放物線の方程式とその導出|式と曲線を把握する #2

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数学Cなどで取り扱われる「式と曲線」を中心に取り扱うシリーズです。
#1では「楕円」の方程式とその導出について取り扱いました。

#2では「放物線」の方程式とその導出について取り扱います。主に下記を参考に進めます。

高等学校数学C/式と曲線 - Wikibooks

以下当記事の目次になります。
1. 放物線の方程式とその概要
2. 放物線の方程式の導出
3. まとめ


1. 放物線の方程式とその概要
1節では「放物線」の方程式とその概要に関して確認します。まずは放物線の方程式について確認します。

x^2 = 4cy
y^2 = 4cx

上記が放物線の方程式です。ここで二次関数を表すy=ax^2は①の両辺を4cで割った\displaystyle y = \frac{1}{4c}x^2に対して、\displaystyle a = \frac{1}{4c}で置き換えることでy=ax^2を導出できます。
二次関数に関する理解より放物線のグラフのイメージはつくと思いますので、放物線の定義からの導出について確認するのが当記事の主目的となります。導出について詳しくは2節で取り扱いますが、放物線の定義は「ある直線(準線)への距離とその直線上にない点(焦点)への距離とが等しい点の集合」というのは抑えることとします。

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図にすると上記のようなイメージです。
放物線の方程式と大まかな概要についてつかめたので1節はここまでとします。


2. 放物線の方程式の導出
2節では放物線の方程式の導出について確認します。1節でも取り扱いましたが、放物線の定義は「ある直線(準線)への距離とその直線上にない点(焦点)への距離とが等しい点の集合」です。以下、焦点を(0,c)y=-cとおき、放物線の方程式x^2 = 4cyを導出します。

まず定義より下記が成立します。
\displaystyle \sqrt{x^2+(y-c)^2} = y-(-c)
\displaystyle \sqrt{x^2+(y-c)^2} = y+c
次に上記の両辺を二乗します。
\displaystyle x^2+(y-c)^2 = (y+c)^2
\displaystyle x^2+y^2+c^2-2cy = y^2+2cy+c^2
\displaystyle x^2-2cy = 2cy
\displaystyle x^2 = 4cy
上記が放物線の方程式に一致します。

xyを入れ替えて同様に考えることでy^2 = 4cxも導出できます。
1節でも確認しましたが、ここで\displaystyle a = \frac{1}{4c}が成立するので、c(>0)の値が大きくなるにつれて、xの変化に伴って急激にyが変化する放物線になることは抑えておくと良いかと思います。
ここまでで放物線の方程式が導出できたので2節はここまでとします。

 

3. まとめ
#2では楕円の方程式とその導出について確認を行いました。
#3では双曲線の方程式と導出について取り扱います。

楕円の方程式とその導出|式と曲線を把握する #1

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式と曲線の関係については二次関数などの多項式関数や三角関数など様々ですが、数学Cなどで取り扱われる楕円や放物線、双曲線などのテーマは概要を抑えてはいるもののになりがちではないかと思います。ということで、このシリーズでは数学Cなどで取り扱われる「式と曲線」について取り扱っていければと思います。
#1では「式と曲線」の中でも「二次曲線」の具体例で最初に出てくることが多い「楕円」の方程式とその導出について取り扱います。主に下記を参考に進めます。

高等学校数学C/式と曲線 - Wikibooks

以下当記事の目次になります。
1. 楕円の方程式とその概要
2. 楕円の方程式の導出
3. まとめ


1. 楕円の方程式とその概要
1節では「楕円」の方程式とその概要に関して確認します。まずは楕円の方程式について確認します。

\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2} = 1
abは正の定数)

上記が楕円の方程式です。この時y=0を考えると、x^2=a^2より、x = \pm aとなります。このことは方程式①で表される楕円は(-a,0)(a,0)を通ることを意味しています。また、同様にx=0を考えるとy^2=b^2より、y = \pm bとなり、方程式①の楕円は(0,-b)(0,b)を通ることを意味します。

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ここまでの話を元に楕円の図を描くと上記のようになるとすることができます。

