序文、Introductionまとめ|『キッシンジャー超交渉術』読解メモ #1

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ミンツバーグの次の課題本として、「キッシンジャー超交渉術」を設定したので読み進めていきます。

日経BP SHOP|キッシンジャー超交渉術

キッシンジャーアメリカの外交官・政治学者であり、ニクソン大統領とフォード大統領の政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官国務長官を兼任しており、2014年の多くの学者のアンケートにより過去50年間で最も有能な国務長官とされています。この本ではキッシンジャーの業績というよりも交渉術に着目し、交渉術についてまとめられています。
#1では序文とIntroductionのまとめを行えればと思います。(国際政治ではなく、交渉術が本書のテーマのため、極力交渉術を中心にまとめていきます。)
以下、目次になります。
以下、目次になります。
1. 序文(by Kissinger)
2. 序文(by Authors)
3. イントロダクション:最高の交渉者、キッシンジャー
4. 感想・まとめ


1. 序文_by Kissinger(簡単な要約)
国政の技術の中でも戦略的交渉は極めて重要である。わたしは職務を通じて数多くの交渉を行い、戦略的交渉について多くの意見を述べてきた。実際、様々な問題について最善の戦略や方法を見出すべく、数多くの交渉に関わってきた。しかし、それらについて入念に見直したことはなかった。
本書が追求するのは、より焦点を絞った問いだ。それは複雑で高いレベルの交渉において、どのような分析や行動が成功(あるいは失敗)につながるかという問いである。本書の著者陣との対話を通して、出来事の数々を交渉というレンズを通して見ることで新たな理解が得られた。本書の著者陣は複雑な交渉から有益な洞察を引き出すという偉業を成し遂げた。
わたしが愕然とさせられるのは経験豊かなはずの公人や経営者が極めて重要な交渉で、得てして場当たり的なアプローチを取りがちだということだ。例えば裁判で自らの本来の利益や目的とはかけ離れた戦略や戦術で法廷に臨み敗訴する人がいる。また、面と向かって交渉すれば成立すると楽観して相手を交渉の席に着かせることに多大なエネルギーを注ぐケースもあるが、実際には交渉の前に自分にとって有利になるように状況を固めておくことの方がよほど重要である。
本書の意義は私自身在職中からいまに至るまでそれほど意識していなかった行動原理と実践の真髄を、明らかにしたことにある。複雑な交渉問題に直面しているCEO、外交官、交渉者にとって本書は極めて有益な情報をもたらすだろう。


2. 序文_by Authors(簡単な要約)
世界で最も優れた交渉者は誰か、こう尋ねられると私たちは必ずヘンリー・キッシンジャーの名前を挙げる。キッシンジャーの経歴を詳しく知らない人でも、偉大な交渉者についての会話ではこのかつての国務長官についてしばしば語ろうとする。
2014年に国際関係学を教えている1375大学の1615人の学者を対象としてアンケートを行ったところ、その大半がヘンリー・キッシンジャーを過去50年間で最も有能な国務長官と見なしていることがわかった。回答者をリベラル、中道、保守、あるいは男性・女性に分けてみてもその評価は変わらなかった。
一方で、キッシンジャーの交渉はこれまで数多くが本人や評論家に記録されてはきたものの、これまで総合的に考察されたことはなかった。本書はキッシンジャーの重要な交渉を総覧し、共通する特徴を見つけ出すことによって、キッシンジャーの交渉アプローチとその背後にあるロジック、戦略、戦術を批判精神を忘れずに探求することを目的にしている。私たちの目的はそれが国家間、国内、あるいは公的、私的に関わらず、現代の紛争や交渉上の難題を理解し、取り組むための洞察を生み出すことである。キッシンジャーがまとめたいくつかの交渉については多くの研究があるが、キッシンジャーの交渉術という横串のテーマについての研究はこれまでなかったため、本書の意義はそういった点にあると思われる。
とはいえ本質的な意味で交渉技術には目的から切り離すことはできない。したがって、キッシンジャーの交渉を研究するにあたっては、当時の交渉において重視されていた三つの目的をあらかじめ踏まえておきたい。

