販売、サービス、スポンサーシップ、戦略|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #19

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#18では小売業者とベンダー(Retailers and Vendors)、セールス・フォース(Sales Force)、販売促進(Sales Promotion)、市場細分化(Segmentation)について取り扱いました。
https://lib-arts.hatenablog.com/entry/kotler_marketing18
#19では販売(Selling)、サービス(Service)、スポンサーシップ(Sponsorship)、戦略(Strategy)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 販売(Selling)
2. サービス(Service)
3. スポンサーシップ(Sponsorship)
4. 戦略(Strategy)
5. 感想・まとめ

 

1. 販売_Selling(簡単な要約)
小説家のロバート・ルイス・スティーブンソン(Robert Louis Stevenson)が書いている言葉に、「人はみな何かを売って生きている」というのがある。人間が売っているのは製品、サービス、場所、アイデア、情報、自分自身のいずれかである。販売には様々なイメージがつきまとっている。
中には天才的な販売員もおり、イヌイットに冷蔵庫、ハワイ人に毛皮のコート、アラブ人に砂を売り利益を出した上にその後安値で買い戻す。優秀な販売員は2つの耳と1つの口を持って生まれてきた意味を忘れず、自分が話す分の2倍相手の話を聞くように常に心がけている。
販売員として成功したいのであれば、最初に売り込むべき相手はまず自分自身であることを理解しなければならない。まずなすべきことは自分の内なる購買者と渡りをつけることで、「モノを売るのではなく、顧客の発展を支援する」をモットーとして掲げるべきである。今新たに求められているのは、顧客の金儲けや節約を支援することを通じて、「価値を創造する」ことのできる販売員である。説得型の販売からコンサルティング型の販売への切り替えが必要となってきている。


2. サービス_Service(簡単な要約)
コモディティ化する製品がますます増えつつある今日、サービスの質は他社との差別化を図り、卓越性を示す上で最も有力な応訴と言える。優れたサービスを提供することは、顧客志向を実践する際の核心をなすものである。サービスのために計画された事業は成功する確率が高く、利益のために計画された事業は失敗する確率が高い。
1日自社の顧客になることでサービスの質をチェックすることができる。顧客になりすまして電話を入れ、社員に何か質問を行い、自社の製品を購入してみる。この際に社員が笑顔を見せているかどうかも重要なチェック項目である。


3. スポンサーシップ_Sponsorship(簡単な要約)
企業は様々な団体から、イベントや活動、社会運動のスポンサーになって欲しいという依頼をたえず受けている。同時に企業は社名を一般の人々にアピールできる場所を積極的に探している。企業は相当な金額を支払ってでも、ビル、大学の校舎、競技場といった物的施設に社名を掲げ、たえず人々の目に触れさせようとする。
企業は有意義な主義主張を掲げた社会運動のスポンサーとなることもある。多くの人々が正しいと信じる主義主張を後押しするこの種の企業活動は、コーズリレーテッドと呼ばれ、企業の名声、ブランド認知、顧客ロイヤルティ、売上などの強化・向上、さらにはマスコミによる好意的な報道などが期待できる。
スポンサーシップ関連の支出は費用にもなるし、投資にもなる。売上や企業資産の増加に寄与しなかった場合は費用となる。スポンサーシップを投資に変えたいのであれば、何のスポンサーになるかを慎重に判断する必要がある。スポンサーになるかどうかを検討する際には、それが自社の標的市場や製品・サービスにふさわしく、それらと関連性を有するかどうかを確認すべきである。スポンサーとなるにあたり、何を達成したいかを必ず明確にしておかねばならない。投入した資金が人々の意識やイメージ、顧客ロイヤルティに肯定的に作用し、なんらかの形で売上増に結びつくこともあるため、売上がどれだけ伸びればコストを正当化できるのかを自問しておく必要がある。


4. 戦略_Strategy(簡単な要約)
戦略は特徴的で首尾一貫した価値提案を組み上げ、標的市場に送り届ける際に用いる接着剤のようなものである。「競合他社に対して独自の優位性を持たない企業は存在する理由がない」と警告されたりなどもしている。自社の戦略が競合他社と同じものだとしたら、戦略を持っていないことになる。
ハーバード大学マイケル・ポーター(Michael Porter)はオペレーションの卓越性と戦略的ポジショニングを明確に区別している。企業が本当に必要としているのは、他者と違うレースを走ることである。特定の顧客グループや特定のニーズを標的とし、独特のベネフィットを提供している企業は、戦略を持っていると言える。
企業は以下の三つの条件を満たした時、独自の戦略を持ったと言える。

1) 標的市場と標的ニーズを定義した(価値標的; Value Target)
2) 当該市場に向けた、明確な特徴を持つ魅力的な価値提案を策定した(価値提案; Value Proposition)
3) 価値提案の内容を標的市場に提供するために、独自の供給ネットワークを整備した(価値ネットワーク; Value Network)

独自の戦略を打ち立てた企業は、コスト削減や値上げ、あるいはその両方を同時に実現することができる。競合他社が次第に似通い、価格競争を余儀なくされていくのに対し、戦略的ポジショニングを確立した企業は独自路線を歩み、流血戦を回避していくのである。
戦略を策定するにあたって最も有効なルールは、標的市場が何を好み、何を欲しがっているかを調べること、そして標的市場が何を嫌い、何を不要だと考えているかを調べることである。
「戦略は象牙の塔の無菌室の中ではなく、市場という泥土の中から芽生えて来なければならない」。戦略は特徴、デザイン、品質、サービス、コストを統合した独自性のあるものでなければならない。競合他社が長い年月と莫大なコストを投じなければ反撃できないような、優位性の高い市場ポジションを確保できなければ他社のうらやむ戦略を立てられたことになる。


5. 感想・まとめ
#19では販売(Selling)、サービス(Service)、スポンサーシップ(Sponsorship)、戦略(Strategy)について取り扱いました。興味深かったのは戦略に関してです。この辺はポーターの競争戦略などでも取り扱われており、改めて確認すると興味深い内容でした。また、スポンサーシップの記述はこれまであまり意識したことのない点だったので、こちらも非常に参考になりました。
#20では「成功と失敗」以降について取り扱って行きます。