楕円の方程式と大まかな概要についてつかめたので1節はここまでとします。


2. 楕円の方程式の導出

2節では楕円の方程式の導出について確認します。方程式の導出の前に楕円の定義から確認します。楕円の定義は、「平面状にある2定点(焦点とする)の距離の和が一定になるような点の集合からなる曲線」というものです。以下、2つの焦点を(c,0)(-c,0)、焦点からの距離の和を2aとおき、楕円の方程式を導出します。

まず、定義より下記が成立します。
\displaystyle \sqrt{(x-c)^2+y^2}+\sqrt{(x+c)^2+y^2}=2a
\displaystyle \sqrt{(x-c)^2+y^2}=2a-\sqrt{(x+c)^2+y^2}
次に両辺を二乗し、整理を行います。
\displaystyle (x-c)^2+y^2=4a^2-4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}+(x+c)^2+y^2
\displaystyle (x-c)^2=4a^2-4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}+(x+c)^2
\displaystyle 4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}=4a^2+4cx
\displaystyle a\sqrt{(x+c)^2+y^2}=a^2+cx
さらに上記の両辺を再度二乗します。
\displaystyle a^2((x+c)^2+y^2)=(a^2+cx)^2
\displaystyle a^2(x^2+2cx+c^2+y^2)=(a^4+2a^2cx+c^2x^2)
\displaystyle a^2(x^2+c^2+y^2)=(a^4+c^2x^2)
\displaystyle (a^2-c^2)x^2+a^2y^2=a^2(a^2-c^2)
ここでb^2=a^2-c^2と置き換えます。
\displaystyle b^2x^2+a^2y^2=a^2b^2
さらにここで両辺をa^2b^2で割ります。
\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2} = 1
上記が楕円の方程式に一致します。

ここまでの話で楕円の方程式を導出することができました。また、b^2=a^2-c^2a0b0より、abを導出することもできます。
さらにここで(c,0)=(\sqrt{a^2-b^2},0)(-c,0)=(-\sqrt{a^2-b^2},0)は楕円の焦点を表すことも抑えておくと良いと思います。

ここまでで楕円の方程式が導出できたので2節はここまでとします。


3. まとめ
#1では楕円の方程式とその導出について確認を行いました。
#2では放物線について取り扱います。

sin、cos、tan以外の三角関数(sec、cosec、cot)|三角関数の公式を完全に理解する #6

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三角関数の公式は数が多く大変なので、まとめて抑えるにあたってなるべくシンプルな導出について取り扱っていくシリーズです。
#5では「加法定理の図形的理解」について取り扱いました。

#6では\sin\costan以外の三角関数\seccosec\cotについて取り扱います。主に下記を参考にします。

三角関数 - Wikipedia

以下当記事の目次になります。
1. 直角三角形による定義
2. 単位円による定義
3. まとめ


1. 直角三角形による定義
1節では直角三角形による三角関数の定義について確認します。

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三角関数 - Wikipedia より)
上図に対応する三角関数の定義はそれぞれ下記になります。

\displaystyle \sin{\theta} = \frac{a}{h}
\displaystyle \sec{\theta} = \frac{h}{b} = \frac{1}{\cos{\theta}}
\displaystyle \tan{\theta} = \frac{a}{b} = \frac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}
\displaystyle \cos{\theta} = \frac{b}{h}
\displaystyle cosec {\theta} = \csc{\theta} = \frac{h}{a} = \frac{1}{\sin{\theta}}
\displaystyle \cot{\theta} = \frac{b}{a} = \frac{1}{\tan{\theta}}

それぞれ上から正弦(sine: サイン)、正割(secant: セカント)、正接(tangent: タンジェント)、余弦(cosine: コサイン)、余割(cosecant: コセカント)、余接(cotangent: コタンジェント)と呼びます。また、cosec\cscと表記することも多いので抑えておくと良いと思います

直角三角形を用いた定義について確認できたので1節はここまでとします。


2. 単位円による定義
2節では単位円による三角関数の定義について確認します。

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三角関数 - Wikipedia より)
上図の単位円上の点A(x,y)に対応する三角関数の定義はそれぞれ下記になります。

\displaystyle \sin{\theta} = y
\displaystyle \cos{\theta} = x
\displaystyle \tan{\theta} = \frac{y}{x}
\displaystyle \csc{\theta} = \frac{1}{y}
\displaystyle \sec{\theta} = \frac{1}{x}
\displaystyle \cot{\theta} = \frac{x}{y}

