Ch_1 競争 ー 正しい考え方|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #2

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本の選定などの経緯は#1にまとめました。

#1では「はじめに」で記述されていた、本の概要についてまとめました。#2では第1章の内容として「競争 ー 正しい考え方」についてまとめていきます。
以下、目次になります。
1. 冒頭部
2. なぜ最高を目指すべきでないのか?
3. 独自性を目指す競争
4. 感想・まとめ



1. 冒頭部(簡単な要約)
GEのジャック・ウェルチが述べたような「GEの戦略は全ての事業で一位か二位になることだ」などはポーターのいう「戦略」の基準を満たさない。ポーターのいう「戦略」とは、好業績を持続的にもたらす優れた競争戦略のことであるとされている。戦略は競争にさらされた企業がいかにして卓越した業績をあげるかについての方法を説明する。この定義は単純そうだがそうではない。
経営陣は競争の本質と仕組みを誤解しがちであるため、競争をどのように捉えるかでどのような競争方法を選択するかが決まることに注意しなければならない。競争を正しく理解することで、あり得る選択肢を批判的に分析できるようになるため、戦略について考える前にまず競争と競争優位という問題に取り組む必要がある。

 

2. なぜ最高を目指すべきでないのか?(簡単な要約)
マイケル・ポーターの名付ける「最高を目指す競争」に対し、ポーター自身は競争に対する全く誤った考え方であるとしている。ビジネスではライバルを壊滅させずとも勝利を得ることができるのにも関わらず、戦争のように勝つのがどちらか一方であるような敵を無力化し破壊するようなやり方をしてしまいがちである。
ビジネスでは複数の勝者が反映、共存することができ、このような競争においては競合他者を破壊することではなく、顧客のニーズを満たすことに焦点を置くと良い。ビジネスの競争はスポーツと違い、戦いの形式はより複雑で自由で多面的である。そのため、同じ業界内でも、対象とする顧客やニーズごとに、一つではなく複数の競争が繰り広げられる。

・たいていの事業には「最高」なるものは存在しない。
一例として空港の待合エリアの座席のようなごく一般的な製品について考えたときでさえも、空港によってニーズが異なり「最高の」空港の座席が存在しないことがわかる。経済を構成する全ての業界を考えてみても、ほとんどの業界が異なるニーズを持つ、実に多様な顧客を抱えている。ある顧客にとって最高のカスタマーサービスが他の人にとって最高とは限らない。
生産や物流、マーケティングといった機能を実行する方法についてもこれといった最善の方法はない。
そんなわけで、最高を目指す競争の第一の問題点は、組織が最高を目指すことで自らに不可能な目標を課してしまうことである。このようにして最高を目指す競争は、誰も勝てない破壊的なゼロサム競争と化す。製品・サービスの同質化が進み、誰かの利益は他の誰かの損失になる。勝利が誰かの敗北によって成り立つものとなってしまう。

・全ての競合企業が「唯一最善の」方法で競争すれば、衝突コースをまっしぐらに進むことになる。
全ての競合企業が同じ視点での「唯一最善」で競争してしまうと、全ての企業が同じ顧客を追いかけることで必ず競争が生じてしまう。ポーターはこれを『競争の収斂』と呼んでいる。航空会社や家電事業、PC業界などの多くのビジネスにおいてこれが生じている。注目すべき例外はアップルで、アップルはPC業界の大手企業としては珍しく、一貫して独自路線を歩んでいる。
このような『競争の収斂』による価格圧力が業界の収益性を破壊するときには、合併を通じて競争を制限することで事態を打開できる場合が多い。

・「最高のもの」は顧客のためになるのではないのか?
一見価格の低下は顧客にとって良いことのように思われる。が、企業が最高を目指して競争するとき、価格は低下するものの選択肢が減少するかもしれず、それによって結局顧客にとってのメリットが損なわれるかもしれない。業界が標準的な製品・サービスに向かって同質化すれば、「平均的」な顧客は恩恵にあずかるが、要求の多い顧客と少ない顧客のニーズを満たすことができない。
選択肢が限られるとき、価格が破壊されることが多い。が、このとき顧客は欲しくもない余計なものに費用を払わされているか、本当に必要なものではないので、企業が提供するもので仕方なく間に合わせているかのどちらかになってしまう。

 

3. 独自性を目指す競争(簡単な要約)
ポーターのいう戦略的競争とは、他社と異なる道筋を選ぶことをいう。企業は最高を目指して競争する代わりに、独自性を目指して競争することができるし、そうすべきである。この競争では価値が全てで、生み出す価値の独自性と、それを生み出す方法がものをいう。

・戦略的競争とは、他社と異なる道筋を選ぶことをいう
独自性を目指す競争は、競争の本質に関する異なる見方を反映している。ライバル企業を完璧に模倣することではなく、自らが選んだ顧客のために一層大きな価値を生み出すことに焦点をおいている。顧客には多くの選択肢が開かれるため、価格は競争の一変数でしか無くなる。
独自性を目指す競争が戦争と違うのが、ある一社が勝つために競合他社が負ける必要がない点などもある。戦争やスポーツというよりも舞台芸術に近く、一人一人が独自の方法で注目を集めることで、それぞれが観客を獲得し、新しい顧客を生み出す。優れたパフォーマーが増えれば増えるほど観客層は厚みを増し、芸術が栄え、プラスサムの競争となる。現実の競争には数多くの次元があり、戦略とは一つだけではなく様々な次元での選択に関わることである。
なぜ一部の企業が他よりも収益性が高いかについては二つの部分があり、詳細はそれぞれ第2章と第3章で取り扱うが、第一に「企業は業界構造によって恩恵を受けることも痛手を受けることもあること」、第二に「企業が業界内で占める相対的なポジショニングは企業間の違いをもたらすさらに大きな要因であること」がある。


4. 感想・まとめ
#2で取り扱った競争については、戦争やスポーツのような同一の価値基準における勝利を目指すと、うまくいかないので独自性での競争をすべきだというのがありました。いわゆるニッチャー戦略の話であり、アップルが具体例として挙がっていたのが非常に興味深かったです。
概ね直感的には理解していた内容でしたが、違った視点から眺めることで多角的に見えて良かったと思います。
続く#3では第2章の五つの競争要因について取り扱います。