市場、媒体、ミッション、新製品開発|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #14

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#13ではマーケティングミックス(Marketing Mix)、マーケティング計画(Marketing Plans)、マーケティングリサーチ(Marketing Research)、マーケティングの役割とスキル(Marketing Roles and Skills)について取り扱いました。

#14では市場(Markets)、媒体(Media)、ミッション(Mission)、新製品開発(New Product Development)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 市場(Markets)
2. 媒体(Media)
3. ミッション(Mission)
4. 新製品開発(New Product Development)
5. 感想・まとめ

 

1. 市場_Markets(簡単な要約)
市場は様々に定義できる。経済学者は特定の製品もしくは製品クラスを巡って取引を行う売り手と書いての集まりが市場であるとされている。一方で、マーケターは売り手のことを「産業」と呼び、買い手のことを「市場」と呼ぶ。
当然のことながら、市場という言葉は広く定義することができる。最も広い定義は「マス市場」であり、ごくありふれた製品(石鹸、ソフトドリンクなど)を購買・消費する大衆を指す言葉として用いられる。また、マス市場の対極に位置するのが、特定の個人ないしは企業を指す「個別市場」という言葉である。
マーケターは慎重を期して「標的市場」を定義しなければならない。「マス市場」はあまりにも漠然としているので誰もが欲しがる製品を作るのは難しく、一部の人々に愛好される製品を作る方が簡単である。こうして定義されるニッチ市場やミニ市場を追い求めることにはマイナス面もあり、市場の細分化が進むと各セグメントにおける販売量が少なくなるため、それぞれの市場で1社もしくは数社しか生き残れないという事態になってしまう。
マーケティングの変化よりも市場の変化の方が速いため、経済、テクノロジー、文化が変化するにつれて、買い手の数、欲求、購買力も変わる。企業はこうした変化に気づかず、切れ味の鈍ったマーケティング活動を続けることがよくあるので注意が必要である。


2. 媒体_Media(簡単な要約)
企業は媒体(メディア)を活用しなければならない。媒体を活用しない企業はどれほど実際的な目的を掲げていようとも、存在していないに等しい。主要な媒体としては、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、カタログ、ダイレクトメール、電話、インターネットなどがある。そして、それぞれの媒体がコスト、リーチ(到達範囲)、フリークエンシー(露出頻度)、インパクトといった点に関して良い点悪い点を持っている。
今日では様々な広告媒体が発達しているので、企業は何十もの媒体チャネル、および媒体ビークルに予算を配分しなければならない。だからこそ今日ではターゲティングが決定的な意味を持つようになってきている。また、広告会社の人間はより費用対効果が高く、より注目を集めやすい広告ビークルを常に探し求めている。
媒体の将来を担うのは、テレビ、ラジオといったブロードキャスティングではなく、対象者を絞ったナローキャスティング(narrow casting)にシフトしてきている。


3. ミッション_Mission(簡単な要約)
企業が設立されたのはミッション(使命)を果たすためである。企業は様々な表現でそれぞれのミッションを謳っている。大抵のミッション・ステートメントには以下のような言葉が含まれている。

・社員は最も重要な資産である
・我々の手がける領域にてベストを目指す
・我々の目標は期待を超えることである
・株主に平均以上のリターンをもたらす

てっ取り早くミッション・ステートメントを作りたければこれらの文言を適当に並べ替えれば良い(こう言ってしまって良いのかというのもありますが)。
また、社員、見込み客、顧客に自社の存在意義を思い出して欲しければ名刺の裏面などにミッション・ステートメントを印刷しておくとよい。


4. 新製品開発_New Product Development(簡単な要約)
インテルの元戦略担当副社長のウィリアム・H・ダビドゥの言葉で、「優れた装置は研究室で発明されるが、優れた製品はマーケティング部門で発明される」というのがある。製品は単なるモノとしての装置以上の存在でなければならない。つまり、ある人の問題を解決するコンセプトでなくてはならない。製品は最終的には市場に投入されなければならないため、製品には「翼だけでなく着陸装置も」備えておく必要がある。
以下の三つの問いに答えることにより、開発にとりかかる前に新製品が成功するかどうかを高い確率で予測することができる。

・人々はこの製品を必要とするだろうか
・競合他社の提供物とは異なっており、しかもより良いものだろうか
・人々は進んで対価を払ってくれるだろうか

上記の回答に1つでもノーがあれば開発プロジェクトを始動させるべきではない。勝てるという確信が持てるまで、戦いに加わってはならない。
製品を開発するのは研究開発部門、エンジニアリング部門、製造部門、マーケティング部門の全ての部門が顧客の力を借りながら開発するというのが正しい。新製品の結果に責任を追うのは研究開発部門とマーケティング部門ということになり、少なくとも販売部門でないことは確かである。
また、あらゆる競合他社が当該製品を研究し弱点を発見しようとしているため、競合他社が改良する前に自ら改良することが重要である。他社が自社製品を陳腐化させる前に、自らの手で陳腐化させるべきである。企業は何事かをなすためのコストに過度に注目するが、事をなさないために生じるコストにもっと目を向けるべきである。


