Ch_2 立地の競争優位【後編】|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #2

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「[新版]競争戦略論I」について一区切りとなったので、「[新版]競争戦略論II」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

「[新版]競争戦略論I」の読解メモについては下記などを参照ください。

Introduction_新版のための序論|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

Ch_1 五つの競争要因(前編)|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #2 - lib-arts’s diary

#1では第1章の『立地の競争優位』の前編として、「国の競争優位を示すダイヤモンドフレーム」までの内容を取り扱いました。

Ch_1 立地の競争優位【前編】|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

#2では第1章の『立地の競争優位』の後編として、「システムとしてのダイヤモンドフレーム」以降の内容について取り扱います。
以下目次になります。
1. システムとしてのダイヤモンドフレーム
2. 政府は何をなすべきか
3. 企業に求められる姿勢
4. リーダーの任務
5. 感想・まとめ

 

1. システムとしてのダイヤモンドフレーム(簡単な要約)
#1で取り扱った、ダイヤモンドフレームの四つの属性(生産要素条件、需要条件、関連産業・支援産業、企業戦略・構造・競合関係)のそれぞれが、国の競争優位を育むダイヤモンドフレームの頂点を構成する。ここで
ある属性がもたらす効果は別の属性の状態に左右される場合が多いので注意が必要である。たとえば、先進的な買い手の存在がそのまま高度な製品につながるわけではなく、人材の質が低ければ顧客のニーズに応えられないというケースも存在する。
一般的に考えると、ある要因が弱ければその産業の発展や進化の可能性が制約されてしまうが、ダイヤモンドフレームのそれぞれの頂点は互いを制約するだけでなく、互いに強化もし合う。そのため、一つのシステムとみなすと良い。各属性の影響はあらゆる方向に働き、時には世界クラスの実力を持つサプライヤーがそれまで取引先であった業界に新たに参入してくる場合もあるし、逆に洗練された買い手がサプライヤー側の業界に参入してくる場合もある。
また、ダイヤモンドフレームは競争力のある業界の集積を促すような環境を作り上げる。物理的な意味でクラスターがばらばらに存在していることは少なく、地理的に集中する傾向が見られる。ある業界に競争力があれば、他にも競争力のある業界を生み出すのに役立ち、相互に強化し合うプロセスが生じる。そして一旦クラスターが形成されると業界グループ全体が互いに支え合うようになる。クラスターのメリットは前方、後方、そして水平方向にも生じる。


2. 政府は何をなすべきか(簡単な要約)
国の競争力については様々な議論が続いているが、その中でも政府の果たす役割ほど多くの議論を呼び、また理解が不十分なテーマは他にない。政府が大きな影響を与えるべきとする見方も、自由主義的な見方のどちらにおいても、論理的な帰結を考えた際には、どちらの見方も国の影響力が低下する可能性があることに注意が必要である。
政府が果たすべき役割は触媒であり挑戦者としての役割である。政府は企業が大きな野心を抱き、より高いレベルの競争力を目指すように奨励し、時には追い立てなくてはならない。政府が果たす役割は本質的には脇役であり、その行動がダイヤモンドフレームの中に眠る有利な条件と調和する時にのみ成果を上げることができる。政府の政策が成功するのは、企業が競争優位を獲得できるような環境を作り出す場合であって、そのプロセスに政府が直接介入してしまったらうまくいかない。
国の競争力のために正しい役割を果たしたければ、政府はいくつかの単純で基本的な原則を守らなくてはならない。その原則は、変革の支援、国内での競合関係の促進、イノベーションの刺激の三つである。以下、国の競争優位の獲得を目指す政府が採ることができる政策を以下にいくつか挙げる。

1) 専門的要素の創出に力を注ぐ
2) 生産要素市場や通貨市場への介入を避ける
3) 製品、安全性、環境面で厳格な基準を施行する
4) 業界内の競合企業同士の直接的協力は厳しく制限する
5) 継続的な投資につながる目標設定を奨励する
6) 競争面での規制を緩和する
7) 国内で厳しい反トラスト政策を施行する
8) 管理貿易を拒否する


3. 企業に求められる姿勢(簡単な要約)
最終的に競争優位を実現し、維持することができるのは企業自身だけである。企業が特に認識しなければならないのは、イノベーションが果たす重要な役割であり、イノベーションが生まれるためには圧力と課題が必要だという嬉しくない現実である。ダイナミックで手応えのある事業環境を作るためにはリーダーシップが必要である。一見すると競争優位に繋がりそうな安易な逃げ道が、実は失敗への近道に過ぎないという認識を組織に徹底させるのもリーダーシップの役割である。
競争優位のダイヤモンドフレームが示す各要因を活用し、その効果を倍増させるようなリーダーシップがあってこそ、イノベーションが起こり、競争優位が進化し続ける。そのために企業に求められる方針を以下にまとめる。

1) イノベーションへの圧力を生み出す
2) 最も強力な競合他社からモチベーションを得る
3) 早期警戒システムを構築する
4) 国の競争優位を改善する努力をする
5) 国内の競合関係を歓迎する
6) 他国に存在する優位を利用するためにグローバル化する
7) アライアンス(企業提携)は相手と目的を選んで行う
8) 競争優位を支えるホームベースを定める


4. リーダーの任務(簡単な要約)
競争の本質を見誤り、自分たちに課せられた任務を見失っている企業や経営トップが多いが、それは財務状況の改善や政府支援の獲得、安定性の追求、提携や合併によるリスク低減にばかり気を取られているせいである。
今日の競争の現実に対処するにはリーダーシップが必要である。大切なのはプレッシャーとチャレンジの必要性を認識していることである。
国も企業もただ生き残ることではなく、国際的な競争力の獲得を目指すべきである。それは一回限り一時的なものではなく、持続する競争力でなくてはならない。


5. 感想・まとめ
#2では第1章の『立地の競争優位』の後編として、「システムとしてのダイヤモンドフレーム」以降の内容を取り扱いました。重要なポイントについて何点かずつ具体的に挙げられていたので参考になりました。
#3では第2章の『クラスターと競争』の内容を取り扱います。