Ch_1 立地の競争優位【前編】|『[新版]競争戦略論II(by Michael Porter)』読解メモ #1

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「[新版]競争戦略論I」について一区切りとなったので、「[新版]競争戦略論II」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

「[新版]競争戦略論I」の読解メモについては下記などを参照ください。

Introduction_新版のための序論|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #1 - lib-arts’s diary

Ch_1 五つの競争要因(前編)|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #2 - lib-arts’s diary

#1では第1章の『立地の競争優位』の前編として、「国の競争優位を示すダイヤモンドフレーム」までの内容を取り扱います。
以下目次になります。
1. 競争力の真の源泉は何か
2. 企業が国際市場で成功する条件
3. 国の競争優位を示すダイヤモンドフレーム
4. 感想・まとめ


1. 競争力の真の源泉は何か(簡単な要約)
国の羽いは作り出されるものであって天賦のものではない。国の経済成長は、古典派経済学が主張するように天然資源や労働力、金利、通貨価値によって決まるわけではない。国の競争力は、その国の産業がイノベーションを起こし、進歩発展していく能力によって決まる。企業は世界の競合他社に対抗するための競争優位を様々な圧力や課題に立ち向かう過程で獲得する。
グローバルな競争が激化する世界において、国の重要性は弱まるどころかますます高まっている。競争の基盤が知識の創出と蓄積にシフトしていく中で、国の役割が増大している。競争優位は地域性と密接に結びついたプロセスの中で創り出され維持される。国としての価値観、文化、経済構造、制度、歴史の違いも全て競争で成功するための重要な要素である。
各国の政府の間では国の競争力を向上させるにあたって様々な取り組みがなされている一方で、我々が必要としているのは新しい視点であり、新しいツールである、競争に対する正しいアプローチは、国際的に成功している産業に関する分析から直接得るべきであって、古いイデオロギーや昨今の学会の流行に左右されてはならない。我々が知りたいのは何がうまくいくのかとその理由は何かということで、それさえわかればあとは応用するだけである。

2. 企業が国際市場で成功する条件(簡単な要約)
国際的なリーダーシップを握っている企業は世界各地に存在し、その戦略はあらゆる点でそれぞれ異なっている。一方で成功している企業には独自の戦略があるといっても、根底にある戦略遂行のあり方(成功企業の特性)は基本的には共通している。成功企業の特性の3点について以下それぞれまとめる。

イノベーションを起こす
-> 成功している企業は一連のイノベーションを通じて競争優位を実現する。彼らはイノベーションを広い意味で捉えており、そこには新しい技術も新しい物事のやり方も含まれている。成功した企業は、新たな競争の土俵を見つけ、古い土俵での新しい戦い方を身につけている。
-> イノベーションは派手なものだと捉えがちだが、多くのイノベーションはありふれた漸進的なもので、技術上の大きなブレークスルーというよりは、些細な洞察や前進の積み重ねに依拠していることが多い。

・たえず進化し続ける
-> イノベーションを通じて獲得した競争優位を維持するには、絶え間無く改善を進めるしかない。競争優位はほぼどんなものであれ模倣可能なため、改善やイノベーションをやめてしまったら最終的には必ず競合他社に追い越される。
-> 競争優位を維持する唯一の道は、その優位を進化させ続けることであり、常にもっと高度なタイプへの移行を試みることである。

・グローバルなアプローチと自主的な陳腐化
-> ここまであげてきた点に加えて、日本の自動車メーカーの成功の例は競争優位を維持するための条件として、さらに以下の二つの点を示している。「1)戦略を考える際にはグローバルなアプローチを取らなければならない」と「2)より持続性の高い競争優位を創り出すために、企業はしばしば今持っている競争優位を自らの手で陳腐化させなくてはならない」の二点である。
-> 事業が成功していると、企業はどうしても予測可能性や安定性を重視する傾向を強め、今手にしているものを守ろうとしてしまい、これによって変革が抑えられてしまう。そのためこういった状況に陥らないように気をつけることが重要である。

 

3. 国の競争優位を示すダイヤモンドフレーム(簡単な要約)
企業のイノベーションの能力や競争優位と国の関係性を考えた際の重要なファクターは国の属性である。国の属性は大きく四つに区分され、それぞれ個別に、また一つのシステムとしてその国の競争優位を形成する。四つの属性は具体的に下記の四つである。

1) 生産要素条件(Input条件)
-> 熟練労働者やインフラなど、その産業で競争するのに必要な生産要素に関する国のポジション。

2) 需要条件
-> その産業の製品やサービスに対する国内市場の需要の性質。

3) 関連産業・支援産業
-> 国内に国際競争力を持つ供給産業やその他の関連産業が存在するか否か。

4) 企業戦略・構造・競合関係
-> 国内環境や政策によって生じる、企業の設立・組織・経営のあり方や競合関係の性質

上記の要因が企業が生まれ、競争の作法を学習する国内環境を決定する。


4. 感想・まとめ
#1では第1章の『立地の競争優位』の前編として、「国の競争優位を示すダイヤモンドフレーム」までの内容を取り扱いました。国の視点からイノベーションを考えたことはあまりなかったので、視点として参考になりました。
#2では第1章の『立地の競争優位』の後編として、「システムとしてのダイヤモンドフレーム」以降の内容を取り扱います。