5. 感想・まとめ
#14では市場(Markets)、媒体(Media)、ミッション(Mission)、新製品開発(New Product Development)について取り扱いました。市場と産業の違いは買い手と売り手に注目することで区別するというのが非常に興味深かったです。また、ミッションについてはてっ取り早くするには無難なものを並べるだけで良いと書かれていたのは結構驚きでした。媒体についても今日の多様化に対して、ターゲティングが重要になってきているというのが非常に参考になる論述でした。
#15では機会(Opportunity)以後について取り扱います。

【入門者向け】Pythonの入出力の実装|Python入門 #5

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#1ではPythonを用いたFizzBuzzのコーディングについてまとめました。

入門者の方に読んでみていただいたところ、少し難しかったようなので、#2以降では#1で触れた基本文法をそれぞれもう少し丁寧に解説を行なっていきます。基本的には下記のPythonのドキュメントのチュートリアルなどを元にして解説していきます。

Python チュートリアル — Python 3.7.4 ドキュメント

#2ではPythonにおける四則演算・文字列について、#3ではリスト・タプル・辞書について、#4ではPythonの制御構文について取り扱いました。

【入門者向け】Pythonの基礎文法① 四則演算・文字列|Python入門 #2 - lib-arts’s diary

【入門者向け】Pythonの基礎文法② リスト・タプル・辞書|Python入門 #3 - lib-arts’s diary

【入門者向け】Pythonの基礎文法③ 制御構文(if、for)|Python入門 #4 - lib-arts’s diary

#5ではSection7を中心にPythonの入出力について取り扱います。

7. 入力と出力 — Python 3.7.4 ドキュメント

以下目次になります。
1. 出力を見やすくフォーマットする(7.1)
2. ファイルを読み書きする(7.2)
3. まとめ

 

1. 出力を見やすくフォーマットする(7.1)
1節ではSection7.1をベースにまとめていきます。そのまままとめると入門向けとしては難しい内容となるので、随時必要箇所の抜粋などの取捨選択や補足などを加えてまとめます。
・文字列リテラルやstr.format()
文字列の中身を変更したい際などに変数を用いて中身を制御するにあたって、文字列リテラルやstr.format()が便利です。まずは下記を実行してみましょう。

year = 2016
event = 'Referendum'

print(f'Results of the {year} {event}')
print('Results of the {year} {event}')
print(f'Results of the year {event}')

実行結果は下記になります。

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{}で囲む&出力時にf''の中に文字列を入れることで変数として値を与えることができます。ここでfをつけなかったり{}をつけなかったりすることで値を制御することが可能に

なります。
また、str.format()のように実行することで同様の内容を実現することができます。下記が実行サンプルになります。

yes_votes = 42_572_654
no_votes = 43_132_495
percentage = yes_votes / (yes_votes + no_votes)

print('{:-9} YES votes {:2.2%}'.format(yes_votes, percentage))

実行すると下記のような出力が得られます。

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format文の中で用いる変数を指定することで、値を渡すことができます。
細かいオプションについてはSection7.1にまとまっているのでだいたいこのようなことができると把握したところで1節はここまでとします。


2. ファイルを読み書きする(7.2)
2節ではファイルの読み書きを見ていきます。ドキュメントの記述はプログラミングの経験がなければ若干わかりづらいですが、所々記述の抜粋と補足をまとめていきます。

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まず冒頭部で上記のように説明されていますが、openメソッドを用いることで外部fileに関してのオブジェクトを生成します。メソッドにはファイルの名前(fileneme)と編集モード(mode)の二つの引数を与え、どのファイルをどういう形式で開くかについて指定します。modeについては書き込みなら'w'、読み出しなら'r'を用います。ここまでの内容を詳しく理解するにあたってはオブジェクト指向の理解が必要なので、後日記事でオブジェクト指向についてまとめます。

上記は若干難しいですが、システム設計に関連してオブジェクト指向についてまとめていますので参考になればと思います。
少し話がオブジェクト指向にそれてしまいましたので、openメソッドに戻します。

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openメソッドは処理中に例外が発生した際にもファイルを閉じれるようにwith構文と一緒に用いると良いです。with構文では中での処理がなんらかの形で終了した際にファイルが使っていたシステムリソースを同時に解放してくれます。なので、openメソッドはwith構文と併用して利用すると覚えておくと良いです。
難しそうな話が続いたので、実際に動かしてみます。まずは下記を動かしてみましょう。

with open('sample.txt', 'w') as f:
    f.write('This is a test.')

