良い社会とは何か、強い組織とは何か|国や企業の歴史に学ぶ良い社会・強い組織についての考察 #1

企業の業績や政治、外交など、現代の社会で生活すると多くの情報について目にしたり耳にしたりします。情報を知るということも大事ですが、リアルタイムの情報というのはNoisyでもあり、間違っている情報や噂が広まったものなども多いです。
個々の時事的なニュースについて一つ一つ取り扱うのも良いですが、現在進行形のものを取り扱うというのはどうしてもノイズが混じってしまいなかなか難しい話でもあるので、「良い社会、強い組織」をテーマに歴史を紐解くというシリーズにできればと思います。「良い社会、強い組織」としたのは、国や企業の目的としてはこちらが実現できれば上手くいっていると判断できるのではと考えるためです。成功している企業は必ず強い組織基盤があるし、良い国とは良い社会が実現できていると考えてもある程度は間違っていないと思います。
#1では連載を開始するにあたっての注意事項と、前提である良い社会、強い組織とはどういうイメージなのかについて簡単にまとめられればと思います。
以下、目次となります。
1. 連載にあたっての注意事項
2. 良い社会、強い組織とは
3. まとめ


1. 連載にあたっての注意事項
1節ではこちらのシリーズの連載にあたっての注意事項についてまとめます。

・論述の題材などは出典を明記した上記述していくよう努めますが、必ずしも正しい内容かどうかは保証できません。
-> 事実かどうかではなく事実の解釈に重きを置きたいため、大元の出典については基本的に一般的的に広く受け入れられているものを選んでいければと考えています。

・解釈については基本的に筆者の見解を述べているに過ぎず、絶対的に正しいと主張するつもりはありません。
-> 「正しさ」を第一義に置くとありきたりで回りくどい内容になってしまうので、この点はご理解ください。

・例外よりも平均を元に議論します。二元論ではなく割合で議論します。
-> 例外を元にした議論や二元論は意味のないものになりがちのため、重きをおかないようにできればと思います。ただし、ルールや制度のような議論をする際は例外が重要になるので、見落とさないように努めたいと思います。

・人種、イデオロギー、宗教については全て多様性と見なしフラットに取り扱います。
-> 上記に関する優劣については一切論じるつもりはありません。

上記、よろしくお願いいたします。


2. 良い社会、強い組織とは
2節では本連載のテーマである、「良い社会」や「強い組織」についてまとめておきます。なぜこのテーマにしたかですが、世の中は変化の連続であり、様々なものが発展しては衰退しての繰り返しです。平家物語などでは「諸行無常」や「盛者必衰」とも言われていますが、国であれ企業であれ、これまでの歴史上変化を繰り返して今現代に至っています。そのため、単に数字上の「発展」や「衰退」をもって物事を論じるというのはあまり適切でないと考えました。「良い社会」、「強い組織」とは発展しているかどうかというのとは少し違った軸で捉えることができるのではということで、テーマにするに至りました。
さて、「良い社会」、「強い組織」ですが、「良い社会」については議論が難しいので先に「強い組織」について考えたいと思います。「強い組織」とはどういった組織を指すと考えるのが良いでしょうか。組織論にも色々とあり、ライン組織のようなピラミッド型の組織や専門性にフォーカスした官僚型の組織が従来では論じられてきましたが、近年では事業部制カンパニー制などの権限委譲的な組織やマトリクス型組織やネットワーク型の組織も論じられるようになってきています。ハードウェア的な議論としてはこれらの組織論は非常に参考になるのですが、単なる組織図的な議論だけでは上手くいかないというのも事実です。
一元論的な評価が難しい内容ですが、議論のとっかかりは必要だと思うので、「イノベーション」という言葉に着目することにします。「イノベーション」といっても、ハイテク分野のような派手な意味ではなく、ドラッカーの「マネジメント」や「イノベーションと企業家精神」の中で語られている、「資源の組み合わせによって価値を生み出し、顧客を創造する」というのを当連載における「イノベーション」としたいと思います。そこで、「強い組織」とは投入した資源(ヒト、モノ、カネ)以上の「イノベーション」を生み出すことのできる集団としたいと思います。顧客というと企業組織の意味合いが強くなってしまうので、「イノベーション」については「資源以上の価値をどれだけ生み出すことができるか」という言葉で言語化しようと思います。
さて、「強い組織」については大体の言語化ができたので、次に「良い社会」について見ていきます。「良い社会」とはどういう社会でしょうか。まず「組織」と「社会」の相違点ですが、「組織」は自分で所属するしないを決められるという印象がある一方で、「社会」は所属しなければならないと考えるものとします(要出典ですが見聞きする範囲内だと、あながち間違った整理ではないと思います)。したがって「組織」のルールは転職などで「組織」を外れるという選択肢がある一方で、法律のような「社会」のルールは守らざるを得ないというところはあると思われます。もちろん国籍を変えるなども可能でしょうが、転職と国籍変更は実施するにあたって必要な覚悟などが明確に異なると思われるため、「組織」には所属するしないを構成員が選ぶ自由があるが「社会」は属するしないを構成員が選ぶ自由がないと捉えた上で議論を進めても良さそうです。
さて、「社会」には所属しない自由がないと考えるとするなら、「良い社会」とはどういう社会になるでしょうか。「強い組織」においては所属の自由があるためにある程度偏ったリーダーシップでも構成員が納得するなら内部マネジメント的には問題ない(合わない人間は辞めろと言ったとしても、世の中には他の会社もある)のですが、「社会」は所属が義務と考えるなら多くの人や考え方が受け入れられる必要があります。「強い組織」の基準として述べた「イノベーション」は、全体目標のため所属の義務がある状況では適切ではなく、理由は社会の構成員全員が同じことを価値だと考えない可能性があるためです。そのため、「良い社会」とは構成員一人一人の自由を保証した社会である必要があります。ですが、現在の日本国憲法にもあるように、自由とは「公共の福祉」を阻害しない範囲で行使しなくてはなりません。「良い社会」の定義は難しいですが、自由と公共の福祉は良い着眼点だと思われるので、「自由と公共の福祉のバランスが取れた社会」を「良い社会」であると見なすことにします。

ここまでの内容をまとめて、「強い組織とは投入した資源(ヒト、モノ、カネ)以上のイノベーションを生み出すことのできる集団」、「良い社会とは自由と公共の福祉のバランスが取れた社会」を一旦当連載における定義としたいと思います。
また「強い組織」を実現しようとするのが「経営」、「良い社会」を実現しようとするのが「政治」であると考えることにします。


3. まとめ
#1では連載を始めるにあたって、「良い社会」と「政治」、「強い組織」と「経営」の議論をしてきました。
#2では中国史より春秋戦国、秦、漢への歴史の流れにおける組織論に関する議論をしたいと思います。