Ch_3 競争優位 ー バリューチェーンと損益計算書_後編|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #6

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本の選定などの経緯は#1にまとめました。

#1では「はじめに」で記述されていた、本の概要について、#2では第1章の内容として「競争 ー 正しい考え方」についてまとめました。

#3、#4では第2章の内容として「五つの競争要因 ー 利益をめぐる競争」についてまとめました。

#5、#6では第3章の内容として「競争優位 ー バリューチェーン損益計算書_前編」を取り扱います。
#5では冒頭部〜経済の基本原理について取り扱いました。

#6では「バリューチェーン」〜「競争優位を実現するにはどうすれば良いか?」をまとめていければと思います。
以下、目次になります。
1. バリューチェーン
2. 戦略への洞察: ポーターの輝かしき新世界
3. 競争優位を実現するにはどうすればよいか?
4. 感想・まとめ

 

1. バリューチェーン
競争優位の簡潔な定義としては#5でまとめた様に、「持続的な高価格か低コスト、またはその両方によってもたらされた卓越した業績」だと考えることができる。だが経営者にとって定義だけでは不十分で、さらに経営者の手でコントロール可能な競争の源泉を突き止めねばならない。これらについて知るにあたっては、競合企業間のコストや価格の違いに影響する企業の無数の活動について分析する必要がある。ここで活動とは様々な経済的機能やプロセスのことである。
経営者はマーケティングや物流といった職能の観点から物事を考える傾向にある。だが、競争優位を理解するには、活動に焦点を絞る必要がある。活動は従来型の職能より範囲が狭い。
価格やコストに影響を及ぼすために経営者として何ができるかを明確に考えるには、活動のレベルまで掘り下げ、「自社の得意なことを、自社の行う特定の活動に具現化する必要がある。


・企業が製品を設計、生産、販売、配送、サポートするために遂行する活動の集合は、バリューチェーンと呼ばれる。
バリューチェーンはより大きなバリューシステムの一部である。バリューシステムはエンドユーザーのための価値創造に関わる、より大きな活動の集合をいい、活動の主体は当該企業だけではない。バリューシステムの垂直統合の度合いに関する選択は、突き詰めればあらゆる企業が下している、「バリューシステムのどこに位置を定めるか」に関する選択である。
バリューチェーンが重要な理由は、バリューチェーンは企業を戦略的に意味のある活動に分解する強力なツールだからである。バリューチェーンを用いて考えることで、企業は自らの競争優位の源泉、つまり価格の引き上げまたはコストの低下をもたらす特定の活動に焦点をあてることができる。


バリューチェーン分析の主要なステップ
バリューチェーンについて知るには実際に使ってみるのが一番なので、以下使い方をまとめる。

1. 業界において標準のバリューチェーンを洗い出す
確立した業界には、業界内の大半の企業が行う活動の範囲と順序を表す支配的な手法が必ず一つ以上ある。業界のバリューチェーンとは、要は業界の一般的なビジネスモデル、価値を生み出す方法である。
この際に重要なのは、業界固有のす様な価値創造活動を洗い出すことである。複数のビジネスモデルが存在するときは、それぞれの一般的なバリューチェーンを明らかにしてから競合企業ごとの違いを調べる。

2. 自社と業界のバリューチェーンを比較する
自社のバリューチェーンを作成し、業界のバリューチェーンや同業他社と比べてみる。この際に自社のバリューチェーンが同業他社と区別がつかない場合、最高を目指す競争に終始していることになってしまう。

3. 価格ドライバー、つまり差別化の鍵を現在または将来握る活動に注目する。
自社は競合他社と同じ活動を異なるやり方で行うか、異なる活動を行うことによって、顧客のために優れた価値を創造しているかどうかを確認する必要がある。買い手価値はバリューチェーンのあらゆる部分から生まれる。
顧客が法人であれ、一般消費者であれ、自社の活動がバリューシステム全体の中で果たす役割を分析することが、買い手価値を理解する鍵になる。

4. コストドライバー、つまりコストに占める割合が高いか、高まっている活動に注目する。
自社の相対的なコストポジション(RCP; Relatve Cost Position)はバリューチェーンないの一つ一つの活動を実行するコストによって構成される。自社と競合他社のコスト構造には実質的または潜在的な違いがあるのかについて確認すると良い。
このコストには、直接の事業コストや資産コストだけでなく、活動を行うことで生じる間接コストも含まれる。
それぞれの活動がコスト優位にあるか劣位にあるかは、コストドライバー、つまり相対的コストに影響を及ぼす一連の要因によって決まる。 


2. 戦略への洞察: ポーターの輝かしき新世界
バリューチェーンはポーターが『競争優位の戦略』の中で初めて詳しく説明した概念であるが、この概念は経営者の世界観を変えたといっても過言ではない。以下にバリューチェーンに与えたインパクトについて二点まとめる。

 1. 一つ一つの活動を単なるコストとしてではなく、最終製品・サービスに何らかの価値を加えるべき段階として捉える様になること。
2.自社の組織のと活動の向こうに目を向け、自社が他の企業を含むより大きなバリューシステムの一部だという認識を持つ様になること。

 
3. 競争優位を実現するにはどうすればよいか?
競争優位とは、企業が実行する活動の違いから生じる、相対的価格または相対的コストの違いをいい、競争優位は企業の活動から生じる。
活動の違いには二種類の形態があり、「1.他社と同じ組み合わせの活動を他社より優れて実行しているか」と、「2.他社と異なる活動の組み合わせを選択しているか」である。1は最高を目指す戦略であり、ベストプラクティスなどと呼ばれるものである。
ここで重要なのは、ベストプラクティスと戦略を混同しないことである。業務効果を高めるだけでは堅牢な競争優位は得られない。「ベストプラクティス」の優位が持続することは少ないからである。競合他社に模倣されやすい。この種の模倣合戦は過当競争と呼ばれることもある。
したがって2の他社と異なる活動の組み合わせに着目しなくてはならない。


4. 感想・まとめ
#6では第3章の後半についてみてきました。バリューチェーンについては使いこなせると良さそうなので、実際に何度か使ってみれればと思いました。
#7では第4章について取り扱っていきます。