上記を動作させると実行ディレクトリ(フォルダ)と同じディレクトリ内に外部ファイルとしてsample.txtを作成し、その中に"This is a test."と出力されています。

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sample.txtの中を実際に見てみると上記のように"This is a test."とあるのが確認できます。
次に読み出しを行います。下記を実行してみてください。

with open('sample.txt', 'r') as f:
    print(f.read())

実行結果は下記になり、書き込みを行った"This is a test."が読み出せていることが確認できます。

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3. まとめ
#5では出力を見やすくするための機能の紹介やファイルの読み書きについてご紹介しました。
#6以降では今回オブジェクト指向が出てきたので関数やクラスについて解説します。

マーケティングミックス、マーケティング計画、マーケティングリサーチ、マーケティングの役割とスキル|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #13

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE
#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#12ではマネジメント(Management)、マーケティング資産とマーケティング資源(Marketing Assets and Resources)、マーケティング部門と他部門との関係(Marketing Department Interfaces)、マーケティング倫理(Marketing Ethics)について取り扱いました。

#13ではマーケティングミックス(Marketing Mix)、マーケティング計画(Marketing Plans)、マーケティングリサーチ(Marketing Research)、マーケティングの役割とスキル(Marketing Roles and Skills)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. マーケティングミックス(Marketing Mix)
2. マーケティング計画(Marketing Plans)
3. マーケティングリサーチ(Marketing Research)
4. マーケティングの役割とスキル(Marketing Roles and Skills)
5. 感想・まとめ


1. マーケティングミックス_Marketing Mix(簡単な要約)
マーケティングミックスとは、管理者が売上に影響を与えるために使用できるツールの組み合わせのことである。伝統的に製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4Pの形にまとめられている。
4Pという整理のしかたには当初から様々な疑問が投げかけられてきたが、4Pに対するより根本的な批判は、それが買い手の視点に立ったものではなく、売り手の見方を表現したものだということである。これに対してロバート・ラウターボーンは顧客価値(Customer Value; 製品に代わるもの)、顧客コスト(Customer Cost; 価格に代わるもの)、利便性(Convenience; 流通に代わるもの)、コミュニケーション(Communication; プロモーションに代わるもの)のことである。マーケターが標準顧客の4Cを塾考しておけば、4Pの設定もはるかに容易になる。
マーケティングツールは製品ライフサイクルの段階に応じて適切なものを使い分けることになる。例えば製品の導入期では広告とパブリシティが最も費用対効果が高く、製品が成熟期に入ると販売促進や人的販売の重要性が増してくる。製品が衰退期を迎えたら、販売促進を引き続き推し進める一方で、広告、パブリシティ、人的販売は縮小すべきである。
またプッシュ戦略とプル戦略を対象(消費者 or 企業)に合わせて検討していくことも重要である。


2. マーケティング計画_Marketing Plans(簡単な要約)
企業にはビジョンが必要で、ビジョンには戦略が、戦略には計画が、計画には実行が必要となる。マーケティング計画は詳細に準備する必要があり、より良いもの、より新しいもの、より速いもの、より安いものを投入できないのであれば市場に参入すべきではない。
マーケティング計画の立案は、状況分析、目的、戦略、戦術、予算、コントロールの6つのステップからなる。また、計画立案を容易にするため、あらゆる部門や製品グループで使用できる標準の計画フォーマットを用意すべきである。
実際に取り組むにあたって注意すべきなのが、成果を出すための活動よりも計画策定の方に時間を割きすぎないということである。戦略計画は実行に移されない限り絵に描いた餅である。実行すべきことを計画し、計画を実行する必要がある。


3. マーケティングリサーチ_Marketing Research(簡単な要約)
初期のマーケティングリサーチは顧客を理解することよりも、売上拡大のための技法を発見することの方に主眼をおいていた。店舗監査や出庫データなど製品動向の情報をもたらす手法の開発が注目されていた。時が経つうちに、マーケターは購買者を理解することの重要性を次第に理解するようになった。
以下、現在用いられている主なリサーチ手法を紹介する。

・店内観察
・家庭内観察
・その他の観察
・フォーカスグループ調査
・アンケートとサーベイ調査
・デプスインタビュー技法
マーケティング実験
ミステリーショッパー調査
データマイニング

