Ch_8 戦略と社会問題(競争優位とCSR)【前編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #14

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「[新版]競争戦略論Ⅰ」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

過去の読解メモについては下記などを参照ください。

Ch_5 トレードオフ ー 戦略のかすがい|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #8 - lib-arts’s diary

Ch_6 適合性 ー 戦略の増幅装置|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #9 - lib-arts’s diary

#13では第7章の『競争優位のフィランソロピー』の後編として、「競合他社のただ乗りをどう考えるか」以降の内容を取り扱いました。

Ch_7 競争優位のフィランソロピー【後編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #13 - lib-arts’s diary

#14では第8章の『戦略と社会問題(競争優位とCSR)』の前編として、「CSRをめぐる四つの議論を検証する」までの内容を取り扱います。
以下目次になります。
1. CSRの新たなパラダイム
2. CSRの現状と企業の姿勢
3. CSRをめぐる四つの議論を検証する
4. 感想・まとめ


1. CSRの新たなパラダイム(簡単な要約)
行政、社会活動家、マスメディアによって、企業活動の責任が厳しく問われる時代となり、無数の組織が企業を社会的責任(CSR; Corporate Social Responsibility)の観点から評価している。評価指標には疑問がある際もあるが、発表されるランキングには社会的な注目が集まっている結果として、CSRはどの国のビジネスリーダーにとっても、なおざりにできない重要テーマになっている。
CSRについてはこれまで一定の成果を生んできたが、理由は下記の二点がある。

1) 企業も企業も批判する社会の双方が、企業活動を社会の利益と対立するものと見なしていること
2) 企業の社会的責任を問う風潮の中でプレッシャーを感じた企業が通り一遍のCSRに逃げ込み、自社の戦略に適したCSRの追求を怠っていること

現在支配的なCSRの考え方はあまりに部分的で、事業や戦略とも無関係なので、それにより企業が社会に貢献する機会を限定している。この状況において、企業が事業上の判断を下すのと同じフレームワークに基づいてその社会的責任を果たすというように考えれば、CSRはコストでも制約でも慈善行為でもなく、ビジネスチャンスやイノベーション、そして競争優位につながる有意義な事業活動になることは理解しておくとよい。
本章では、「企業の成功」と「公共の福祉」をゼロサムで考えないということで、企業が社会に及ぼすであろう影響のための効果的な方法を考えることを試みる。


2. CSRの現状と企業の姿勢(簡単な要約)
CSRに注目が集まっているが、それは企業が自発的に取り組んできた結果とばかりは言えない。むしろ、自社には責任がないと見なしていた問題に対して、世論からの反応を受けて取り組み始めた企業も多い。
あらゆる市民活動団体が企業に圧力をかけることに積極的になり、そのテクニックも上達してきている。社会活動家たちはある問題に世間の目を向けさせるために大きな責任がなくともとにかく目立つ企業や儲けている企業を攻撃の的にしがちである。
これらの圧力からはっきり読み取れるのは、社外のステークホルダーたちが様々な社会問題に関する責任を企業に負わせようとする傾向である。その結果として行動が容認できないと判断された企業には大きな財務リスクが生じる恐れがある。
企業はCSRに取り組むにあたってCSR活動の報告書を提出しているところが多いが、この種の報告書がCSR活動における共通のフレームワークを示すことはなく、長期戦略のフレームワークなどは期待できない。そのためCSRについてはより本質的な議論が必要だと思われる。


3. CSRをめぐる四つの議論を検証する(簡単な要約)
CSRを熱心に主張する人たちが掲げてきた理由は大きく分けて下記の四つがある。

・道徳的義務
・持続可能性
・事業継続の資格
・企業の評判

これら四つの理由からCSRは議論されてきたが、いざ現実の判断を下すにあたって十分な道しるべになりうるものは一つもない。それぞれ共通の弱点があり、企業と社会の相互依存関係ではなく、対立関係に着目している点である。四つともCSRが必要な全般的な理由を指摘しているだけで、CSRと企業戦略や業務プロセス、事業展開している地域との関連については考慮していない。
機会損失は膨大であり、企業の力は分散し、コミュニティと企業の目標を同時に後押しするような行動などは困難になる。

4. 感想・まとめ
#14では第8章の『戦略と社会問題(競争優位とCSR)』の前編として、「CSRをめぐる四つの議論を検証する」までの内容について取り扱いました。競合他社のただ乗りに対する考察がなかなか視点として面白い印象を受けました。
#15では第8章の『戦略と社会問題(競争優位とCSR)』の後編として、「事業とCSRを一体化する」以降の内容について確認していきます。