実戦とコントロール、情報と情報分析、イノベーション、無形資産|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #10

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#9では目標と目的(Goals and Objectives)、成長戦略(Growth Strategies)、保証(Guarantees)、イメージと感情のマーケティング(Image and Emotional Marketing)について取り扱いました。

#10では実戦とコントロール(Implementation and Control)、情報と情報分析(Information and Analytics)、イノベーション(Innovation)、無形資産(Intangible Assets)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 実戦とコントロール(Implementation and Control)
2. 情報と情報分析(Information and Analytics)
3. イノベーション(Innovation)
4. 無形資産(Intangible Assets)
5. 感想・まとめ

 

1. 実戦とコントロール_Implementation and Control(簡単な要約)
戦略と実践はどちらがより重要かという問題は常に議論されてきたが、成功のためには戦略と実践の両方が必要である。
計画をきちんと実践するためには、実際に業務を担当する人々の賛同を得ておく必要がある。賛同を得る上で最も効果的な方法は計画立案の段階から関係者を参画させることである。したがってプランナーがまずすべきことは、計画を外部に売り込むことではなく、内部に売り込むことである。
また、コントロールとは、実践や戦略の不具合を発見するための方法である。コントロールは、単独のツールを用いて行われるものではなく、様々なツールを組み合わせて、企業活動が順調に推移しているかどうかを確認するものである。下記に4種類のコントロールをまとめる。

1) 年間計画コントロール
-> 計画通りの成果が出ているか否かの検証を行うにあたって、売り上げ分析、市場シェア分析、財務分析などを行う。

2) 収益性コントロール
-> 収益を上げている分野と損失を出している分野の検証を行うにあたって、製品ごとの収益性、地域ごとの収益性、顧客・セグメントごとの収益性などの分析を行う。

3) 効率性コントロール
-> マーケティング費用の効率性ならびに効果の評価や改善を行うにあたって、広告の効率性、販売促進の効率性、流通の効率性の分析を行う。

4) 戦略コントロール
-> 市場・製品・チャネルに関して企業が最善の機会を追求しているか否かの検証を行うにあたって、マーケティング効果の評価・再検討、企業の倫理的責任・社会的責任の再検討を行う。

計画、実践、コントロールという一連の流れは、フィードフォワード/フィードバック・システムとして有効に機能するようになる。


2. 情報と情報分析_Information and Analytics(簡単な要約)
膨大な情報を有していながら、有効に活用できていない企業が多い。企業の持つ情報を用意に検索でき学習可能な形に組織化すること、すなわちナレッジ・マネジメントが爆発的な関心を集めているのもこうした事情があるからである。合併や買収の結果誕生した企業はシステムの互換性の問題に直面する。
マーケティングの基盤は力任せの販売力から情報へと変化しつつある。コンピュータやインターネットの普及によって、販売員が「見込み客の業種、会社、問題、可能性について何も知らなかった」とは言えない時代になった。セールス・オートメーション・ソフトウェアを使えば、販売員が見込み客や顧客1人ひとりのニーズ、興味、意見、最近の関心ごとなどを記録することができる。
セールス・オートメーション・ソフトウェア以外に必要となるのはマーケターの効率と効果を高めるマーケティング・オートメーション・ソフトウェアである。具体的にはリアルタイム在庫管理システムやリアルタイム販売システムなどを挙げることができる。
戦争であろうとビジネスであろうと勝利はより良い情報を握った側が手にする。「競合他社よりもスピーディに学習する能力ー競争上の武器として長く使えるものはおそらくこれしかない」とアリー・デ・グースの言葉などにある。
一方で、全ての事実が出揃う前に、管理者が意思決定を下さなければならないケースも多い。決断を先延ばしにすると、機会を失うことにもなりかねない。


3. イノベーション_Innovation(簡単な要約)
企業はイノベーション(革新)を起こさなければ生き残ることはできない。イノベーションの成功率は消費者向けパッケージ商品で20%、B2B製品の成功率はおよそ40%であるが、イノベーションに賭ける方が何もしないよりは安全である。ここで重要なのは競合他社よりも優れたイノベーション管理を行うことである。
イノベーションのプロセスは、アイデア創出、アイデア・スクリーニング、コンセプト開発とテスト、事業分析、試作品開発、テストマーケティング、商品化といった一連のプロセスからなっており、全体を注意深く管理しなければならない。イノベーションを成功させるためには、企業内にアイデア市場、資本市場、才能市場の三つの市場を作る必要がある。また、イノベーションは新製品や新サービスの開発に限った話ではない。新規事業や新たなビジネス・プロセスを考案することもイノベーションであることにも注意が必要である。
緩やかな改善を目指す企業は通常狙い通りの成果をあげることができるが、一方でイノベーションを喚起する秘訣は、途方もない改善を要求することである。10%のコスト削減ではなく、50%のコスト削減を要求したり、生産性の10%向上ではなく10倍にすることを求めたりすることである。こうすることにより、全員が現在の業務を徹底的に見直し、より良い業務遂行方法を模索せざるを得なくなる。


4. 無形資産_Intangible Assets(簡単な要約)
企業価値の80%を担うのは当該企業の無形資産だと言っても過言ではない。ところがこれらの無形資産は帳簿上に表れてこない。工場、設備、在庫、運転資本などの評価額は企業の真の価値をほとんど反映していない。一例を挙げるなら、コカ・コーラのブランド価値は同社のバランスシートには記載されていないが、700億ドル相当だと言われている。ブランド価値と同様に、顧客ベースの価値、社員の価値、パートナーの価値、ナレッジや知的資本の価値などは企業の主要資産となりうる。
企業の株式時価総額と簿価がしばしば大きくかけ離れているのもなんら驚くべきではない。両者の格差は無形資産の価値を反映している。企業としてはブランド、顧客とのリレーションシップ、社員とのリレーションシップ、チャネルとのリレーションシップなどマーケティング資産を特定し、その価値を評価する作業に取り掛かることが賢明な選択と言える。


5. 感想・まとめ
#10では実戦とコントロール(Implementation and Control)、情報と情報分析(Information and Analytics)、イノベーション(Innovation)、無形資産(Intangible Assets)について取り扱いました。実践とコントロールにおける4つのコントロールの考え方が視点として参考になりました。また無形資産の考え方は直感的に捉えていたので、言語化されており非常に参考になりました。
イノベーションについてはドラッカーイノベーションと企業家精神を読んでいたので、そちらの方が詳しくて良い論述だという印象でした。紙面の都合上この辺は仕方がないのだと思います。
#11では国際マーケティング以降を取り扱っていきます。