Ch.3_プロフェッショナル組織の「見えない」リーダーシップ|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #4

f:id:lib-arts:20190831180014p:plain

課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#1、#2では第1章のマネジャーの職務(その神話と事実の隔たり)についてまとめました。

Ch.1_マネジャーの職務(前編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

Ch.1_マネジャーの職務(後編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #2 - lib-arts’s diary
また、#3では第2章の「計画は左脳で経営は右脳で」について取り扱いました。

Ch.2_計画は左脳で経営は右脳で|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #3 - lib-arts’s diary

#4ではそれらを受けて第3章の『プロフェッショナル組織の「見えない」リーダーシップ』を取り扱います。
以下、目次になります。
1. 指揮者の仕事ぶりからマネジャーの役割を学ぶ
2. コントロールするのはだれか
3. 企業マネジャーと指揮者の類似点
4. リーダーシップとは、本来見えないもの
5. 組織文化は生み出すものではなく、伸ばしていくもの
6. すべてをマネジメントする
7. 精鋭集団をマネジメントする時に
8. 感想・まとめ


1. 指揮者の仕事ぶりからマネジャーの役割を学ぶ(簡単な要約)
カナダのウィニベグ交響楽団にブラムウェル・トーヴィーという音楽監督兼常任指揮者がいるが、知的労働が重みを増し、高い訓練を受けた前途有望なプロフェッショナルに業務が集中していく今日、ブラムウェルがオーケストラを率いる手法こそがマネジメントのあるべき姿を映していると思われる。
交響楽団は、コンサルティングファームをはじめとした多くのプロフェッショナル組織に似ており、高い修練を積んだ人々を核に成り立っている。一人一人が自分のなすべきことを心得て実践しているため、車内には詳しい手順書も必要なければ細かい作業愛用や所要時間を分析・支持する必要もない。
この動かしようのない現実は、マネジメントやリーダーシップに関する「常識」の多くを揺るがすものであり、事実プロフェッショナル組織では表立ったリーダーシップよりも見えないリーダシップが大きな意味を持つように思われる。


2. コントロールするのはだれか(簡単な要約)
ラムウェル・トーヴィーが何をコントロールしているかを知るために言葉を元にその業務内容をまとめた。

・演奏曲目の決定
・演奏の指導
・ゲスト奏者の選定
・楽団員の選定や補充
・対外交渉

一方、マネジメント分野の文献はこれまで「コントロール」の重要性ばかりを訴えてきた。すなわち制度、手順、方法を考案し、秩序を生み出し、判断を下すという役割にのみ焦点を当ててきた。オーケストラも数々の手順や方法を用いており、その全てが業務のコントロールを狙いとしている。とはいえそれらは演奏という営みと分かち難く結びついたものであり、マネジメント上の必要性から生み出されたのではない。
このようにオーケストラでは様々な秩序が生み出され、各種の調整が行われているが、それはマネジャーの力に夜というよりも仕事そのものの性質に由来している。
プロフェッショナルに対しては上司が事細かく支持を与える必要はまず生じない。大学教員や技術者などは「仕事を動かすのは自分で、上司はそのサポート役だ」という通常とは逆の見方を好む。
このようにプロフェッショナル組織においては秩序や調整は仕事の性質に由来するように思われる。


3. 企業マネジャーと指揮者の類似点(簡単な要約)
マネジャーの役割は古来、「コントロール(管理)」、「コーディネーション(調整)」、そして「ディレクション(指示)」という言葉で表されてきた。ディレクションには指示内容を伝え、仕事を割り当て、最終判断を下すことなどが含まれる。
指揮者は数多くの制約を受けており、その意味では企業のマネジャーと非常に似た環境にある。奏者たちを完全にコントロールしているわけではなく、反面全くの無力でもない。その中間の状態で任務に取り組んでいる。


4. リーダーシップとは、本来見えないもの(簡単な要約)
プロフェッショナル組織でリーダーシップを発揮することは生やさしいことではない。腕を磨き上げたプロフェッショナルばかりでメンバーを固めるだけでなく、それにリーダーまで定まってはじめてオーケストラは高い成果をあげられる。
とはいえ、このような組織ではプロフェッショナルとリーダーによる二つの力がせめぎあって亀裂を生む恐れがある。奏者たちが指揮者の権威をないがしろにしたり、指揮者が奏者の技量を認めなかったりすればオーケストラ全体のきのが止まってしまう。


5. 組織文化は生み出すものではなく、伸ばしていくもの(簡単な要約)
リーダーシップは一般に、個人、グループ、組織の三つのレベルに向けられる。各個人には相談に乗り、コーチングをし、動機付けを行う。グループ単位ではチーム作りや摩擦の解消に努める。そしてさらに、組織全体の文化(カラー)を育てていく。これら三つのレベルはたいていの場合、仕切りがはっきりとしていて容易に見分けられる。
とはいえ、オーケストラの場合は組織の文化は土台自体ははじめからできており、既存の伝統文化を高めていくという形で築かれていく。


6. すべてをマネジメントする(簡単な要約)
プロフェッショナルに対しては指示や監督はほとんど要らない。むしろ求められるのは保護とサポートである。このためマネジャーは外侮との関係に大きな注意を払う必要がある。コンサルティング・ファームでもトップ自らが営業に奔走しているケースも多い。
外部と交流を図ったり、折衝を進めたりする仕事は、組織内部でリーダーシップを発揮する、あるいは業務の陣頭指揮を執るといった役目と切り離せないはずである。マネジメントという概念には全てが集約されているはずで、経営者あるいはマネジメントチームは、外向き、内向き両方の役割をこなさなくてはならない。


7. 精鋭集団をマネジメントする時に(簡単な要約)
「指揮者は全てをコントロールできる」という神話は忘れてしまう方が良い。そうすることで、今日のあるべきマネジメントを見て取ることができる。
重要なのは服従や調和をいかに追求するかということよりも、数々の制約がある中で、繊細で微妙なリーダーシップをいかに発揮していくかである。旧来型の経営者やマネージャは指揮台から下り、予算を割り振るタクトを手放し、指揮者の真の姿に目を向ける方が良いのではないだろうかと思われる。


8. 感想・まとめ
#4では第3章の『プロフェッショナル組織の「見えない」リーダーシップ』について取り扱いました。プロフェッショナルに関するマネジメントについては普段より気になるところではあるのですが、オーケストラになぞらえていて非常に参考になる内容でした。今後の組織はプロフェッショナル型の組織が増えてくると思うので、近代的な考え方だと思いました。
#5では第4章の『参加型リーダーのマインドセット』について取り扱います。