1) 核戦争という悲惨な災いを防ぐこと
2) ソ連の拡大を抑え、冷戦におけるアメリカの優位を保つこと
3) 中国、ソ連アメリカの間でより安定した「平和構造」を築くこと

とはいえ、本書では歴史上の出来事に関する記述では正確さを重視しているものの、主たる目的は交渉の効果を高めるのに役立つ方法を見つけることである。従って、歴史的記録の間違いを正すことや政治的論争に終止符を打つことを一切目的としていないことに注意されたい。(読解メモをまとめるにあたっても、可能な限り交渉術にフォーカスして話を進めたいと思います)


3. イントロダクション:最高の交渉者、キッシンジャー(簡単な要約)
ジョン・F・ケネディ以降のアメリカ大統領の誰もが、ヘンリー・キッシンジャーに助言を求めた。外交政策、国政術、世界秩序に関するキッシンジャーの洞察は多大な影響力をふるった。だが、どういうわけかこれまで交渉者としての彼の素晴らしい業績が包括的に分析されたことはなかった。
私たちは下記の二つの目的を果たすために本書を書くこととした。

1) 「交渉者キッシンジャー」の特徴を明らかにすること
2) 現代の外交やビジネス、金融、公共政策、法律の世界において幅広く応用できる交渉の原則と技術を見出すこと

また、以下の三つの例が交渉者キッシンジャーを研究することで何が学べるかを示している。

1) 戦略的交渉とは実際に何を意味するのか、それがなぜ強力な武器になるのか
2) 幅広い戦略に目を向けるズームアウトと直面の相手の説得に力を注ぐズームインのアプローチをどう活用するか
3) 「交渉のテーブルから離れた場所での」行動の多くが、「交渉のテーブル」でのよく知られる戦術と連動して、どのように結果を飛躍的に高めるか

本書の目的はキッシンジャーの交渉アプローチがいかに正しかったか(絶対的に正しいというわけではなく、与えられた状況においていかに最善を尽くしたかという意味合いで捉えておくと良さそうです)を明確にし、それを評価し、そこから学ぶことである。
本書を通じて読者はキッシンジャーが多くの難題をどう解決したかを学び、そこから洞察を得ることで困難な交渉でも格段に良い結果を出せるようになるはずである。そうした洞察には以下のものが含まれる。

・交渉における「戦略」とは実のところ何を意味するのか
・合意の可能性を判断する現実的な方法とは
・交渉のテーブルから離れた「広い視野に立って判断すること」とゲームを変える行動が、合意のための余地を作り出しテーブルでの好ましい結果を導く
・多国間の交渉では、慎重に順位を定め、協力体制を築き、交渉の邪魔をする人間をうまく扱うことが重要である
・交渉相手を正しく理解し、その性格を見抜き、信頼関係を築く
・率直な主張と相手への共感は、生産的な方向で結びつけることができる
・状況が変わる時には、戦略上の視点を保ちつつ、臨機応変に行動する
・成功するためには素晴らしい洞察よりも不屈の粘り強さの方が総じて重要である。

交渉には多くの側面があるが、その土台にはどれほど独創的な交渉の技術を用いたとしても、最終的な成功をもたらすのは、基本的な前提の正しさ、関係者の本音の見極め、歴史、政治、経済、文化に対する深い知識だということだ。目標に欠陥があったり、状況判断が間違っていたりした場合は、いくら交渉技術を駆使しても価値ある結果を導くことはできない。キッシンジャーという偉大な交渉者について学ぶことで、私たちはビジネス、法律、政治の交渉をはるかに巧みにこなせるようになるだろう。


4. 感想・まとめ
#1では本の背景、前提になる話についてまとめました。歴史や国際政治の話題を扱っているものの、主目的は交渉術の記述にあるため、基本的に交渉術を中心に話をまとめていければと思います。交渉は戦略にもつながる考え方なので、非常に面白そうな内容の印象を受けます。
#2以降では実際に本文の内容に入っていきます。