この定義は0\theta\displaystyle \frac{\pi}{2}で1節で取り扱った直角三角形の定義に一致することも抑えておくと良いと思います。


3. まとめ
#6では\seccosec\cotについて取り扱いました。
#7以降も引き続き三角関数について取り扱います。

ド・モアブルの定理の確認|複素数平面を確認する #2

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複素数平面の基本的なトピックについて取り扱うシリーズです。
#1では概要の確認について行いました。

#2では「ド・モアブルの定理」について確認します。主に下記などを参考にします。

高等学校数学III/複素数平面 - Wikibooks

以下が目次となります。
1. 「ド・モアブルの定理」の概要
2. 「ド・モアブルの定理」の導出
3. まとめ


1. 「ド・モアブルの定理」の概要
1節では「ド・モアブルの定理」の概要について取り扱います。

\cos{\theta}+i\sin{\theta} = \cos{n\theta}+i\sin{n\theta}

まず、数式の確認からですが、「ド・モアブルの定理」は上記のように表します。以下、1節では具体的なイメージを掴むためにこの定理の利用例を確認します。

z^n=a

上記においてaが実数の時のzに関してのn次方程式の全ての複素数解を求めることを考えます。ここでz=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})と表せるとすると、「ド・モアブルの定理」より下記が成立します。

z^n=r^n(\cos{\theta}+i\sin{\theta})^n
  =r^n(\cos{n\theta}+i\sin{n\theta})

ここで実数aの絶対値はa偏角0であることを考慮すると、r^n=an\theta = 2k\pi(kは整数)となることがわかります。

\displaystyle r = (a)^{\frac{1}{n}}
\displaystyle \theta = \frac{2k\pi}{n}

よって、上記が成立するので、求める解は整数kを用いて下記のように表すことのできる数となります。

\displaystyle z = (a)^{\frac{1}{n}} \left( \cos{\frac{2k\pi}{n}} + i\sin{\frac{2k\pi}{n}} \right)

ここまでの内容で「ド・モアブルの定理」の数式や利用例に関して確認できたので1節はここまでとします。


2. 「ド・モアブルの定理」の導出
2節では「ド・モアブルの定理」の導出について取り扱います。基本的には加法定理を用いることで導出を行います。

z_1 = \cos{\theta_1}+i\sin{\theta_1}
z_2 = \cos{\theta_2}+i\sin{\theta_2}

上記のようにz_1z_2とおいた際に、z_1z_2の計算を考えます。

z_1z_2 = (\cos{\theta_1}+i\sin{\theta_1})(\cos{\theta_2}+i\sin{\theta_2})
  = \cos{\theta_1}\cos{\theta_2}+i\cos{\theta_1}\sin{\theta_2}+i\sin{\theta_1}\cos{\theta_2}+i^2\sin{\theta_1}\sin{\theta_2}
  = (\cos{\theta_1}\cos{\theta_2}-\sin{\theta_1}\sin{\theta_2})+i(\sin{\theta_1}\cos{\theta_2}+\cos{\theta_1}\sin{\theta_2})
  =\cos{(\theta_1+\theta_2)}+i\sin{(\theta_1+\theta_2)}

上記のように加法定理を考えることによって「ド・モアブルの定理」を導出することができます。途中でi^2=-1を用いたところもポイントです。


3. まとめ
#2では「ド・モアブルの定理」について確認しました。
#3以降でも引き続き複素数平面のトピックについて取り扱います。

概要と基本的な表記の確認|複素数平面を確認する #1

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複素数平面の基本的なトピックについて取り扱うシリーズです。複素平面と同義で専門的にはcomplex planeの訳語に複素平面とあてることが多いようですが、基本的なトピックを扱う当シリーズでは複素平面と表記することとします。
#1では概要の確認について行います。主に下記などを参考にします。

