日本の財政破綻問について 〜財政破綻が生じるとどうなるのか〜|マクロ経済を考える #2

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上記の記事で「フリードマン経済学への疑問」についてまとめました。ちょっと難しい話題になったかもしれないので、もっとよく聞く話題として「財政破綻問題」を取り上げたいと思います。
コロナショックに伴い、様々な財政出動(国債発行による政府支出)が行われました。最も多くの人に関連するとしたら「10万円の定額給付金」があると思います。受け取った方が大多数だったのではないかと思います。
さて、この「10万円の定額給付金」に関連して話題に挙がったのが「財源」の問題です。

・財源はどうするのか
・将来増税があるのではないか

という指摘が多くあったと思います。ですが、これは果たして本当に議論する価値がある問題なのでしょうか?
この関連でよく聞くとしたら現代貨幣理論(MMT)だと思います。が、あまりにうまい話過ぎて、本当にそれが正しいのか疑問に思う方もいるかもしれません。理論的には正しそうに見えるけれど、MMTは机上の空論のようにも言われているし、「本当なの?」というのが本音ではないでしょうか。

ということでこの記事ではMMTについてはあまり触れずにむしろ「財政破綻が生じた場合にどのようになるのだろう?」を論じてみたいと思います。
以下目次になります。
1. 財政破綻問題とは
2. 思考実験として日本を財政破綻させてみる
3. 財政というよりは主権国家の運営の問題
4. そもそも国債残高が増えるのは健全では
5. まとめ(国民が納得できるならそれで良い!)


1. 財政破綻問題とは

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財政破綻 - Wikipedia

上記がWikipediaの記載です。「政府が対外債務(国債など)の利払いや元本の返済ができなくなった場合」を指すとされています。日本では現在1,000兆ほどの国債残高があり、1人あたり1,000万円ほどであると言われることが多いです。

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財政破綻をする条件については上記のように言われています。

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また、IMFによると財政破綻によって下記が生じるとされています。

①信用事由(債務の返済の不履行等)
②例外的な公的財政支援(IMFからの多額の財政支援)
潜在的財政破綻ハイパーインフレ等)
④市場からの信認の喪失(市場からの資金 調達の困難化等)

 よく言われている「ハイパーインフレ」などが指摘されています。一般論については概ね確認できたと思いますので1節はここまでとします。

 

2. 思考実験として日本を財政破綻させてみる
1節では財政破綻問題についてWikipediaを元にある程度客観的に確認してきました。2節では確認した内容を元に、思考実験として日本を財政破綻させてみようと思います。
「あれ、でもどうやって財政破綻させれば良いんだ?」がここで疑問として出てきます。「日銀に言う事聞かせれば良いだけでは?」となります。三権分立なので、立法と司法にはさすがに手は出せませんが、「日本銀行法」に基づいて立法と司法の意見を踏まえながら対処はできるはずです。ということは、一応無限にお金の印刷はできるはずです。

ということは「日銀」に忖度させれば良いのです。簡単ですね。
ですが、何事もやり過ぎは禁物です。日本円を発行し過ぎると貨幣価値が下がり、国内ではインフレが、貿易では円安になります。この状況が1節の財政破綻における③や①などに相当してくると思います。

ですが、個人のように「返せないからお金を集めなくてはならない」という発想にはならないというのがここでの面白い点です。これが何を意味するのかは3節で考えようと思います。

 

3. 財政というよりは主権国家の運営の問題
2節の内容を踏まえると、「財政の問題というよりは主権国家の運営の問題」というのが見えてくると思います。

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主権国家体制 - Wikipedia

主権国家については上記でも言及されていますが、一般論としては国家は「主権・領土・国民」を独占的に持つくらいの認識で良いと思います。

これは何を意味するのでしょうか?要するに国家とは絶対的に存在するものというよりは、国民や外国との関係性によって成立するものであるということです。逆に言うなら、単なる数字としての「財政」以上に関係者が納得しているかという方が重要であるとも言えます。

日本の関係者を考えた際に、まず最初に日本国民と、それに加えてアメリカなどの諸外国や外国籍の人などが挙げられると思います。

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上記が日本国債に関する財務省の資料です。基本的には国内の機関などが持っているということがわかります。

と、いうことは、日本国民が国家のサービスに納得しているうちは政府の国債残高というものはあまり考える必要がないということになります。海外からのお金は10%程度しかないし、これはあくまで資産運用として持っていると考える方が妥当です。海外債務が増えた場合に主権国家の権限でやーめた、と言ったとして、誰もこれを裁くことはできないからです。歴史を振り返るに国際社会においてはこの時戦争が起きやすいですが、こういうリスクを踏まえた上で海外の国家の国債を買うのは割に合いません。ということは日本に住まない人間がわざわざ無理に日本国債を買うのはコスパが良くないのでせいぜい2割ほどで収まるでしょう。

また、日本国民としては国債の残高よりも公共サービスの方が気になるところです。これはどこの国でも基本的にそうであるので、わざわざ他国に戦争を吹っかけてまで他国の資産を取ろうとするのは合理的ではありません。国民国家(Nation State)が現在の国家の基本になっていることが多いのでそれを壊すメリットはあまりないのです。

外国との関係性に詳しくは国際政治などの話題になるのでここでは言及を避け、以降は日本国民と日本政府の関係性について論じていきます。


4. そもそも国債残高が増えるのは健全では
3節で財政というより、主権国家における運営の問題であるとしました。4節では、これを受けて考えるなら国債残高が増えるのは当然ではという話ができればと思います。

まず、日本は戦後大きな経済成長を経験しました。経済成長したということは世の中に物やサービスがたくさんあるということです。その媒介として通貨が多く必要となるというのは当然ではないでしょうか。

また、上記の記事にあるように1980年代から少しずつ導入されているフリードマン的な経済学は貨幣の量をコントロールすることで景気を制御するというものです。これは世の中に物やサービスが増えれば増えるほど、通貨が必要であるということです。

貯金が多いというのもよく挙げられますが、これについては緩やかなインフレ税が生じるようにすればそれほど問題にはならないはずです。


5. まとめ(国民が納得できるならそれで良い!)
色々と言及してきましたが、結局は国民が納得する使い道であれば国債残高が増えるのは問題ないと思います。財政破綻によって生じる問題をよりわかりやすい二択にするなら、

・預金が半分になるのと他の国に移住するのだとどちらが良いか

の二択を迫られたとして、どちらを選ぶのかということです。「半分になるくらいなら出て行こう」と考える場合もあるかもしれませんが、逆にいうなら「半分になったところで高々半分だし、わざわざ移住しようとは思わない」という国にすれば良いのではないでしょうか。
これを踏まえた上で、今後の国家財政について考えていくと良いのでは思います。

目先の国債残高という「数字」を追うのではなく、「財産の半分が取られたとして納得のいく公共サービスとは何か」を考える方が有意義なのではないでしょうか。