Ch_9 新任CEOを驚かせる7つの事実【後編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #17

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「[新版]競争戦略論Ⅰ」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

過去の読解メモについては下記などを参照ください。

Ch_5 トレードオフ ー 戦略のかすがい|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #8 - lib-arts’s diary

Ch_6 適合性 ー 戦略の増幅装置|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #9 - lib-arts’s diary

#16では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の前編として、「CEOは社内で何が起きているか把握できない」までの内容を取り扱いました。

Ch_9 新任CEOを驚かせる7つの事実【前編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #16 - lib-arts’s diary

#17では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の後編として、「CEOの言動全てがメッセージとなる」以降の内容を取り扱います。
以下目次になります。
1. 事実4_CEOの言動の全てがメッセージとなる
2. 事実5_CEOには取締役会という上司が存在する
3. 事実6_CEOの目標は短期利益の追求ではない
4. 事実7_CEOも一人の人間に過ぎない
5. CEOは虚心坦懐に学習しなければならない
6. 感想・まとめ


1. 事実4_CEOの言動の全てがメッセージとなる(簡単な要約)
就任したばかりのCEOでも自分の行動が社員の関心の的になるのは心得ているが、何から何まで注視され様々な憶測が飛び交うとまで思っていないこともあり、注意が必要なときもある。CEOの何気ない言動がたちまち噂になり、特には尾ひれがつき、歪められて解釈されることがある。
そのため、CEOに就任した後はその場の思いつきで発言することは慎まなければならない。中途半端な考えを疲労しただけでも、周囲は「素晴らしいアイデアに違いない」と見てしまう。CEOの発言は常にマイクロホンにキャッチされ、メッセージが拡大解釈される恐れがあることを理解しておかなければならない。言った覚えのないことが言ったことにされている場合もあり、注意が必要である。
新任CEOは自分がどのようなシグナルを発し、どのように受け止められているのか、素早く察知しなければならない。自分の言動が大げさに伝わることを心得ていれば、意図とは異なるメッセージを打ち消し、本来発したいメッセージをより効果的に発することができる。一部の関係者には好ましくない影響が与えることが避けられないとしても、慎重に言葉を選んでメッセージすることで、ダメージを最小限に抑えることができる。
また、メッセージの一貫性について可能な限り努力することの必要性も理解しておくと良い。明快なメッセージを繰り返し送り、印象に残るようなエピソードで肉付けするのが新任CEOがコミュニケーション上の課題を克服する秘訣である。


2. 事実5_CEOには取締役会という上司が存在する(簡単な要約)
CEOは確かに社内でのヒエラルキーの頂点に立っているが、取締役会への報告義務を負っていることは抑えておく方が良い。取締役会はCEOの任免権を持つほか、その業績を評価し、報酬額を決め、戦略を否定するなど、重要な意思決定を下す権限を有する。
取締役会のメンバーは有能で、ベテラン揃いではあるが、その業界知識は限られることも多い。それゆえCEOはマネジメントチームと協力して、自社や業界の状況を取締役会に伝えなければならない。CEO自身も情報の入手に苦労している中で、取締役会が「十分な情報がない」「事前に知らされなかった」と思うような最悪の事態を避けなければならない。新任CEOにとっては取締役たちに地文をよく知ってもらい、手腕や判断力を信頼してもらえるように務めることが重要である。
結局のところ、最終決定権はCEOではなく、取締役会が握っている。取締役会との関係を強化しようとするCEOは相手を友人や同志としてではなく、自分に会社の命運を託した「上司」とみなすべきである。有能なCEOは取締役会を理解し、関係を強化することに努めている。方法としては、一対一の交流やメールによる状況報告、資料の提供などである。そうした努力を続けることで、取締役会は単なる説明の場から全員参加の議論の場に変わる。


3. 事実6_CEOの目標は短期利益の追求ではない(簡単な要約)
新任CEOは株主を満足させることが最大の使命であると考えがちだが、問題は株主の信頼を得るという目標は企業に最善の利益をもたらすとは限らないということである。株主やアナリストが好む施策や戦略は企業の競争力の向上に役立つとは限らない。株主は終始入れ替わり、米国の場合は株式の平均保有期間は一年にも満たない。アナリストは即効性のある劇的な変化だけを期待しがちだる。
一方で、長期的に視野に立って経営しようとするCEOにとって、十分な情報を持ち、経営に積極的に関与する取締役会は心強い味方になる。重要なのは長期的な収益性のみであり、たとえ株価が上昇しても競争優位の裏付けがなければ、遅かれ早かれ下落は免れない。そのため、CEOは株主の顔色を伺いながら戦略を決めるのではなく、他者との差別化を図り、業界の基礎的条件に適した明確な戦略を立案しなければならない。この際のCEOの重要な職務として、戦略の意義をうまく説明して、アナリストや株主の理解を深めるということがある。


4. 事実7_CEOも一人の人間に過ぎない(簡単な要約)
CEOをスーパーヒーローのように見てしまいがちだが、現実には希望、恐れ、限界を持つ極めて人間的な存在であるということは理解しておくと良い。新任CEOは自分がこれから行う仕事の量や重みを軽視する傾向にあり、新しい職務とプライベートの両方を問題なく充実できると高をくくる傾向がある。だが、CEOの仕事量は途方もなく
たえず世間の目にさらされているため、公私のバランスを維持するのは極めて難しい。また、周りが自分を見る目も変わるため、CEOのほとんどがCEOになってから友人や家族との関係が変わったと考えている。
新任CEOは己を厳しく律し、謙虚さを忘れず、判断や行動が正しいかどうかを振り返ることが必要である。それには周囲の意見に耳を傾け、忌憚なく苦言を呈してくれる人物の存在が欠かせない。さもなければ多大な報酬と賛辞に惑わされ慢心に陥ってしまう。取締役会が有能で機能していれば、そのような誘惑からCEOを救う一助となるので、なおさら関係性が重要である。

5. CEOは虚心坦懐に学習しなければならない(簡単な要約)
ここまでの新任CEOを驚かせる7つの事実から、新任CEOが仕事とどう向き合うべきかについて貴重な教訓を得ることができる。以下に3つの教訓についてまとめる。

1) CEOは日々のオペレーションを見るのではなく、組織の機微を察し、マネジメントする方法を習得しなければならない

2) CEOは肩書きだけでリーダーとなれるのではなく、組織が自分に忠誠を約束してくれるわけでもないことを自覚しなければならない

3) 役割に飲み込まれてしまってはならない

 

6. 感想・まとめ
#17では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の後編として、「CEOの言動全てがメッセージとなる」以降の内容を取り扱いました。なかなか参考になる視点が多く、興味深い内容でした。
1巻についてはこれで一通り取り扱ったので区切りとします。2巻については引き続き読み進めていければと思います。