高等学校数学III/複素数平面 - Wikibooks

複素平面 - Wikipedia

以下が目次となります。
1. 複素平面の概要
2. 基本的な表記の確認
3. まとめ


1. 複素平面の概要
1節では複素平面の概要について確認します。

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複素平面 - Wikipedia

上記がWikipediaの記載ですが、複素数平面は複素数z=x+iyを直交座標(x, y) に対応させた直交座標平面のこと」とされています。

以下ではWikibooksの表記を確認していきます。

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(高等学校数学III/複素数平面 - Wikibooks より)
上記が複素数平面を考える上で基本的に用いられる図です。横軸を実軸(Realの略でReとされることもある)、縦軸を虚軸(Imaginaryの略でImとされることもある)として、複素数z=x+iyを平面上で表記しています。また、z=x+iyに対して、z=x-iyを共役と呼ぶことも抑えておくと良いと思います。

大体の概要についてつかめたので1節はここまでとします。

 

2. 基本的な表記の確認
2節では複素数平面における基本的な表記の確認について行います。

z=x+iy

1節では上記の複素数を平面に対応させて考えましたが、このときxy極形式(点の位置を極座標で表すことに対応する複素数の書き表し方)で表す方法もあります。

x = r\cos{\theta}
y = r\sin{\theta}

極形式では上記を用いてz=x+iyを下記のように変換します。

z = x+iy = r\cos{\theta}+ir\sin{\theta}
   = r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})

ここで上記において、rx+iyの「絶対値」、\thetax+iyの「偏角」と呼びます。また、このときに諸々の定義より下記が成立することも抑えておくと良いと思います。

\displaystyle r = \sqrt{a^2+b^2}
\displaystyle \cos{\theta} = \frac{x}{r}
\displaystyle \sin{\theta} = \frac{y}{r}

複素数平面の基本的な表記について確認できたので2節はここまでとします。


3. まとめ
#1では複素数平面の概要の把握と表記の確認を行いました。
#2では「ド・モアブルの定理」について取り扱います。

二次形式の微分とデザイン行列|ベクトル解析を確認する #3

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ベクトル解析(vector calculus)の基本的なトピックを確認するシリーズです。
#1では簡単に概要の把握について、#2では二次形式の微分について取り扱いました。

#3では二次形式(quadratic form)の微分の応用例の確認にあたって、回帰分析を考える際に出てくるデザイン行列(design matrix)の二次形式の微分について取り扱います。

以下が目次となります。
1. デザイン行列(design matrix)とは
2. デザイン行列の二次形式の微分
3. まとめ


1. デザイン行列(design matrix)とは
1節ではデザイン行列(design matrix)に関して取り扱います。

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Design matrix - Wikipedia

デザイン行列は上記のように回帰分析のような処理を行う際に用いる行列です。「(予測値)=(それぞれのサンプルにおける変数)×(係数、パラメータ)」のような形式で基本的に表されます。上記のWikipediaの例では「(予測値)=(それぞれのサンプルにおける変数)×(係数、パラメータ)+(誤差項)」を取り扱っていると考えて良いかと思います。これを行列表記すると、y = X\beta + \epsilonのように表すことができます。
また、このとき抑えておくと良いのが、変数の値を表す行列のXの1列目を1にすることで\beta_0を定数項と見なせることです。

このように表すことで、重回帰分析の際などに現れる複雑な式を一つの行列演算でほぼ表すことができるので非常に有用です。ここまででデザイン行列の概要について確認できたので2節ではデザイン行列の二次形式の微分について取り扱います。


2. デザイン行列の二次形式の微分
2節ではデザイン行列の二次形式の微分について取り扱います。この関連で出てくる話で抑えておきたいのが、重回帰分析のパラメータを求める際の正規方程式(normal equation)です。
いきなりデザイン行列を用いた表記から確認すると大変なので、先に\displaystyle \hat{y}_i = \beta_1 x_i + \beta_0を元に流れの確認を行います。

\displaystyle \hat{y}_i = \beta_1 x_i + \beta_0
\displaystyle E(a,b) = \sum_{i=1}^{n} (y_i-\hat{y}_i)^2
  \displaystyle = \sum_{i=1}^{n} (y_i-(ax_i+b))^2

上記で定義したE(a,b)ab偏微分し、0に一致するabを求めるというのが基本的な流れです。

以下、重回帰分析のパラメータを求める話をデザイン行列を用いて表記することを考えます。

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上記を\hat{y}=X\betaと表し、\hat{y}に対応する実測値をy、最小二乗和誤差関数をE(\beta)とするとE(\beta)は下記のように表すことができます。

