Ch_2 クラスターと競争①|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #3

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「[新版]競争戦略論I」について一区切りとなったので、「[新版]競争戦略論II」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

「[新版]競争戦略論I」の読解メモについては下記などを参照ください。

Introduction_新版のための序論|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

Ch_1 五つの競争要因(前編)|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #2 - lib-arts’s diary

#2では第1章の『立地の競争優位』の後編として、「システムとしてのダイヤモンドフレーム」以降の内容について取り扱いました。

Ch_2 立地の競争優位【後編】|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #2 - lib-arts’s diary

#3では第2章の『クラスターと競争』の第一回として、「競争における立地の重要性」までの内容について取り扱います。
以下目次になります。
1. 「クラスター」という視点
2. クラスターとは何か
3. 競争における立地の重要性
4. 感想・まとめ


1. 「クラスター」という視点(簡単な要約)
企業の競争と戦略を考える場合は企業の内部の出来事に目を向けられ、国や州の競争力を考える場合には経済全体に目が向けられ国の経済政策が支配的な影響力を持つと考えがちである。この際に立地(location)という観点は抜け落ちることが多い印象だが、これは競争の現実と合致していない。国・州・地域が持つ競争力において重要な役割を果たすのがクラスター(cluster)という概念である。
クラスターとは、特定分野における関連企業、専門性の高いサプライヤー、サービス提供者、関連産業の企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体など)が競争しつつ同時に協力もしているような、地理的集中状態のことである。クラスターの存在は、競争優位のかなりの部分は企業や業界の内部ではなく、事業の「立地」に由来していることを示唆している。
クラスターによって政府にも新しい役割が生じる。適切なマクロ経済政策が企業の競争力にとって重要だという理解は進んできたが、マクロ経済政策は必要条件であって十分条件ではない。政府がより決定的な影響力を及ぼすことができるのは実はミクロ経済のレベルであり、政府は成長と進歩を阻む障害を排除し、既存及び誕生しつつあるクラスターの質を向上させることに優先的に取り組むべきである。

 

2. クラスターとは何か(簡単な要約)
クラスターとは、ある特定の分野に属し、共通性と補完性によって結ばれた、互いに関連する企業と機関から成る、地理的に近接した集団である。クラスターの地理的な広がりは、一都市のみの小さなものから、州、国、さらには近隣数カ国の範囲にまで及ぶ場合がある。
以下クラスターについての重要なポイントをまとめる。

クラスターの構成要素
-> クラスターは深さや高度化の程度によって様々な形態を取るが、その構成という点では大抵の場合、最終製品やサービスを生み出す企業、専門的な投入資源・部品・機器・サービスのサプライヤー、金融機関、関連産業に属する企業によって構成される。
-> クラスターを構成する参加者を詳しく把握するには、まず大企業もしくは似た企業の集中状況に注目し、次にその上流と下流に目を向けて企業や期間の垂直的連鎖を見た上で、水平方向に目を展示、同じ流通チャネルを使っていたり補完的な製品やサービスを生み出している業界を確認すると良い。

クラスターの範囲
-> どこまでをクラスターの範囲とするかは程度の問題であることが多く、業界や機関の間に存在するつながりや補完性を理解した上でそれが競争上どの程度の重要性を持つかによって判断することになる。厳密な定義に基づくというよりは創造的なプロセスである。

・様々なクラスタ
-> クラスターの規模、広がり、発展の程度は様々であり、大企業を中心とするクラスターもあれば、主として中小企業を中心に構成されるクラスターもあるし、大学での研究を中心としたクラスターもある。

クラスター単位で経済を見る利点
-> クラスター単位で経済を見る利点は、クラスターという視点の方が競争の本質や競争優位の源泉を考える場合に都合が良いからである。クラスターは産業より幅が広いため、企業間や産業間の重要なつながりや補完性、あるいは技術・スキル・情報・マーケティング・顧客ニーズなどの余波も捉えることができる。

・産業単位で経済を見る弊害
-> 産業単位や「自動車関連製品」のように狭い分類で世界を見ていると、その分類下の企業が補助金や優遇税制を求めてロビー活動を行うという状況に陥りやすい。

 

3. 競争における立地の重要性(簡単な要約)
ここ数十年、立地が競争にもたらす影響の研究においては、企業間の競争は比較的単純な形で織り込まれていた。だが、このようなイメージは現実の競争を表現していない。
競争はダイナミックなものであり、企業が戦略上の差異とイノベーションを追求することによって決まる。以下の三つの状況が静的環境下で重視される生産要素の重要性を低下させている。

・グローバル経済に門戸を開く国が増えて、投入資源の供給が増大する
・生産要素の国内、国際市場の効率が向上する
・競争における生産要素の比重が低下する

競争を幅広くダイナミックに捉えた際に、立地は生産性、特に生産性の成長に影響を与えるという点で競争優位を大きく左右する。


4. 感想・まとめ
#3では第2章の『クラスターと競争』の第一回として、「競争における立地の重要性」までの内容について取り扱いました。企業の競争について議論するにあたって、クラスターと立地という概念を元に論理展開されており、あまり考えたことのない話だったので興味深い内容でした。
#4では第2章の『クラスターと競争』の「クラスターは競争優位を生む」以降の内容を取り扱います。