Ch_9 新任CEOを驚かせる7つの事実【前編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #16

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「[新版]競争戦略論Ⅰ」を読み進めていきます。

[新版]競争戦略論Ⅰ | 書籍 | ダイヤモンド社

過去の読解メモについては下記などを参照ください。

Ch_5 トレードオフ ー 戦略のかすがい|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #8 - lib-arts’s diary

Ch_6 適合性 ー 戦略の増幅装置|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #9 - lib-arts’s diary

#15では第8章の『戦略と社会問題(競争優位とCSR)』の後編として、「事業とCSRを一体化する」以降の内容を取り扱いました。

Ch_8 戦略と社会問題(競争優位とCSR)【後編】|『[新版]競争戦略論Ⅰ(by Michael Porter)』読解メモ #15 - lib-arts’s diary

#16では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の前編として、「CEOは社内で何が起きているか把握できない」以降の内容を取り扱います。
以下目次になります。
1. CEOの職務には計り知れない困難がある
2. 事実1_CEOが経営を担っているのではない
3. 事実2_CEOが命令を下すことはリスクが高い
4. 事実3_CEOは社内で何が起きているか把握できない
5. 感想・まとめ


1. CEOの職務には計り知れない困難がある(簡単な要約)
CEOは会社の命運について全責任を負っているが、その成否を決定付けるほとんどについてコントロールする術を持たない。組織の誰よりも大きな権限を持っているが、それを行使すれば逆に望ましくない結果を招いてしまう。
大手企業の新任CEOが遭遇する意外な事実は大きく分けて以下の7つがある。

1) CEOが経営を担っているのではない
2) CEOが命令を下すことはリスクが高い
3) CEOは社内で何が起きているか把握できない
4) CEOの言動一つ一つがそのままメッセージとなる
5) CEOには取締役会という「上司」が存在する
6) CEOの目標は短期利益の追求ではない
7) CEOといえども一人の人間に過ぎない

上記をいかに早く認識し、受け入れ、立ち向かうかがCEOとして大成できるかどうかを左右する。これら7つの事実に着目することで、CEOだけでなく、あらゆる規模の組織の、あらゆるレベルのマネジャーにとって重要なリーダーシップの本質が浮き上がってくる。


2. 事実1_CEOが経営を担っているのではない(簡単な要約)
新任CEOの大多数はそれまで花形事業部門のトップを務めていたかCOOの座にあったケースが多いが、新任CEOは事業運営について熟知しているつもりでいるが次々と課題を突きつけられ瞬く間に自信を喪失する。
CEOはおうおうにして、社会のステークホルダーへの対応が困難であることを痛感させられ、多くの事柄を諦めなくてはならないと知って衝撃を受ける。事業運営はおろか、社内で現実に起きていることすら十分に把握できない自分に気づいてショックを受ける。
CEOは事業運営を成功させる責任を負うが、大きく複雑な組織の意思決定の全てに介入することはできない。CEOに就任したら会社に対して影響力を発揮する手段は、直接的なものから間接的なものへとシフトする必要がある。
具体的には、以下などを行うと良い。

1) 誰もが理解できる戦略を示す
2) 堅固な組織や業務プロセスを構築して社員を統率する
3) 情報共有や報奨の仕組みを整える
4) 自身の価値観や経営スタイルを示す
5) 有能な人材からなる経営チームを組織して、経営の重責を分かち合う


3. 事実2_CEOが命令を下すことはリスクが高い(簡単な要約)
CEOは組織で最大の権力を有するが、一方的に命令したり下から上がってきた提案を無下に退けたりすれば手痛い目に遭う。強行な命令は同僚や部下の反感を招き、警戒心を芽生えさせる。幹部社員を批判すればその権威や自信を傷つけることになり、当人はもちろん周囲の士気や意欲を削ぐことになりかねない。
CEOが権限を直接行使する時はよくよく考えた上で、ごく一部の局面に限定しなくてはならないし、大枠の行動プランから外れるようなことがあってはならない。権力は間接的に行使されるときに最も効果を発揮する。
CEOが反対をすることが多いと、CEOの考えを理解できていないと不安になった社員たちが何かを前に進めようとするたびにCEOと相談したがるようになり、結果としてCEOのスケジュールがボトルネックとなり、組織全体の意思決定が機能しなくなってしまう。CEOが提案を退けないといけない際は組織に様々な意味で歪みが生じている可能性について考慮すると良い。
CEOは自ら命令を下すことは最善の方法ではないと考え、むしろ経営幹部を巻き込み、結論そのものへの合意ではなく、結論に至る意思決定の基準について合意を形成するための方法を模索するべきである。


4. 事実3_CEOは社内で何が起きているか把握できない(簡単な要約)
新任CEOの元には洪水のごとく情報が押し寄せてくるが、信頼できる情報は驚くほど少ない。価値ある
情報を入手するのはもっと難しく、それはCEOに就任した途端周囲との関係に変化が生じるからである。これまで様々な情報を提供してくれていた同僚や部下などが警戒心を抱くようになる。CEOには部下のキャリアを決定づける権限があるため、上がってくる情報も各人の思惑によって偏ったものとなる。
多くのCEOが現場で働いている社員から情報を得る努力が大切だと強調するが、重要なことである。ミドルマネジャーからは良い顔をされない可能性もあるが、良い顔をされなかった場合は組織に問題がある兆候であると考える考え方もある。意見交換が有意義な場になるのは、それが特別なイベントではなく日常茶飯事になったときである。
本音で話しても困った事態にならないことを社員たちが確信できることが重要であると思われる。


5. 感想・まとめ
#16では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の前編として、「CEOは社内で何が起きているか把握できない」までの内容を取り扱いました。全体的になかなか面白い考察だと思いました。
#17では第9章の『新任CEOを驚かせる7つの事実』の後編として、「CEOの言動の全てがメッセージとなる」以降の内容について確認していきます。