Ch_16 総力戦略|『イノベーションと企業家精神』読解メモ #13

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上記のドラッカーの「マネジメント」のエッセンシャル版の付章を読んで、他の著作も時代背景を踏まえながら読んでみたいと思ったので、1985年頃の著作である「イノベーション起業家精神」を読みながら読解メモをまとめていきます。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】 | P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 | 書籍 | ダイヤモンド社
#12ではCh.15の「ベンチャーのマネジメント」について取り扱いました。

#12で第2部の企業家精神が終了したので、#13からは第3部について取り扱っていきます。#13ではCh.16の「総力戦略」について取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 総力戦略(Ch.16)
1-1. 冒頭部
1-2. 総力による攻撃
1-3. 成功への道
1-4. リスクの大きさ
1-5. Ch.16を読んでみての感想、考察
2. まとめ


1. 総力戦略(Ch.16)
1-1. 冒頭部(本の内容の要約)
企業家精神を発揮するには第2部でまとめた企業かマネジメント(組織の内部に関わるいくつかの原理と方法)が必要である。
これに加えて、組織の外部、すなわち市場に関わるいくつ家の原理と方法が必要であり、これこそが企業家戦略である。
企業家戦略には四つあり、総力戦略、ゲリラ戦略、ニッチ戦略、顧客創造戦略である。これらの戦略はいずれか一つを選ぶというものではなく、二つや三つの組み合わせで一つの戦略とすることもできる。また、これら四つの戦略にはそれぞれ特等があり、これが企業家に対し明確な行動を要求し、それぞれに限界を持ちリスクを持つということは知っておく必要がある。
具体的な詳細はCh.16で総力戦略、Ch.17でゲリラ戦略、Ch.18でニッチ戦略、Ch.19で顧客創造戦略がそれぞれ取り扱われている。


1-2. 総力による攻撃(本の内容の要約)
「総力戦略」によって企業家は、市場や産業の完全支配は無理としてもトップの座を得る。常にそうとは限らないが、自ら新たに大きな産業を生み出す。最初から永続的なトップの地位を狙い、この戦略は最高の企業家戦略とされている。
企業家についての多くの文献はこの戦略だけが企業家戦略とされているが、そのような考え方は間違いである。確かに「総力戦略」はよく用いられるが、この戦略はリスクが最も低い訳ではないし、成功の確率が最も高い訳でもない。企業家戦略として優れている訳でもなく、四つの企業家戦略の中でも最もギャンブル性が高い。失敗を許さない戦略である。
「総力戦略」を用いる際は大事業になることを必ずしも目指す必要はないが、常に市場の支配を目指す必要があるということは理解が必要である。


1-3. 成功への道(本の内容の要約)
「総力戦略」は必ず命中させねばならず、さもなければ失敗する。したがって、この戦略には徹底した思考と分析が必要不可欠である。明確な目標を一つ掲げ、それに全エネルギーを集中しなければならない。しかも成果が出始めるや否や、さらに資源を大量投入しなければならない。
また、イノベーションが事業として成功した後に本当の仕事が始まることは知っていなければならない。トップの地位を維持していくためには継続的な努力が必要となる。この戦略によって成功した企業家は競争相手よりも先に自らの手で製品やプロセスを陳腐化させていかねばならない。次世代の製品やプロセスを開発するために、最初の成功をもたらしたと同じだけの努力と資源を投入しなければならない。さらに価格を計画的に下げなければならない。高価格を維持することは競争相手に傘をさしかけ、やる気を起こさせるだけである。


1-4. リスクの大きさ(本の内容の要約)
「総力戦略」にはチャンスは一度しかなく、直ちに成功するかさもなければ完全な失敗である。まずまずの成功や惜しい失敗などなく、成功と失敗しかない。
「総力戦略」はリスクが大きく、ほかの戦略が取られるのはこの戦略では成功よりも失敗のリスクの方が大きいからである。強い意志、努力、十分な資源、追加資源などがなければ失敗に終わってしまう。成功すればリターンが大きいが、リスクが大きく非常な困難を伴うため、この戦略は大きなイノベーションにしか使うべきではない。
多くの場合他の戦略をとるべきであり、理由としてはリスクの問題ではなく、必要なコスト、努力、資源に見合うほどの大きなイノベーションの機会がそれほどはないからである。

 

1-5. Ch.16を読んでみての感想、考察
一点にリソースを集中して突破をはかるという意味で非常にギャンブル性の強い戦略だなと思いました。
あまり好きな考え方ではないですが、視点としては重要だと思うので参考にしたいと思います。


2. まとめ
これまでに見た内容と別のくくり方をしている印象だったので、他の三つを知ってからもう一度対比で見直すと良さそうでした。
#14以降で色々と確認していければと思います。