集合論と確率(概要と例題解説)|高校数学の例題解説&基本演習 #5

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以前のシリーズで機械学習アルゴリズムであるニューラルネットワークやランダムフォレストに絡めて高校レベルの数学の様々なトピックについて取り扱いました。

関数や行列など様々なトピックを取り扱ったものの、いくつか取り扱えなかったものがあるので取り扱わなかったものを中心に再収録を行なっていきます。
#1と#2では数列と漸化式について、#3、#4ではベクトルについて取り扱いました。

数列と漸化式①(概要と例題解説)|高校数学の例題解説&基本演習 #1 - lib-arts’s diary

数列と漸化式②(問題演習)|高校数学の例題解説&基本演習 #2 - lib-arts’s diary

実装で学ぶベクトル(概要と例題解説)|高校数学の例題解説&基本演習 #3 - lib-arts’s diary

実装で学ぶベクトル(問題演習)|高校数学の例題解説&基本演習 #4 - lib-arts’s diary

#5と#6では集合論と確率について取り扱います(高校レベル相当が対象のため、あまり難しいところまでは立ち入らないで話を進めます)。
以下目次になります。
1. 集合論の基本
1-1. 集合論とは
1-2. 例題⑤解説
2. 確率
2-1. 確率とは
2-2. 例題⑥解説
3. まとめ


1. 集合論の基本
1-1. 集合論とは
1-1では集合論について取り扱います。高校数学レベルの確率論においては場合によっては記号を導入しないで話を進めることがあるのですが、計算時の記述が大変になったりそれに伴って思考が大変になったりするので、何を扱っているのか明示的にするためにも集合論の理解は重要です。具体的に言うと、事象Aが起こる確率をP(A)、事象Bが起こる確率をP(B)と置くなどすることで、記述が非常に楽になります。

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集合論 - Wikibooks

Wikipediaの記述が若干難しい印象だったため、上記のWikibooksから今回は話を抜粋していきます。

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まずは集合の概要について掴みます。上記によると、集合(set)とは「物の集まりであって、何か物を持ってきたときにそこに属すのか属さないのかどちらかに必ず定まるもののこと」とされています。具体例を見るところによると、客観的な基準に基づいて定まるものと考えておくと良さそうです。また、集合に属する物のことを元(element)と呼んでおり、元が集合に属していることを「\in」という記号で表すとされており、具体的に自然数全体の集合を\mathbb{N}とすると1 \in \mathbb{N}で書けるとされています。
以下では確率の問題を考える際に知っておくと便利な、部分集合や和集合・積集合だけ取り扱っておきます。

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部分集合は、Wikibooksでは上記のように記載されています。SがTの部分集合(subset)であるとき、S \subset Tのように表すことだけ知っておけば良いです。確率を考えるにあたっては事象Aが全体事象Uの部分集合であることを利用して解くことが多いので、この辺は意識しておくと良いです。事象Aが起こらない確率などをP(U)-P(A)=1-P(A)のように解くことが多いです(余事象)。余事象が見えると多くの問題はエレガントに解けることが多いので、知っておくと役に立つことも多いかもしれません。

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和集合・積集合は、上記のように説明されています。和集合はunion、積集合はintersectionなどとも呼ばれ、物体検出(Object Detection)などのところで出てくるIoUはIntersection over Unionで領域がどのくらい被っているかなどを評価するのに使ったりもします。ここでは和集合と積集合の記法と、ド・モルガンの法則だけ軽く押さえておくと良いです(覚えるまでいかなくても良いですが、ド・モルガンの法則という集合演算があるとだけ知っておくと良いです)。


1-2. 例題⑤解説
1-2では集合の例題について取り扱います。

ex.05
1) 集合A=\{1,2,3\}、集合B=\{3,4,5\}が与えられたとき、和集合と積集合をそれぞれ求めよ。
2) 集合A=\{1,4,9\}、集合B=\{2,4,6\}が与えられたとき、和集合と積集合をそれぞれ求めよ。
3) 1~40の自然数において、3の倍数と5の倍数の和集合と積集合をそれぞれ求めよ。

Answer.
1)
和集合:A\cup{B}=\{1,2,3,4,5\}
積集合:A\cap{B}=\{3\}
2)
和集合:A\cup{B}=\{1,2,4,6,9\}
積集合:A\cap{B}=\{4\}
3)
和集合:A\cup{B}=\{3,5,6,9,10,12,15,18,20\}
積集合:A\cap{B}=\{15\}

解説.
和集合は二つの集合のどちらかにあれば要素として考える、積集合は二つの集合のどちらにもある場合に要素として考えます。複雑な思考を行う際にこのような集合論の理解があると便利なので、知っておくと日常生活でも役に立つ機会が多いのではないかと思われます。


2. 確率
2-1. 確率とは
1-1節と同様にWikibooksを用いて解説していきますが、高校数学Aの範囲だと数式の説明が少ない分説明が長くなってしまいむしろわかりにくくなっているので、統計学基礎より説明を引っ張ります(数式にアレルギーを感じる方もいるかもしれませんが高校レベル相当の確率の問題における数式はさほど難しくないので、数式の意味を理解するように心がければ文字の説明よりわかりやすく感じると思います)。

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統計学基礎/確率 - Wikibooks

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まず確率とは何かについてから見ていきます。上記では降水確率などを例に確率について説明されていますが、ここでは一旦「ある物事が起こる割合」と捉えておくで十分だと思います。

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確率の公理については高校レベルでは範囲外ですが、教養レベルの統計を学ぶ際に出てくる確率分布などの理解にあたって確率の公理が出てくるので簡単に紹介しておきます。どれも当たり前のことを難しく記述しているだけなのですが、P_{2}の全事象の確率が1であることや、P_{3}の独立事象の和の足し合わせは色々と役に立つ考え方なのでおさえておくと良いです。

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また、和事象と乗法定理も色々と便利なのでご紹介しておきます。それぞれ複雑な問題を解く際に役に立つ考え方です。

 

2-2. 例題⑥解説
1-2では集合の例題について取り扱います。

ex.06
ex.05の集合においてP(A)P(B)P(A\cup{B})P(A\cap{B})をそれぞれ求めよ。ただし、全事象は別途Uとして与えるものとする。
1) 事象A=\{1,2,3\}、事象B=\{3,4,5\}、全事象U=\{1,2,3,4,5\}
2) 事象A=\{1,4,9\}、事象B=\{2,4,6\}、全事象U=\{1,2,3,4,5,6,7,8,9\}
3) 1~20の自然数において、3の倍数(事象A)と5の倍数(事象B)、U=\{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20\}

Answer.
1)
P(A)=\frac{3}{5}
P(B)=\frac{3}{5}
P(A\cup{B})=1
P(A\cap{B})=\frac{1}{5}
2)
P(A)=\frac{3}{9}=\frac{1}{3}
P(B)=\frac{3}{9}=\frac{1}{3}
P(A\cup{B})=\frac{5}{9}
P(A\cap{B})=\frac{1}{9}
3)
P(A)=\frac{6}{20}=\frac{3}{10}
P(B)=\frac{4}{20}=\frac{1}{5}
P(A\cup{B})=\frac{9}{20}
P(A\cap{B})=\frac{1}{20}

解説.
解き方そのものに加えて記号に慣れるというのも重要です。事象を集合として表したり、Pを使って確率を表すなどは慣れておくと様々なケースで役にたつと思います。


3. まとめ
#5では集合と確率の概要と例題の解説を行いました。
#6では今回導入した記号に慣れることができるように問題演習を行なっていきます。