Ch.4_参加型リーダーのマインドセット(前編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #5

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#1、#2では第1章のマネジャーの職務(その神話と事実の隔たり)についてまとめました。

Ch.1_マネジャーの職務(後編)|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #2 - lib-arts’s diary
また、#3では第2章の「計画は左脳で経営は右脳で」について、#4では第3章の『プロフェッショナル組織の「見えない」リーダーシップ』についてを取り扱いました。

#5、#6ではそれらを受けて第4章の『参加型リーダーのマインドセット』を取り扱います。#5では前半として「分析:組織のマネジメント」までを取り扱います。
以下、目次になります。
1. 「マネジャーらしい発想」とは何か
2. 五つのマネジメント・マインド
3. 内省:自己のマネジメント
4. 分析:組織のマネジメント
5. 感想・まとめ


1. 「マネジャーらしい発想」とは何か
「エンジニアたちはマネジャーらしい発想ができない」というのはよく耳にする不満だが、その背後には「マネジャーらしい発想とは何か」という極めて重大な問いが隠されている。とはいえ残念ながら昨今ではこの問いはほとんど注目されておらず、もっぱら「リーダーシップ」に関心が向けられ「マネジメント」は脇に追いやられてしまっている。優れたマネジャーを目指す人などおらず誰もが偉大なリーダーに憧れる。
しかし、マネジメントをリーダーシップから切り離すのは危険であり、リーダーシップなきマネジメントは組織から活気を奪いマネジメントなきリーダーシップは自信過剰を招く。誰もが知る通り自信過剰は組織を破滅させかねない。
とはいえ困ったことに在来型のマネジメントは複雑で混沌としており、マネジャーは成果をあげようとすれば「強調を重んじつつ競争に遅れを取るな」や「たゆまず変化せよ、ただし秩序は保つように」など一見したところ「矛盾する要請」に向き合い、深い調和を達成しなくてはならない。それは「何を成し遂げるべきであるか」だけでなく、「どのように発想すべきか」という点に注意を払うべきことを意味している。マネジャーにはいくつもの「マインドセット」が求められる。
従来のMBA教育ではマネジメントの世界をマーケティング、財務、会計といった職能別に縦割りにしているが、それでは役に立たないと思われた。そのため全ての職能分野を統合した新しいコースを設ける必要があり、五つのマネジメント・マインドを基本としたコースで、これは教室だけでなく実務の現場でも高い成果を上げている。
第4章ではまずこれら五つのマネジメント・マインドに行き着いた経緯に触れ、次にそのそれぞれを説明していき最後に具体的な事例を引きながら五つを結びつけていく。


2. 五つのマネジメント・マインド
多くの企業が迅速さと熟慮の二つのバランスの問題に直面している。どう動くべきかを心得ていても、一歩下がって状況を見極めるのは得意ではない、もしくはその逆の悩みもありうる。誰もが知っているように、官僚制は企画立案と組織設計には長けているが、市場の動きへの対応は極めて鈍い。一方であらゆる刺激に即座に反応するもののそれは拙速に過ぎ、たえず軌道修正を余儀なくされる企業も散見される。
このように相反する二つの傾向からマネジメントは成り立っている。そのため有能なマネジャーは、抽象的な思考をしながらも常に地に足のついた行動をとろうとしている。考えずにただ行動するのは軽率、行動せずに考えだけを巡らすのは慎重に過ぎる。マネジャーは皆、これらの二つのマインドセットを結びつける方法を見出さなければならない。すなわち「内省」しながら「現実的な行動」を選択すべきである。
「内省」と「行動」に加え、「コラボレーション」、「広い視野」、「分析」などのマインドセットも重要に思われる。下記にこの五つのマネジメント・マインドをまとめる。

・内省:自己のマネジメント
・分析:組織のマネジメント
・広い視野:外部環境のマネジメント
・コラボレーション:リレーションシップのマネジメント
・行動:変革のマネジメント

これらのマネジメント・マインドを視座として捉えるにあたって、どれかに偏ってしまうと独善的になる可能性があるので気をつける必要がある。分析に溺れる、コラボレーションを強制するなど、どのマネジメント・マインドも度が過ぎると害悪をもたらすものとなってしまう。


3. 内省:自己のマネジメント
マネジャーの育成にあたっては社交場のような雰囲気は不要だが、かといってブート・キャンプである必要もないと思われる。マネジャーの多くはブート・キャンプのような環境に日々置かれている可能性があるし、現実のブート・キャンプで兵士たちが学ぶのは立ち止まって考える態度ではなく行動や服従の仕方である。今日のマネジャーがなんとしても身につけなければならないのは立ち止まって考える姿勢、一歩下がって自分の経験に深く思いを巡らす姿勢である。
経験は消化、塾考、体系化、合成といったプロセスを経て、はじめて意味のあるものとなる。そのため、経験を解釈するプロセスを大切にするためにこれを「内省」と呼ぶものとする。
内省の力に長けたマネジャーは、過去を振り返って将来へのヒントを得る力を備えている。しかるべき成果を導くビジョンは唐突に降って湧いてくるものではなく、過去の経験を礎に少しずつ描かれていくものである。


4. 分析:組織のマネジメント
分析とは本来、「解きほぐす(loosen up)」という意味である。analysisのanaはup、lyeinはloosenに対応している。言い換えれば分析とは複雑な現象をいくつもの要素に還元して解きほぐしていくことを指す。
分析はあらゆる局面で用いられるが、分析が最も生きるのは組織設計においてであり、分析というプロセスを経なければ組織設計はできない。とりわけ大企業の場合にはそれが強くいえ、分析が効果的であれば組織における共通言語を生み出すことができる。また、組織構造とは業務を細分化し、これらを大人数で分担するための仕組みであり、本来分析と切っても切り離せない。
深く分析するとは複雑な問題を簡素化するという意味ではなく、複雑な問題をありのままで受け止めて、なおかつ組織による対処を可能にしようということである。得点と観衆に注意を払いながらも決してボールから目を逸らさないことではじめて、優れた分析マインドを発揮したと言える。


5. 感想・まとめ
#5では第4章の「計参加型リーダーのマインドセット」の前半の「分析:組織のマネジメント」までについて取り扱いました。あまり見たことのない論述だったので興味深い論述でした。後半も楽しみな内容でした。
#6では同じく第4章の後半として、「広い視野:外部環境のマネジメント」からを取り扱います。