「法律」や「国家」という言葉の意味の整理|法と国家を考える #1
歴史と社会・組織の考察のシリーズで以前、秦の台頭と統一、崩壊について取り扱いました。
この秦の台頭と統一、崩壊にあたって、一貫して大きな影響力を持ったと考えられるのが「法」です。秦の国力が大きくなったのも商鞅の改革によって法が導入されたことが大きいと考えられるし、逆に崩壊にあたっては趙高による法の悪用が大きいのではという考察を行いました。
それを受け、当シリーズでは「法」と「国家」を考えるというテーマで色々と議論をしていければと思います。#1では最初に簡単に注意事項についてまとめた上で、「法」や「国家」の言葉の意味の整理を行いたいと思います。
以下目次になります。
1. 連載にあたっての注意事項
2. 法律について
3. 国家について
4. まとめ
1. 連載にあたっての注意事項
1節ではこちらのシリーズの連載にあたっての注意事項についてまとめます。
良い社会とは何か、強い組織とは何か|国や企業の歴史に学ぶ良い社会・強い組織についての考察 #1 - Liberal Art’s diary
基本的に上記を受け継ぐものとします。重要事項なので再度掲載します。
・論述の題材などは出典を明記した上記述していくよう努めますが、必ずしも正しい内容かどうかは保証できません。
-> 事実かどうかではなく事実の解釈に重きを置きたいため、大元の出典については基本的に一般的的に広く受け入れられているものを選んでいければと考えています。・解釈については基本的に筆者の見解を述べているに過ぎず、絶対的に正しいと主張するつもりはありません。
-> 「正しさ」を第一義に置くとありきたりで回りくどい内容になってしまうので、この点はご理解ください。・例外よりも平均を元に議論します。二元論ではなく割合で議論します。
-> 例外を元にした議論や二元論は意味のないものになりがちのため、重きをおかないようにできればと思います。ただし、ルールや制度のような議論をする際は例外が重要になるので、見落とさないように努めたいと思います。・人種、イデオロギー、宗教については全て多様性と見なしフラットに取り扱います。
-> 上記に関する優劣については一切論じるつもりはありません。
上記、よろしくお願いいたします。
2. 「法律」について
2節では「法律」について確認していきます。定義について専門的な議論を行うと話が回りくどくなってしまうので、Wikipediaを参考に基本事項について確認するにとどめたいと思います。
以下、概要について簡単に見ていきます。
上記がWikipediaの概要の記述です。どちらも一般的な法律のイメージからそう離れたものではない印象のため、1と2の違いとしては一旦あまり取り扱わないものとします。
以下の説明が具体的な議会の話になっておりもう少し原則論の方を抑えたいため、下記の「法学」の記述についても確認します。
まず、概要の記載ですが、「法」とは「道徳と区別される社会規範の一種で、イメージされる属性としては一定の行為を命令・禁止すること、違反したときに強制的な制裁が課されること」と考えておくと良さそうです。命令・禁止とあったり、違反した際の制裁であったりと、自由の対極にある概念のため、社会を構成するにあたって必要不可欠の内容について定めるべきであろうというのはある程度前提においても良さそうです。
道徳との関係についても触れられており、かつては規範としての法、宗教、道徳との間には明確な区別がなかったとされています。具体的な例としては中世ヨーロッパにおけるキリスト教の教会が一部統治の役割を果たしているなどが挙げられるように思います。道徳については中国史などにおいて儒教が行動規範となることもあったなどが挙げられると思います。
正義との関係としては、法を法たらしめる要素として規範が「正義」に合致することが必要かどうかについて議論されています。「正義」についても多義的ですが、ここでは一旦、漠然と「社会規範上の正しさ」を意味するものとします。この二つの見方はそれぞれ、自然法と法実証主義という言葉で整理されています。
法として援用できる規範の存在形式として法源についても触れられており、慣習法、判例法、条理、学説の四つが紹介されています。慣習法は社会の慣習を基礎とした規範の中で法として確信されるにいたった場合、判例法は判例に法源としての効力が認められる場合を意味するとされています。残りの二つの詳細はここでは省略しますが、条理は物事の筋道、学説は法学者の学説を参考にするとされています。
3. 「国家」について
3節では「国家」について言葉の確認を行なっていきます。こちらについてもWikipediaを中心に確認します。
概要としては、国家は「領域と人民に対して排他的な統治権を有する政治団体もしくは政治的共同体で、政治機能により異なる利害を調整し社会の秩序と安定を維持していくことを目的にし社会の組織化をする」と記載されています。領域とその人民に対して権力を持つものであると考えておくと良さそうです。
法学上の定義としては、領域・人民・権力の「国家の三要素」を持つものを「国家」としています。これは今日では一般に国際法上の「国家」の承認要件として認められているとされています。
国家という言葉は日本のような経済社会(Society)と文化情報共同体(Community)が重なるとも限らないため、英語では様々な言葉で表現されています。上記のように非常にややこしいため、民族(People)が独自の政府(Government)、すなわち統治機構(State)を持ちたいと考えた際に民族(People)は国民(Nation)となるとされています。国家について考えるにあたっては、上記を踏まえた国民国家(Nation State)を中心に、その他の形態も色々とあるので、区別が必要な際は言葉の定義をしっかり伴った上で論述するのが良さそうです。
4. まとめ
#1では「法律」や「国家」という言葉の意味の整理を行いました。
#2では「国家」を構成するにあたっての原則として用いられている、三権分立の考え方について見ていきます。