マーケティングリサーチは効果的なマーケティング意思決定の第一歩であり、基盤であることを理解しておくと良い。


4. マーケティングの役割とスキル_Marketing Roles and Skills(簡単な要約)
大多数の企業がマーケティング部門の役割を、プレスリリースの作成や広告に従事するなどのマーケティングコミュニケーションの実践のみに限定してきた。製品が完成し、販売が必要になった段階ではじめてマーケティングの仕事が始まると考えがちである。
しかしながら、マーケティングが全社的な戦略に影響を与えられない限り、顧客への約束を果たすことはできない。むしろ全社的な戦略を推進し、顧客への約束を実行に移すことこそマーケティングの主な役割と考えるべきである。このことを実現するには戦術的マーケティングから総合的マーケティングへの転換が必要になる。
ここで顧客との関係における、マーケターの主要な役割を以下にまとめる。

・新たな機会を発見し、評価する
・顧客の知覚、選好、要求をマッピングする
・顧客の欲求や期待を製品設計者に伝える
・顧客からの注文が正しく処理され、納期が守られていることを確認する etc

マーケターがこうした役割を遂行するには、予測、計画立案、分析、創造、意思決定、動機付け、コミュニケーション、実践に関するスキルが必要である。こうしたスキルが統合されたものがいわゆるマーケティング能力である。マーケティング担当責任者を選ぶにあたって、企業が探し求めるのがまさにこのマーケティング能力を備えた人物である。


5. 感想・まとめ
#13ではマーケティングミックス(Marketing Mix)、マーケティング計画(Marketing Plans)、マーケティングリサーチ(Marketing Research)、マーケティングの役割とスキル(Marketing Roles and Skills)について取り扱いました。マーケティング計画の所の一連のプロセスが頭の整理になり、非常に良かったです。
#14では市場以降について取り扱います。

RoBERTa(論文の詳細① Introduction&Background)|言語処理へのDeepLearningの導入の研究トレンドを俯瞰する #14

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言語処理へのDeepLearningの導入をご紹介するにあたって、#3〜#8においては、Transformer[2017]やBERT[2018]について、#9~#10ではXLNet[2019]について、#11~#12ではTransformer-XL[2019]について取り扱ってきました。

#13以降では2019年7月にリリースされたBERTベースでハイパーパラメータ(学習にあたってのlossやデータセット)のチューニングを行なった事前学習モデルであるRoBERTa[2019]について取り扱っていきます。

[1907.11692] RoBERTa: A Robustly Optimized BERT Pretraining Approach

#13では上記のAbstractをベースにRoBERTa[2019]の概要について確認しました。

#14ではRoBERTa[2019]の論文のIntroductionとBackgroundについて確認していきます。
以下目次になります。

1. Introduction(Section1)
2. Background(Section2)
3. まとめ

 

1. Introduction(Section1)
1節ではIntroductionについて取り扱います。Introductionはパラグラフリーディングをするとちょうど良いのでパラグラフ単位で読み進めていきます。

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上記が第一パラグラフです。第一パラグラフの要約は下記になります。

要約:
ELMoやGPT、BERT、XLNetなどの学習手法は大きな成功をおさめたものの、どの方法が一番貢献している(contribute)かは現在進行形で検討されている。

第一パラグラフではこれまでの研究を紹介する導入の位置付けで論述が行われています。

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第二パラグラフの要約は下記になります。

要約:
BERTを用いた事前学習における追加研究について紹介する。追加研究の中ではハイパーパラメータやトレーニングデータのサイズについての効果を入念に評価している。BERTが顕著に学習不足であることについて発見し、RoBERTaという名前で改善案を紹介する。RoBERTaはBERT以降の全てのパフォーマンスに並ぶか上回るかした。修正のアプローチはいたってシンプルで、『(1)より大きなモデル、バッチ、データを用いる、(2)NSPによる事前学習をなくす、(3)より長い文を用いて学習を行う、(4)事前学習時に用いるMASKのパターンを動的に変更する』の4つである。

BERTの改善案として、RoBERTaを提案しています。また、4つの修正のアプローチについても言及されており、こちらについてはSection4などに考察がまとまっています。

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第三パラグラフの要約は下記になります。

要約:
学習データの調節にあたって手法の改善に伴って、GLUEとSQuADの双方に置いて結果の向上が見られた。GLUE leaderboardで88.5のスコアを出し、同時に4/9のGLUEタスクでSOTAの結果となった。当研究を総括的に見ると、BERTの学習にあたっての目的関数(objective)はXLNet(Yang et al., 2019)を用いた語順変更を伴うAutoRegressiveモデルに比類する結果となることを示した。

RoBERTaによってXLNetのような語順変更を伴うAutoRegressiveモデルに比類する結果を示したことが記述されています。XLNetの論文でBERTはAutoEncodingモデルとされており、どちらが良いかというのをまだ決めるのは早急で追加の研究が望まれると解釈して良いと思われます。ちなみに細かいですが、最初の文でimproveが重複しているのは違う表現の方が良いのではという印象でした(new training procedure etc)。

