Introduction_新版のための序論|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #1

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以前読んだポーターの競争戦略についての本がわかりやすく非常に参考になったので、新シリーズでは「[新版]競争戦略論Ⅰ」を読み進めていければと思います。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

過去の読解メモについては下記などを参照ください。

Ch_5 トレードオフ ー 戦略のかすがい|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #8 - lib-arts’s diary

Ch_6 適合性 ー 戦略の増幅装置|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #9 - lib-arts’s diary

#1ではIntroductionとして「新版のための序論」の内容について確認していきます。
1. 「競争」と「価値の創造」の追求
2. 本書の構成について
3. 拡大する「競争」のフロンティア
4. 社会問題を解決する競争の力
5. 感想・まとめ


1. 「競争」と「価値の創造」の追求(簡単な要約)
私たちは社会の進歩を目指して様々な活動を行っているが、競争はその中でも強い力を持つものの一つである。競争は至るところに存在し、市場で事業を営む企業も、グローバリゼーションに対応しようとする国も、人々のニーズに応えようとする社会組織も、全てなんらかの競争を行っている。そして全ての組織は、競争を通して顧客に優れた価値を提供するための戦略を必要としている。
今日、あらゆる次元のすべての組織が、価値を提供するために競争しなければならない。「価値」とは、顧客のニーズ(もしくはニーズ以上のもの)を効率的に満たす能力のことである。なんらかの形で社会をよくしようとする全ての組織にとって、少しでも大きい社会的価値(支出1ドルあたりの社会的メリット)を提供することは喫緊の責務である。
競争と価値創造を理解するために、研究を通して現実の世界で起きている事象の複雑さを捉えることを目指している。また、理論を発展させて実務に使えるようにするよう追及を続けている。研究にあたってのゴールは、理論と実践を効果的につなぐ、厳密で役に立つフレームワークを開発することに置いている。
この本には、競争と価値創造を理解するために開発したコンセプトとツールの全てを収めている。新しい研究成果とその基礎となった研究の両方が含まれており、各章は様々なレベルの様々な環境下での競争について考察しているが、そこには全てを結びつける共通のフレームワークが存在している。

 

2. 本書の構成について(簡単な要約)
この新版は五部構成となっている。それぞれ下記の内容についてまとめている。

・第1部 競争と戦略(I巻・第1部)
-> 企業にとっての競争戦略を、まず単一の業界レベルで論じ、次に複数の事業を行う企業や多角化した企業のレベルで論じている。競争戦略の中心にあるのは、業界の競争のドライバーは何か、どうすれば企業は競争優位を獲得し維持できるか、どうすれば明確な戦略を開発できるかという問いである。

・第2部 立地の競争優位(Ⅱ巻・第1部)
-> 立地(location)が競争において果たす役割について考える。テクノロジーによって企業の活動がグローバル化し、資本が国境を超えて自由に移動するようになるに従い、多くの理論家がリッチの重要性は低下すると論じているが、この考えに挑戦する。

・第3部 競争によって社会問題を解決する(Ⅱ巻・第2部)
-> ビジネスを中心に発展させてきたフレームワークを利用して、社会に存在する様々な課題の解決に迫っている。社会問題はどれも経済学と密接に結びついており、競争の影響下にある。これらの問題を自力で永続的に解決できるかどうかは競争から学んだ教訓を効果的に適用できるかどうかで決まると思われる。

・第4部 戦略・フィランソロピー・企業の社会的責任(I巻・第2部)
-> 社会的組織と営利企業の両方に対し、戦略の原則を踏まえた社会貢献事業や寄付・助成のあり方を論じている。

・第5部 戦略とリーダーシップ(I巻・第3部)
-> 優れた価値創造を実現するためにはリーダーシップが必要であることを論じている。

 

3. 拡大する「競争」のフロンティア(簡単な要約)
行っている一連の研究は、競争と価値創造についての中核的アイデアをめぐって展開されており、一貫した視点で貫かれている。一貫した中でアイデアはもちろん常に進化し、時間の経過とともに広がり新しい次元を取り入れてきた。
「五つの競争要因(five force)」は、業界構造が競争のフィールドのあり方を決定する、という考えを一言で表す略語として定着した。「バリューチェーン」は、企業の活動という視点から見た競争優位を示す略語となった。高い収益性は、企業がコスト引き下げを可能にする活動家、より効果な料金を請求できる能力の違いによってもたらされるということである。
「戦略的ポジショニング」と「業務効果」は、戦略の本質と、それが他のマネジメント課題とどう違うかを理解するための本質的な区別となっている。「ダイヤモンド」と「クラスター」は立地が競争に及ぼす影響のありようを一語で示す省略表現となった。
競争と戦略を研究する中で、一つの疑問が次の疑問、そのまた次の疑問へとつながっていった。


4. 社会問題を解決する競争の力(簡単な要約)
競争と価値創造を深く理解し、立地の研究によってその理解がさらに充実したことによって、競争と社会問題の関係という新しい研究のフロンティアが現れた。経済の競争力と社会の進歩は調和させることができ、同時に改善することができる。
社会組織は価値創造の原則を受け入れることでパフォーマンスを向上させることができる。価値の創造をめぐって競争が行われるようになれば社会的セクターは急速に進歩するだろう。
未来がどうなるかわからないが、確かなことが一つあり、それは競争がこれからも進化し続け、我々の繁栄を時に揺さぶりながら繁栄の多くをもたらす源泉になるということである。


5. 感想・まとめ
#1ではIntroductionとして本の前書きにあたる、「新版のための序論」についてまとめました。今回は序論のため、詳しいところまでは確認しませんでしたが、非常に面白そうなトピックが並んでいる印象を受けました。
#2では第1章の「5つの競争要因」について確認していきます。