パブリック・リレーションズ、品質、景気後退期のマーケティング、リレーションシップ・マーケティング|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #17

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#16ではポジショニング(Positioning)、価格(Price)、製品(Products)、利益(Profits)について取り扱いました。

#17ではパブリック・リレーションズ(Public Relations)、品質(Quality)、景気後退期のマーケティング(Recession Marketing)、リレーションシップ・マーケティング(Relationship Marketing)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. パブリック・リレーションズ(Public Relations)
2. 品質(Quality)
3. 景気後退期のマーケティング(Recession Marketing)
4. リレーションシップ・マーケティング(Relationship Marketing)
5. 感想・まとめ

 

1. パブリック・リレーションズ_Public Relations(簡単な要約)
企業は広告費からパブリック・リレーションズ(PR)費用により多くの資金を振り向ける方が良いと思われる。広告はかつてほどに効果を発揮できなくなってきており、視聴者の細分化が進んでいることから大量の視聴者にメッセージを到達させるには困難になってきた。
企業は広告に支出し過ぎる一方で、PRには十分な資金を投じていない。その理由は、PR会社の9割が広告会社の傘下にあるためである。広告会社の収入源はPRではなく広告である。それに加えて広告キャンペーンはPRよりもはるかにコントロールしやすいという利点を備えている。
一方でPRは代金を支払う対象(pay for)というよりは、祈りの対象(pray for)といった方が良い。PRを通じて新たなブランドを確率するには長い時間と高い創造性を要求されるが、最終的には「ビッグバン並み」の広告よりも高い効果をあげることができる。PRには世間の注目を集め「価値ある話題」を創造するためのツールが数多く用意されているが、これらをPRのPENCILSと呼び、下記にまとめる。

・出版(Publications)
・イベント(Events)
・ニュース(News)
・地域活動(Community affairs)
アイデンティティ媒体(Identity media)
・ロビー活動(Lobbying)
・社会貢献投資(Social investments)

製品について人から伝え聞く話は、広告よりもはるかに強い影響力を持つ。PRキャンペーンはコストがはるかに安く、成功すれば長く語り継がれるような話題を生む可能性もある。


2. 品質_Quality(簡単な要約)
品質の良し悪しに責任を持つのは誰であろうか。マネジメント側は労働者の責任というが、実は労働者には責任はない。品質マネジメントの大家のW・エドワーズ・デミング(W. Edwards Deming)は「品質問題の85%は、マネジメントに責任がある」と明言している。
また、品質はどのくらいのレベルに上げる必要があるのだろうか。この答えとしては適正な品質のレベルは顧客と製品によって決まる。「顧客が我々の品質水準を決定する。我々の務めは、その水準を満たすものである。(ブレンダン・パワー; Brendon Power)」、「品質は企業がサービスや製品の中に埋め込むものではない。それはクライアントや顧客がサービスや製品から取り出すものである(ピーター・ドラッカー; Peter Drucker)」のように、多くの関連する論述がある。

 

3. 景気後退期のマーケティング_Recession Marketing(簡単な要約)
景気が後退すると、ほとんどの企業が出費を切りつめようとする。最大の標的となるのは広告費である。経営トップは予想される収益の一部をマーケティング予算に充てるというやり方を取っているため、収益予想が下がると、マーケティング予算を削って当然だと考える。だが、収益予想に基づいてマーケティング予算を組むというのは非論理的な話で、原因と結果が逆であり注意が必要である。根本的な問題は、企業が好況時に無駄な贅肉をたっぷりとつけてしまうことで、本来は倹約する必要がある。
景気後退期に入ると、性急にコスト削減策を打ち出す企業が多いが、どんな対策を打ち出したとして以下の2つのルールだけは守らなくてはならない。

1) 顧客に対する価値提案を損なってはならない
-> 顧客は購入にあたって、製品の品質やサービスになんらかの期待を抱いているので、彼らが期待している経験の質を落としてはならない。

2) パートナーに対する価値提案を損なってはならない
-> 事前の相談なしに供給業者やディーラーにコスト負担を押しつけてはならない。

景気後退期においては、一時的な値下げに踏み切ることも検討してみると良い。もちろんそうなると粗利益は減少するが、みすみす競合他社に乗り換えられるくらいなら値下げしてでも顧客を自社に引き止めておいたほうが良い。抜け目のない企業の中には、予算を削減した競合他社から市場シェアを奪おうと、コスト削減策を取るどころか予算を維持・増強するところもある。さらに賢明な企業になると、景気後退期のみならず、常日頃からコスト意識の強い風土づくりを目指している。


4. リレーションシップ・マーケティング_Relationship Marketing(簡単な要約)
企業にとって最も高い価値を持つのは、顧客、社員、供給業者、流通業者、ディーラー、小売業者とのリレーションシップである。企業のリレーションシップ資本とは、顧客、社員、供給業者、流通業者と行ったパートナーとともに築き上げた知識、経験、信頼の蓄積のことである。こうしたリレーションシップの価値は、企業の物的資産の価値を上回ることも多い。
リレーションシップに関する失策は全ての企業の業績に悪影響を及ぼす。企業はリレーションシップ・スコアカードを準備し、リレーションシップに関する強み、弱み、機会、脅威を把握しておく必要がある。重要なリレーションシップが弱まりつつあるとわかったら、即刻行動を起こし、関係を修復しなければならない。
リレーションシップ・マーケティング(Relationship Marketing)は、マーケティングの世界に一大パラダイム・シフトをもたらした。それはもっぱら競争と対立を中心にすえた考え方から、相互依存と協力を基盤とする考え方へのシフトとなった。これによって、標的顧客に最高の価値を提供するには、様々な関係者(供給業者、社員、流通業者、ディーラー、小売業者)の協力が欠かせないという認識が生まれた。
リレーションシップ・マーケティングの主な特徴は以下の通りである。

・自社製品よりも、パートナーや顧客に焦点を合わせる。
・顧客を獲得することよりも、顧客を維持し、育成していくことを重視する。
・部署単位の活動よりも、部門横断型チームによる活動が求められる。
・話すことよりも聴くことと学ぶことを重視する。


5. 感想・まとめ
#17ではパブリック・リレーションズ(Public Relations)、品質(Quality)、景気後退期のマーケティング(Recession Marketing)、リレーションシップ・マーケティング(Relationship Marketing)について取り扱いました。興味深かったのはPublic RelationsとRelationship Marketingです。Public Relationsについては広告が重視されがちのところで、その理由やPRの重要性について論述されており、非常に興味深い内容でした。Relationship Marketingに関しては企業が単体で生み出す成果だけではなく、その他諸々との関係性をもって価値の分析を行うというものでこちらも非常に興味深い内容でした。
#18では小売業者とベンダーについて取り扱います。