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第四パラグラフの要約は下記になります。

要約:
総括すると当論文における貢献(contributions)は、(1)BERTの学習の全体設計と戦略について示せたこと、(2)CC-NEWSなど様々な新しい学習データを用いたこと、(3)MLM(Masked Language Model) の改善を(MASKの設定を動的にすることにより)行ったこと。

こちらについては第二パラグラフの内容を再度違う視点でまとめていると考えるのが良さそうです。基本的にはAbstractの詳細を記述している形のため重複がありますが、追加研究(Replication Study)なのでパラグラフ単位で簡単に取り扱っておきました。


2. Background(Section2)
2節はBackgroundについて確認して行きます。こちらも普段は飛ばすのですが、追加研究(Replication Study)のため各Sectionごとに確認していきます。
・冒頭部

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上記が冒頭部の記述です。Section2の概観をしているので簡単に和訳します。

和訳:
このSectionでは、BERTにおける事前学習のアプローチの簡単な俯瞰を行い、後ろのSectionで実験的に試しているいくつかの学習における調整について紹介する。

Section2のBackgroundではBERTの学習にあたっての基本的な考え方と、調整にあたって出てくる概念の紹介を行うとされています。BERTの内容を改めて見返して俯瞰したものなので、実際のオリジナルと並行して確認しても良い内容だと思われます。


・Setup(Section2.1)

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上記がSetup(Section2.1)の記述です。ここでは単語の系列(sequences of tokens)のモデリングを行うにあたってまず系列(Sequence)を定義しています。系列としては\mathbf{x}=(x_{1},x_{2},...,x_{N})\mathbf{y}=(y_{1},y_{2},...,y_{M})の二つが定義されています。ここで、途中のところで、[CLS],\mathbf{x},[SEP],\mathbf{y},[EOS]という記述がありますが、このような形で系列の連なりを立式しています。[CLS]はclassificationを表すトークン、[SEP]はseparateを表すトークン、[EOS]はend of sentenceを表すトークンです。NとMはそれぞれ系列\mathbf{x}と系列\mathbf{y}の長さを表しており、学習における系列の全体の最大の長さを表すTとの間にM+N < Tという関係があるとされています。
モデルは初めに大きなラベル付けされていないテキストコーパスによって事前学習され、次にラベル付けされたタスクによってファインチューニング(finetuning)されるとされています。

 

・Architecture(Section2.2)

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上記がArchitecture(Section2.2)の記述です。ここではBERTに関してL層で、Aのself-attention headsを持ち、H次元の隠れ層を持つTransformerを用いたとのみ記述されています。詳細はBERTの論文などに記載があるので簡単な記述のみとされているようです。


・Training Objectives(Section2.3)
Section2.3のTraining ObjectivesについてはBERTの事前学習にあたっての二つの目的関数(誤差関数、loss)が紹介されています。それぞれMasked Language Model(MLM)とNext Sentence Prediction(NSP)の二つで、以下それぞれについて見ていきます。

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上記がMasked Language Model(MLM)の記述になります。MLMでは入力データの一部を[MASK]というトークンに置き換え、その他の文の単語から[MASK]化されたトークンの予測ができるように学習させるというものです。補足ですが、この学習自体は[MASK]化するトークンはランダムに選ぶとすると人間が教師データ(labelの情報)を与えていないので、教師なし学習(Unsupervised Learning)と捉えることができます。これによりWikipediaのような巨大なコーパスを学習データとして用いることができます。
[MASK]の作成にあたっては、文を構成する単語(input tokens)の中から15%を選び、その中の80%を[MASK]トークンで置き換え、10%をそのまま変更しないでおき、10%をランダムで選択された単語で置換(replace)されます。この際に10%をランダムな単語で置換する意図としては、学習データによる偏りを減らすことで過学習(overfitting)を防ぐというのがあると思われます。
BERTのオリジナルの実装において[MASK]化やランダムの置換については学習の開始時に一度だけ行われ、学習の間中それが保存されます。けれども実際にはデータは複製されるので全ての学習する文に置いて[MASK]は常に一致するわけではないとされています。(これはDataAugmentationのことを指していると思われましたが要出典です)


・Optimization(Section2.4)

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上記がOptimization(Section2.4)の記述です。Adamによる最適化のパラメータ設定や、学習率の設定、ドロップアウトの比率、ミニバッチのサイズ(B=256)、最大の文章のサイズ(T=512)についてまとめられています。最適化(Optimization)の設定については下記に著者実装があるので、詳細はこちらを確認すると良さそうです。

GitHub - pytorch/fairseq: Facebook AI Research Sequence-to-Sequence Toolkit written in Python.


