Ch_2 クラスターと競争②|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #4

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「[新版]競争戦略論I」について一区切りとなったので、「[新版]競争戦略論II」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

「[新版]競争戦略論I」の読解メモについては下記などを参照ください。

Introduction_新版のための序論|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

Ch_1 五つの競争要因(前編)|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #2 - lib-arts’s diary

#3では第2章の『クラスターと競争』の第一回として、「競争における立地の重要性」までの内容について取り扱いました。

Ch_2 クラスターと競争①|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #3 - lib-arts’s diary

#4では引き続き第2章の『クラスターと競争』の第二回として、「クラスターは競争優位を生む」から「クラスターと経済地理」までの内容について取り扱います。
以下目次になります。
1. クラスターは競争優位を生む
2. クラスター理論とネットワーク理論
3. クラスターと経済地理
4. 感想・まとめ

 

1. クラスターは競争優位を生む(簡単な要約)
クラスターは直接的にはダイヤモンドフレームの一角(関連産業と支援産業)を構成するに過ぎないが、実際はクラスターはダイヤモンドフレームの四つの要素の相互作用の表れと捉えるのが最もふさわしい。クラスターは大きく分けて下記の三つの道筋で競争に影響を与える。

1) クラスターを構成する企業や産業の生産性を向上させる
2) 企業や産業がイノベーションを進める能力を強化し、それによって生産性の成長を支える
3) イノベーションを支えクラスターを拡大するような新規事業の形成を刺激する

クラスターは幅広く存在するがクラスターがもたらす競争優位はどの分野でも同じように大きいわけではない。そして一般に、クラスターがもたらす優位が大きくそこに関わる製品やサービスが他の立地のものと交換可能であるほど、有効なクラスター立地の数は少なくなる。
クラスターが競争に影響を及ぼす三つの道筋はどれもある程度人間同士の付き合い、直接に顔を合わせて行うコミュニケーション、個人や団体のネットワークを通じた相互作用に依存している。クラスターの存在がこうした関係の発展を助け、一旦生まれた関係の効果を高めるわけではあるが、そのプロセスは自動的に進むものではない。
クラスターを機能させるにあたっては、公式・非公式の組織化の取り組みや文化的な規範が一定の役割を果たしていることが多い。


2. クラスター理論とネットワーク理論(簡単な要約)
ある立地に、企業、サプライヤー、各種機関が存在しているだけでも経済的価値が生まれる可能性があるが、それだけでは可能性が現実のものになるとは限らない。この際に、社会的な絆がクラスターをまとめ、価値想像のプロセスを助ける。
クラスターによる競争優位の多くは、情報の自由な流れ、付加価値をもたらす交換や取引の発見、組織間で計画を調整したり協力を進める意志、改善に対する強いモチベーションなどに左右される。こうした事情を支えるのは関係性のため、クラスターの社会構造は大切な意味を持っている。
クラスター理論では、経済的に結びついた企業や各種機関が隣接して存在していることが、競争力にどのように影響を与えているかに注目する。クラスターに属することによって生じるコミュニティへの帰属意識や単独の企業という狭い限定を超えた市民としての責任感は、クラスター理論によればそのまま経済的価値につながる。
また、クラスター理論は、ネットワーク理論と競争を結びつける。クラスターはある地理的な立地内で生じるネットワークの一形態であり、そこでは企業や各種機関が接近していることである種の共通性が確保され、相互作用の頻度や影響力を増していく。うまく機能しているクラスターは、単なる階層的なネットワークを超え、個人、企業、各種機関の無数の重なり合う流動的な結びつきを支援する。


3. クラスターと経済地理(簡単な要約)
経済地理学の視点で都市、州、国を見てみると、そこには専門家という特徴が見られる。繁栄している都市、州、国においてはそれがはっきりしており、経済の発展とともにますます専門化が進むことも観察されている。繁栄している状況においては通常、比較的少数のクラスターが、地域の経済で大きなシェアを占めるとともに、がいぶに向けた経済活動でも圧倒的なシェアを占めている。
ある地域を基盤とする外向きのクラスターは、その地域の経済成長や経済的繁栄を長期に渡って生み出す源泉となる。こうしたクラスターは地元の市場規模をはるかに超えて成長し、より生産性の低い企業や産業から労働力を吸収する。対照的に、地元の産業に対する需要は本来的に限界があり、直接的であれ間接的であれ、主に外向きのクラスターの成功によってもたらされる。


4. 感想・まとめ
#4では第2章の『クラスターと競争』の第二回として、「クラスターは競争優位を生む」から「クラスターと経済地理」までの内容について取り扱いました。クラスター理論とネットワーク理論を絡めて話を進めているところが興味深かったので、もう少し記述があると良いなという印象を受けました。
#5では第2章の『クラスターと競争』の「クラスターの誕生、進化、衰退」以降の内容を取り扱います。