Ch.1_マネジャーの職務(後編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #2

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#1では第1章のマネジャーの職務(その神話と事実の隔たり)から、前半半分についてまとめました。

#2では同じく第1章の後半部分についてまとめられればと思います。
以下、目次になります。
1. 情報に関わる役割
2. 意思決定に関わる役割
3. 統合化された職務
4. より効果的なマネジメントを目指して
5. マネジャーの教育
6. 感想・まとめ

 

1. 情報に関わる役割(簡単な要約)
部下や様々なネットワークとの対人関係を保つことによって、マネジャーは自分の組織の神経中枢となる。マネジャーは全てを知っているというわけではないが、部下の誰よりもよく知っているものである。マネジャーはリーダーとして自分のスタフの誰にでもフォーマルかつ容易にアクセスできる。さらにリエゾン的な役割を通じて部下が到底近づき得ない外部情報を知るチャンスが生まれる。
マネジャーの仕事の枢要な部分は情報の処理である。研究(by Mintzberg)によると、トップマネジメントは交際時間の40%を情報伝達だけをを目的とした行動に使い、受け取った手紙の70%は純粋に情報的なものであった。
次の三つの役割がマネジャーの仕事の情報的側面をよく物語っている。

1) 監視者
-> マネジャーは「監視者」として、常に情報を求めて自分の周囲の動きを探り、リエゾン的に接触する相手や部下に質問する一方、自分で開発したネットワークの成果として求めずして情報を手に入れる。

2) 散布者
-> マネジャーは情報の散布者として、自分が保有している情報のいくつかをそうした情報にアクセスする機会のない部下たちに直接手渡す。

3) スポークスマン
-> スポークスマンとしてのマネジャーは情報の一部を組織の部外者に送り届ける。さらにどのマネジャーもスポークスマンとして、自身の担当する組織をコントロールするような影響力を有する人々に情報を流し、満足させる必要がある。

 

2. 意思決定に関わる役割(簡単な要約)
情報収拾はそれ自体が目的ではなく、意思決定におけるインプットであることに注意しなければならない。担当する組織の意思決定システムにおいて、マネジャーは重要な役割を演じている。フォーマルな権限として、マネジャーだけが新しい重要な針路へと組織の舵を切り直すことができる。また組織の神経中枢として、マネジャーだけがいま現在の情報を網羅的に掴んでおり、これによって組織の戦略を決定する一連の意思決定を下すことができる。
以下の四つの役割が意思決定者としてのマネジャー像を表している。

1) 企業家
-> マネジャーは「企業家」として、担当する組織を改善し、変化する状況に適応させようとしている、また監視者としての役割ではたえず新しいアイデアに目を配っている。優れたアイデアが現れると、自分が陣頭指揮するなり、だれかに任せるなりして
開発プロジェクトに着手する。

2) 障害排除者
-> 企業家としての役割が自発的に変革を起こすマネジャー像を表現するのに対し、「障害排除者」としての役割は、なんらかの変化にやむなく対処するマネジャー像を描き出す。

3) 資源配分者
-> 組織ユニット内の誰が何を受け取るのかを決める責任は、その組織のマネジャーに帰属するものである。また、マネジャーは組織の構造を設計する責任を負っており、構造とは仕事がどのように分割され調整されるかを決めるフォーマルな関係のパターンである。

4) 交渉者
-> マネジャーは相当の時間を交渉に費やしていると言われている。交渉はマネジャーの職務に含まれる義務であり、理由としてはマネジャーだけが組織内の資源にリアルタイムで関与できる権限を有しており、重要な交渉に必要な神経中枢的な情報を持っているからである。

 

3. 統合化された職務(簡単な要約)
マネジャーの職務は容易に分離できるものではなく、各要素は統一的な全体を形作っている。例えばリエゾン的に接触する機会を持たないマネジャーは外部情報が不足し、その結果として部下の必要とする情報を伝達することも外部情勢を適切に反映した意思決定を下すこともできなくなる。そのため、複数の人間が一つのマネジャー色を共有することは、彼らが一体となって行動しない限り不可能である。
本当の難しさは情報面における役割にあり、マネジメントに関する情報を完全に共有できなければチームのマネジメントは崩壊する。


4. より効果的なマネジメントを目指して(簡単な要約)
マネジャーの能力は、自身の仕事に対する洞察力によって大きく左右される。仕事の手際のよし悪しは、職務のプレッシャーとジレンマをいかによく理解し、対応できるかにかかっている。したがって、自分の仕事に関して内省できるマネジャーはその職務をうまくこなすことができる。
マネジャーの仕事を停滞させている三つの原因となっている、権限委譲のジレンマ、一人の頭脳に集中したデータベース、マネジメント・サイエンティストとの協力関係は、マネジメント情報のほとんどが口頭でのコミュニケーションから得られるためであり、それゆえに起こる。また組織に関わるデータバンクをマネジャーの頭の中に集中するのは極めて危険であり、マネジャーが辞めてしまうと記憶も持ち去ってしまうことになるからである。
以下マネジャーに対する三つの要求についてまとめる。

1) マネジャーは自分が所有する情報を分かち合う、系統立ったシステムを確立するよう求められている。
2) マネジャーは表面的な仕事に追いやろうとする慌ただしさを意識的に克服するために、真に関心を払うべき問題に真剣に取り組み、断片的で具体的な情報ではなく幅広い状況を視野に収め、さらにまた分析的なインプットを活用するように求められる。
3) マネジャーは義務を利点に変え、やりたいことを義務に変える事によって、自分の時間を自由にコントロールできるように求められている。

 

5. マネジャーの教育(簡単な要約)
現在のビジネススクールは、組織に関するスペシャリスト、例えばマネジメントサイエンティスト、マーケティングリサーチャー、会計士、組織開発の専門家などを訓練する優れた業績を残している。しかし、真のマネジャーの訓練に取り組んでいるところはほとんどない。マネジメントスキルの訓練が知識学習に肩を並べるほど重要な位置を占めるようになれば、ビジネススクールはマネジャーを真剣に訓練し始めると思われる。
マネジャーは実務を通じて学び続けるように、自分の仕事について常に内省的でなければならない。
マネジャーの職務ほど企業にとって重みを持つものはない。社会が我々に仕えてくれるのかあるいは我々の能力や資源を浪費するのかを決めるのはマネジャーである。


6. 感想・まとめ
#2では第1章の後半部分の情報に関わる役割、意思決定に関わる役割、統合化された職務、より効果的なマネジメントを目指して、マネジャーの教育について取り扱いました。意思決定に関わる役割のところが非常に興味深い内容でした。
#3以降では、第2章について進めていきます。