・Data(Section2.5)

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上記がData(Section2.5)の記述です。BERTのオリジナルにおいての学習データの構築についてまとめられています。BOOKCORPUSのデータに英語のWikipediaのデータを加えた16GBのデータを用いたとされています。それに対し、Section3.2でRoBERTaは160GBのデータを用いたとされています。

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上記はTable4の比較で、データセットと各スコアの比較がRoBERTa、BERT(LARGE)、XLNet(LARGE)のそれぞれに対してまとめられています。(詳しくは後日記事でまとめます。)


3. まとめ
#14ではRoBERTaにおいてIntroductionとBackgroundについてまとめます。Replication Studyなので全体的にざっと見ていくことにより、他の論文での言及も整理できてなかなか有意義な印象です。
#15ではSection3のExperimental Setupについて取り扱います。

マネジメント、マーケティング資産とマーケティング資源、マーケティング部門と他部門との関係、マーケティング倫理|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #12

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE
#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#11では国際マーケティング(International Marketing)、インターネットとEビジネス(Internet and E-Business)、リーダーシップ(Leadership)、ロイヤルティ(Loyalty)について取り扱いました。

#12ではマネジメント(Management)、マーケティング資産とマーケティング資源(Marketing Assets and Resources)、マーケティング部門と他部門との関係(Marketing Department Interfaces)、マーケティング倫理(Marketing Ethics)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. マネジメント(Management)
2. マーケティング資産とマーケティング資源(Marketing Assets and Resources)
3. マーケティング部門と他部門との関係(Marketing Department Interfaces)
4. マーケティング倫理(Marketing Ethics)
5. 感想・まとめ


1. マネジメント_Management(簡単な要約)
マネジメントの役割はトレードオフを管理し、矛盾を巧みに処理することである。企業内の人々はそれぞれ異なる関心を抱いているが、各部門がそれぞれの業績のみを追求すると会社全体としては業績が傾いてしまうという問題がある。各部門が担っているのはそれぞれの部分の課題であって、全社的な課題ではない。リエンジニアリングという考え方がもたらした恩恵は、部門中心の見方を改め、コア・プロセスの管理に焦点をあてたことである。
マネジメントは一瞬たりとも警戒を緩めてはならず、ビジネスとはゴールのない競争である。「カイゼン」などで言語化されるように現在の業務効率を向上させるのも重要だが、それだけでは十分と言えない。内から外を捉える視点だけでなく外から内を眺める姿勢も重要である。


2. マーケティング資産とマーケティング資源_Marketing Assets and Resources(簡単な要約)
企業は自社の資産(物的資産、売掛け金、運転資本その他)が全てバランスシート上に記載されていると考えがちだが、企業の真の資産はバランスシートの項目から除外されている。企業の真の資産とは、ブランド、社員、流通パートナー、供給業者、知的ナレッジなどの価値のことで得ある。これだけでなく、自社のコア・コンピテンシー(中核的能力)も資産としてリストアップすることが必要である。
戦略とは本来市場での戦いに勝利するために、コンピテンシー、コア・プロセス、その他の資産をどのように組み合わせるかを示すものである。この時自社の資産や資源の検討から始めることで機会探求の可能性を狭めてはならない。まず自社の外部に目を向けて機会を見出し、その後必要な資源やコンピテンシーを備えているか、今後調達可能かといった検討に移るべきである。
こうすることで、有望な機会を見つけた際に必要な資源が不足しても、不足した資源はいつでも購入することができるし、アウトソーシングすることも可能である。


3. マーケティング部門と他部門との関係_Marketing Department Interfaces(簡単な要約)
どの部門も他の部門に対し、なんらかのイメージや固定観念を抱いている。大抵は悪いイメージで、各部門は利用可能な資源の奪い合いを展開しており、自分たちの方が他部門よりも資金を有効に使えると主張し合っている。こうしたことが部門間の強調を阻む。
課題は部門間の壁をいかにして突き崩し、異なる部門の活動を調和させ、いかにチームとして機能させるかということである。下記が2つの具体的な方法である。

1) 2つの部門を集めた会合を開き、相手の強みや弱みをどう見ているか、互いの関係をよりよくするにはどうすれば良いかを意見交換させる。
2) 職能単位ではなくプロセス単位で管理を行い、プロセス管理をするために部門横断チームを作る。


4. マーケティング倫理_Marketing Ethics(簡単な要約)
企業はしばしば立派な決断を下すか、顧客の信頼を裏切るかという選択を迫られる。異物混入や不良品によるリコールなどが例として挙げられる。商取引という活動はしばしば非難の的にされてきており、その時々の状況に応じた厳しい倫理上の問題との板挟みにあってきたからである。
世間から高く評価されている企業は、自分たちの利益のためではなく人々の利益のために奉仕するという行動規範を忠実にも持っている企業である。製品、サービス・レベル、企業による事前活動で名高い企業の場合は、名声と信頼感がさらなる利益を生み出している。


