Ch.1_企業の成果|ドラッカーを読み解く #1

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ビジネス本の名著とされているドラッカーですが、非常に良い本な反面、抽象的で読み解きにくいところもあるので読み解いた内容を元に諸々解説をまとめておければと思います。
エッセンシャル版を前提に読み解く上での参考になればということでまとめさせていただきます。
以下目次になります。

1. 1章を読み解く上での前提(背景知識)
2. 企業の成果(Ch.1)
2-1. 企業とは何か(Section2)
2-2. 事業とは何か(Section3)
2-3. 事業の目標(Section4)
2-4. 戦略計画(Section5)
3. まとめ&考察

 

 

1. 1章を読み解く上での前提(背景知識)
本のタイトルとして『マネジメント』とついていますが、日本的な意味での管理的なマネジメントではなく、経営的なマネジメントのことを主に言及しています。したがって、管理方法について議論するミドルマネジメントの話ではなく、トップマネジメントの視点からの議論が多いです。また、ミドルマネジメントという視点で見ても権限ではなく責任にフォーカスをあてているので、合理的なマネジメントについて客観的に議論した非常に素晴らしい本です。
理性に基づいた合理的なマネジメントを行いたいと考えている方に最適な本だと思います。


2. 企業の成果(Ch.1)
Ch.1では企業の成果について諸々と議論されており、『顧客の創造』を軸に諸々話が進められていきます。
ちょっと抽象的ではあるのですが、読み進めるうちに具体的なイメージがつかめていければ十分だと思います。


2-1. 企業とは何か(Section2)
企業とは何かについて議論するにあたって、企業の目的に関して議論されています。企業の目的としては、

顧客を創造すること

と書かれています。企業について論じる際によく考慮される"利益"については目的ではなく条件とされているのがなかなか印象深いです。利潤動機には意味がないと書かれていますが、一方で利益は企業の意思決定において妥当性の判断基準になるものであり、金銭に対する興味が全くなかったとしても利益に関しては重大な関心を払わなくてはならないとされています(例として、たとえ天使が取締役でも利益に関心は払わなくてはならないとされています)。また、ここで顧客にフォーカスを当てた際に顧客が価値を認め購入するのは財やサービスそのものではなく効用なので、効用にフォーカスしなくてはならないとも述べられています。
ちなみに理系チックに説明するなら、目的と条件については最適化問題を考えるとわかりやすく、最大化する関数を目的関数、目的関数を構成するパラメータの満たすべき条件を制約条件と呼んでいます。

また、企業の目的が『顧客の創造』にあるとした際の企業の基本的な二つの機能についても言及されています。

マーケティング
イノベーション

上記二つを企業の持つべき基本的な機能と述べられているのですが、一般的にはふわっと用いられやすい上記二つの言葉をドラッカーは掘り下げてくれています。ざっくり言えばマーケティングは『顧客は何を買いたいか』を問うこと、イノベーションは『新しい満足を生み出す』ことです。
もう少し考察してくれている表現を抜粋すると、マーケティングは『顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすること』と言及されています。こちらの言葉で印象的だったのは、『おのずから売れるように』という点です。自動的に売れるにはどうするかを追求するのがマーケティングだと捉えるとなかなかしっくりきます。
一方イノベーションに関して考察してくれている表現を抜き出すなら『経済に関わること』や『人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすこと』などが良いのではと思います。『より大きな富を生み出す新しい能力』というのがポイントだと思われ、一つ一つのベンチマークの改善に限らず結びつけで価値を生むようなものもここには含まれるということです。2010年頃の話題だとAppleiPhoneなどのイノベーションに対して日本メーカーはベンチマークの改善で対抗しようとして苦戦したというのがわかりやすい例なのではと思います。富を生み出すにあたっては方法は一つではないというのは常に意識すべきで柔軟に思考する必要性について言及してくれているように感じました。


2-2. 事業とは何か(Section3)
・自社を如何に定義するか
様々な意思決定を企業で行う際に、それぞれの構成員が自らの企業について何らかの定義を持って意思決定を行う必要があります。それに対し、

あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向付け、努力を実現するには、『我々の事業は何か。何であるべきか』を定義することが不可欠である

ドラッカーは述べています。Section3ではこちらに対して議論が進められていきます。

 

・事業とは何か

- 出発点は一つしかなく顧客だ
- 『我々の事業は何か』という問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て初めて答えることができる

とされています。顧客の価値、欲求、現実、状況、行動からスタートする必要があるということについてまとめられています。

 

・顧客とは誰か、何を買うのか
この辺から具体例が増え、各論が増えます。

・顧客は二種類おり、事業者と消費者
・キャデラックの顧客が購入するのは輸送手段ではなくステータスだ

など、顧客に対して分析する重要性についてまとめてくれています。


2-3. 事業の目標(Section4)
主にマーケティングの目標とイノベーションの目標についてまとめられています。
マーケティングの目標
マーケティングの目標には様々な『既存/新規製品に対しての目標』など様々なKPIがあるが、ドラッカーはその前提として、集中の目標と市場地位の目標について言及しています。
この辺は具体例が多く逆に読みにくいので、ランチェスター戦略やシェアの目標、リーダーシップ戦略/ニッチャー戦略などについて学ぶと良いと思います。また、ドラッカーマーケティングの目標としては、『市場について目指すべき地位は最大ではなく最適である』と最後に述べてくれています。

イノベーションの目標

イノベーションの目標とは、『我々の事業は何であるべきか』との問いに対する答えを具体的な行動に移すためのものである

とされています。この後の記述は意味が取りづらかったので、必要があれば再度まとめます。リソースから富を生み出すにあたり、重要なポイントをKPIと置くという認識だけで十分な気がしました。


2-4. 戦略計画(Section5)
戦略計画は以下のようにまとめられています。

戦略計画は
1. リスクを伴う企業家的な意思決定を行い、
2. その実行に必要な活動を体系的に組織し、
3. 活動の成果を期待したものと比較測定する
という連続したプロセスである

どのようなリスクを冒すかを議論し、集中分野へのリスクを冒しやすくしたり最大限のリスクを取れるようにするかについてまとめるというのが戦略計画とされています。リスクの議論の際にノーリスクを求める議論がよく起きがちですが、ノーリスクを求めるのはナンセンスだとされています。

 

3. まとめ&考察

企業の目的が『顧客の創造』というのは面白い着眼点でした。
利益は目的ではなく条件というのもなかなか良い表現だなと感じました。
具体的な専門知識というよりは、原理原則論的にはこうだというのが知れる非常に密度の濃い話だったと思います。