2-4. 自己管理による目標管理(Section24)
2-5. ミドルマネジメント(Section25)
2-6. 組織の精神(Section26)
3. まとめ


1. 5章を読み解く上での前提

Ch.3でも言及されていましたが、マネジャーとは権限を持つ人ではなく貢献する責任であるという観点から読み解いていくと良いと思います。


2. マネジャー(Ch.5)

Section21ではマネジャーの定義について、Section22ではマネジャーの仕事について、Section23ではマネジャーの育成について、Section24は目標管理について、Section25ではミドルマネジメントについて、Section26では組織運営において気をつけるべき点についてまとめられています。


2-1. マネジャーとは何か(Section21)

Section21ではマネジャーの定義について論じられています。

・組織の成果に責任を持つもの

という定義が執筆された当時に増えてきた定義だそうです。『責任』については第3章でも出てきていましたが、Section21では

・マネジャーを見分ける基準は命令する権限ではない。貢献する責任である。権限でなく、責任がマネジャーを見分ける基準である。

というようにも述べられています。組織論で『権限責任一致の原則』などもありますが、ここでは一歩踏み込んで責任ありきで責任に応じて権限があると考えるのが良いのではと思います。

ここで『人の成果に責任を持つ』ではないのは、執筆された当時において急速に増えていた専門家として組織に貢献する人たちを含めるためだと言及されています。組織論で例えると、ライン型組織では『人の成果に責任を持つ』でも良いですが、ラインアンドスタッフのスタッフ(参謀)などはどちらかというと専門家として組織に貢献すると考える方がしっくりくると思います。また専門家の課題についても言及されており、

・専門家のアウトプットとは知識であり情報である。
・彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要とするものを供給しなければならない。
・このことを専門家に認識させることがマネジャーの仕事である。

など諸々が議論されています。(この辺の議論は考察としては面白いのですが若干論旨が取りづらいので、もう少し専門家というものをマネジャーの文脈で整理して欲しいというのは思います。)

また、後半部分では機能(職務内容と捉えて良さそう)と地位は切り離す必要があるとされています。野球のスタープレイヤーと監督の役割の違いなど、専門家については管理者よりも報酬が多くても妥当なケースもあるというのは理解しておく必要があると言及されています。


2-2. マネジャーの仕事(Section22)

Section22ではマネジャーの役割、仕事、資質などについてまとめられています。
まず役割ですが、マネジャーには二つの役割があるとされています。第一の役割としては『部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造すること』とされています。この過程において事業、人と仕事、社会的責任の三つのどれかを犠牲にする決定は組織を弱体化させるので行うべきでないので注意が必要なようです。また、第二の役割としては『あらゆる決定と行動において、直ちに必要とされているものと遠い将来に必要とされるものを調和させていくこと』とされています。合理性と中長期的視野を擦り合わせていく必要があると捉えておくと良いのではと思います。

マネジャーの仕事としては、①目標の設定、②組織化、③動機付けとコミュニケーション、④評価測定、⑤人材開発(育成)の五つがあらゆるマネジャーに共通の仕事として挙げられています。

マネジャーの資質としては『真摯さ』が最も重要であるとされています。この真摯さという言葉は本を通してあちこちで出てくるので、意識しておくと良いです。

職務設計に関してはまちがいと視点の二つがまとめられていますが、全体の論旨的に冗長と思われるため飛ばし読みで問題ないと思います。


2-3. マネジメント開発(Section23)

Section23では将来のマネジャーの育成、確保、技能についてまとめられています。

・雇用主たる組織には、人の性格をとやかくいう資格はない。雇用関係は特定の成果を要求する契約に過ぎない。
・被用者は、忠誠、愛情、行動様式について何も要求されない。要求されるのは成果だけである。

結論としては上記のようにまとめられています。


2-4. 自己管理による目標管理(Section24)

Section24の冒頭では、組織には人を間違った方向に持っていく四つの要因として①技能の分化、②組織の階級化、③階層の分離、④報酬の意味付けが挙げられています。それぞれ①は手段の目的化の危険性について、②は過度な人間関係の危険性、③は共通認識の欠如の危険性、④は間違った行動の奨励の危険性について言及されています。

目標管理については目標の重要性についてまとめた後に、目標設定について議論されています。

・目標は組織への貢献によって規定しなければならない

という風に言及されています。また、『目標管理の最大の利点は、自らの仕事をマネジメントできるようになることにあり、自己管理は強い動機付けをもたらす』とされています。実際に運用するにあたっては、1on1の設定などで目標設定や振り返りなどを行うとなかなか有意義なのではないかと思います。


2-5. ミドルマネジメント(Section25)

Section25ではミドルマネジメントについて言及されています。通常の中間管理職的な仕事を従来のミドルマネジメントとした際に、50年代初頭ではミドルマネジメントがなくなるのではと言われていた一方で、なくなるどころか増加したと言及されています。
それに加えて、『知識専門家』と呼ばれる新種のミドルが出現したとされています。新種のミドルの例としてはプロダクトマネジャーなど、直接的な権限は持たないものの、『責任』という意味では全社的な影響力を持つとして言及されています。

知識専門家とは知識を仕事に適用し、かつ知識を基礎として、組織全体の能力、成果、方向に影響を与える意思決定を行う者である

『知識専門家』は後ろの方で上記のようにまとめられています。直接的な権限はなくとも大きな影響力を持つということで、注意しておくと良いかと思われます。


2-6. 組織の精神(Section26)

Section26では組織について考える際の心構えがまとまっています。

① 組織の焦点は、成果に合わせなければならない
② 組織の焦点は、問題ではなく機会に合わせなければならない
③ 配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の心情と価値観に合わせて行わなければならない
④ 人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件である

上記のようにまとまっているのですが、以下それぞれ詳細についてまとめて行きます。①については、成果は打率であり、チャレンジする前提で評価されねばならないとされています。②については、問題中心の守りの組織ではなく、機会に目を向けることで精神を高く維持すると良いとされています。③については、人事は最大の管理手段であると述べられています。④は真摯さが重要だということや真摯さの内容について諸々まとめられています(ここは力を入れて読む方が良いのではという印象でした)。


3. まとめ

管理や権限的な話ではなく、組織に貢献するために何をするのかというのがマネジメントにあたって気にすべき点であるという印象でした。また、真摯さが何度かキーワードとして出てきたので注意して読み込むと良いと思います。