5. 感想・まとめ
#12ではマネジメント(Management)、マーケティング資産とマーケティング資源(Marketing Assets and Resources)、マーケティング部門と他部門との関係(Marketing Department Interfaces)、マーケティング倫理(Marketing Ethics)について取り扱いました。今回はそこまで印象に残るトピックはなかったものの、どれも参考になる内容でした。
#13ではマーケティングミックス以降を取り扱っていきます。

RoBERTa(論文のAbstractの確認)|言語処理へのDeepLearningの導入の研究トレンドを俯瞰する #13

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言語処理へのDeepLearningの導入をご紹介するにあたって、#3〜#8においては、Transformer[2017]やBERT[2018]について、#9~#10ではXLNet[2019]について、#11~#12ではTransformer-XL[2019]について取り扱ってきました。

#13以降では2019年7月にリリースされたBERTベースでハイパーパラメータ(学習にあたってのlossやデータセット)のチューニングを行なった事前学習モデルであるRoBERTa[2019]について取り扱います。

[1907.11692] RoBERTa: A Robustly Optimized BERT Pretraining Approach

#13では上記のAbstractをベースにRoBERTa[2019]の概要について確認します。
以下目次になります。

1. RoBERTaの概要の把握(Abstractの把握)
2. まとめ

 

1. RoBERTaの概要の把握(Abstractの把握)
1節ではRoBERTa(RoBERTa: A Robustly Optimized BERT Pretraining Approach)の概要の把握を行います。概要を掴むにあたっては、論文の重要な点は基本的にAbstractに記載されているのでAbstractを確認していきます。

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[1907.11692] RoBERTa: A Robustly Optimized BERT Pretraining Approach
上記を元に1文ずつ和訳と解説を行なっていきます。

Language model pretraining has led to significant performance gains but careful comparison between different approaches is challenging.

和訳:『言語モデルの事前学習は(BERT[2018]やXLNet[2019]などに代表されるように)目覚ましい成果をあげてきたが、異なる手法間の慎重な比較はまだ途中段階である。』
途中補足としてBERT[2018]やXLNet[2019]を挙げましたが、2018年10月のBERTを皮切りに言語処理の事前学習について注目が集まっています。画像認識におけるAlexNet[2012]やVGGNet[2014]、ResNet[2015]時と同様に、事前学習モデルとしてのパフォーマンス向上が目覚ましく起きています。一方で目覚ましい改善が行われている時点においてはどれが良いかというのは言い切れないので、慎重な比較はまだできていないと言及されています。

Training is computationally expensive, often done on private datasets of different sizes, and, as we will show, hyperparameter choices have significant impact on the final results.

和訳:『学習というのは計算機的に高価で、様々なサイズの手持ちのデータでしばしば行われるが、我々が示すようにハイパーパラメータの選択は最終結果において大きな影響を及ぼす。』
BERTやXLNetのサイズは大きく学習コストも大きくかかることや手持ちのデータ(private datasets)で再学習するなどの一般論について言及したのちに、RoBERTaのテーマであるハイパーパラメータの選択について示唆されています。

We present a replication study of BERT pretraining (Devlin et al., 2019) that carefully measures the impact of many key hyperparameters and training data size.

和訳:『我々はBERTによる事前学習の追加研究(replication study)を行なった。追加研究においては多くの重要なハイパーパラメータや学習データのサイズの影響を注意深く測定している。』
that以下は先に訳した方が日本語的には良いですが、必要以上に語順を変えたくなかったので後から訳す形にしました。replication studyはある研究に対して後から取り組む研究のことを指しているようです。また、「ハイパーパラメータや学習データのサイズの影響」を丁寧に測定することで、パフォーマンス測定にあたってのより深い考察を導き出せるようにしています。

We find that BERT was significantly undertrained, and can match or exceed the performance of every model published after it.

和訳:『我々はBERTが顕著に学習不足であることや、BERT以後に発表された全てのモデルのパフォーマンスに並んだり上回ったりすることを発見した。』
undertrainedは学習不足、訓練不足という意味なので、BERT[2018]が訓練不足だったと指摘する内容になっています。発表された当初は大きく注目を浴びたBERTですが、BestかというよりもEpoch Makingだったという点で捉えておくと良さそうです。

Our best model achieves state-of-the-art results on GLUE, RACE and SQuAD.

和訳:『取り組んだ中でベストのモデルはGLUE、RACE、SQuADなどのデータセットにおいてSOTAを達成した。』
GLUE、RACE、SQuADはそれぞれベンチマークとして用いられるデータセットです。それぞれThe General Language Understanding Evaluation(GLUE)、The ReAding Comprehension from Examinations(RACE)、The Stanford Question Answering Dataset(SQuAD)の略となっています。これらのベンチマークでこれまでのSOTAを上回ったとされています。

These results highlight the importance of previously overlooked design choices, and raise questions about the source of recently reported improvements. We release our models and code.