E(\beta) = (y-\hat{y})^{T}(y-\hat{y})
   = (y-X\beta)^{T}(y-X\beta)
   = y^{T}y-y^{T}X\beta + (X\beta)^{T}y-(X\beta)^{T}X\beta
   = y^{T}y-y^{T}X\beta + \beta^{T}X^{T}y-\beta^{T}X^{T}X\beta

ここで\Sigmaが出てこないのは行列の積で和を表すことができるからです。これを\betaに関して微分(E(\beta)のgradientを計算するのに一致)すると、下記のように計算できます。

\nabla E(\beta) = -2X^{T}y + 2X^{T}X\beta = 0
2X^{T}X\beta = 2X^{T}y
X^{T}X\beta = X^{T}y
\beta = (X^{T}X)^{-1}X^{T}y

このようにデザイン行列を用いることで、回帰分析にあたってのパラメータを二次形式の微分を考えることで求めることが可能です。


3. まとめ
#3ではデザイン行列における二次形式の微分について取り扱いました。
#4以降でも関連のテーマについて取り扱います。

加法定理の図形的理解|三角関数の公式を完全に理解する #5

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三角関数の公式は数が多く大変なので、まとめて抑えるにあたってなるべくシンプルな導出について取り扱っていくシリーズです。
#1では加法定理とその導出について、#2では倍角の公式・半角の公式について、#3では和積の変換公式について、#4では三倍角の公式について取り扱いました。

#2〜#4の公式はどれも「加法定理」を元にしているため、#5では加法定理についてより理解ができるように「加法定理の図形的理解」について取り扱います。

以下当記事の目次になります。
1. 加法定理の図形的理解について
2. まとめ


1. 加法定理の図形的理解について
1節では「加法定理の図形的理解」について取り扱います。まず\cos(a+b) = \cos{a}\cos{b} - \sin{a}\sin{b}の導出について確認します。

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上図を用いて\cos(a+b) = \cos{a}\cos{b} - \sin{a}\sin{b}を示すことができます。また、以下では\displaystyle \sin{a} = \cos{\left( a+\frac{\pi}{2} \right)}\displaystyle \cos{a} = \sin{\left( a-\frac{\pi}{2} \right)}を利用して\sin(a+b) = \sin{a}\cos{b} + \sin{b}\cos{a}を導出します。

\displaystyle \sin{(a+b)} = \cos{\left( a + \left(b + \frac{\pi}{2} \right) \right)}
  \displaystyle = \cos{a}\cos{\left(b + \frac{\pi}{2} \right)} - \sin{a}\sin{\left(b + \frac{\pi}{2} \right)}
  \displaystyle = \cos{a}\sin{\left(b + \frac{\pi}{2} -\frac{\pi}{2} \right)} - \sin{a}\cos{\left(b + \frac{\pi}{2} + \frac{\pi}{2} \right)}
  \displaystyle = \cos{a}\sin{b} - \sin{a}\cos{\left(b + \pi \right)}
  \displaystyle = \cos{a}\sin{b} - \sin{a}(-\cos{b})
  \displaystyle = \cos{a}\sin{b} + \sin{a}\cos{b}
  \displaystyle = \sin{a}\cos{b} + \sin{b}\cos{a}

上記より、\sin(a+b) = \sin{a}\cos{b} + \sin{b}\cos{a}を導出することができました。また、\displaystyle \cos{(a + \pi)} = -\cos{a}も用いました。
\displaystyle \sin{a} = \cos{\left( a+\frac{\pi}{2} \right)}
\displaystyle \cos{a} = \sin{\left( a-\frac{\pi}{2} \right)}
\displaystyle \cos{(a + \pi)} = -\cos{a}
ここで用いた上記は単位円や三角関数を考えれば直感的に導出できると考えて良いと思われるので、ここまでの話により加法定理の\sin(a+b) = \sin{a}\cos{b} + \sin{b}\cos{a}\cos(a+b) = \cos{a}\cos{b} - \sin{a}\sin{b}をそれぞれ直感的に示すことができたと思います。


2. まとめ
#5では「加法定理の図形的理解」について取り扱いました。
#6では下記の図を元に、\sin\cos\tan以外の三角関数について取り扱います。

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三角関数 - Wikipedia より