和訳:『以後で取り上げる結果のハイライトでは従来見過ごされたハイパーパラメータやデータセットなどの選択やチューニングの重要性について示し、近年報告されている改善の源泉に関する問題提起を行なっている。当論文を公開するにあたりモデルとコードを公開した。』
モデルやコードに関しては下記で公開されています。

GitHub - pytorch/fairseq: Facebook AI Research Sequence-to-Sequence Toolkit written in Python.

また従来見過ごされた(previously overlooked)に関しては、BERT[2018]からの研究の潮流が期間的に早いというのと、BERT自体がそれまでと比較して大きな成果となったためにまだ検討しきれていない部分が出てきているという認識で良さそうです。


2. まとめ
#13ではRoBERTa(RoBERTa: A Robustly Optimized BERT Pretraining Approach)の概要を掴むにあたって、Abstractの和訳と簡単な補足を行いました。
#14では同じくRoBERTaの詳細について確認していきます(replication studyなので全体を満遍なく確認するのが良さそうです)。

国際マーケティング、インターネットとEビジネス、リーダーシップ、ロイヤルティ|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #11

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#10では実戦とコントロール(Implementation and Control)、情報と情報分析(Information and Analytics)、イノベーション(Innovation)、無形資産(Intangible Assets)について取り扱いました。
https://lib-arts.hatenablog.com/entry/kotler_marketing10
#11では国際マーケティング(International Marketing)、インターネットとEビジネス(Internet and E-Business)、リーダーシップ(Leadership)、ロイヤルティ(Loyalty)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 国際マーケティング(International Marketing)
2. インターネットとEビジネス(Internet and E-Business)
3. リーダーシップ(Leadership)
4. ロイヤルティ(Loyalty)
5. 感想・まとめ

 

1. 国際マーケティング_International Marketing(簡単な要約)
国内市場のみに習熟した企業はやがてその国内市場を失うことになる。強力な外国企業が参入し、勝負を挑んでくることは避けられないからである。
企業にとって最も望ましい成長の道筋は、地域化もしくはグローバル化することである。関税、言葉・文化の違いなどの障害やリスクなどを鑑み、海外進出には大抵の企業が躊躇する。一方で、リスクの分散や製品の向上の機会といった刺激を得られるなどメリットもある。
しかし、海外進出する際には製品やマーケティングミックスを当該市場に適合させる必要がある。ネーミングひとつとっても文化圏が違うと注意が必要である。
企業がグローバル企業へと発展していくにあたっては以下の5つの段階を踏む。

1) 消極的に輸出
2) 流通業者を使って積極的に輸出
3) 海外に営業所を設置
4) 海外工場を設置
5) 海外に地域本部を設置

海外進出を果たした当初はカントリーマネジャーの企業家精神を尊重し、運営管理のコントロールが比較的穏やかになる傾向にある。その後に、グローバルな計画立案や意思決定プロセスを標準化するため、次第に戦略的コントロールが強化されるのが一般的である。
企業が最も成功を収められるのは、既存企業がニーズを満たしていない、巨大な標的市場を見出した時である。この標的市場に向けて容易に真似できない新たな価値を創出するとともに当該市場に奉仕しようという意識を社内に根付かせることができれば、成功の確率は大きく高まる。
地域担当の管理者を任命する際には以下の二つの問題が生じる。

1) 地域管理部門を本部に設置するか、当該地域の首都に設置するかという問題
2) 地域担当管理者を本部の利益代表とするか、カントリーマネジャーの利益代表とするかという問題

カントリーマネジャーが大幅な自由裁量を認められることもあるが、その場合でもある程度の本社の介入を受ける可能性があることに注意が必要である。


2. インターネットとEビジネス_Internet and E-Business(簡単な要約)
インターネットの登場は事業をより効率的に運営する上で、抜本的とも言える新たな可能性を開くことになった。インターネットはコミュニケーション、購買、販売のための、極めて優れた新しい基盤を提供した。インターネットをいち早く活用した企業は後発の企業に比べて大幅なコスト削減が可能になった。
インターネットのもたらす恩恵は多種多様であるが、ほかの応用例を押しのけて一般の耳目を集めたのは電子商取引である。電子商取引の登場で、インターネットは販売チャネルとして利用されるようになった。


3. リーダーシップ_Leadership(簡単な要約)
全てのマネジャーはリーダーであるべきだが、ほとんどのマネジャーは管理者にとどまっている。大半の時間を予算や組織図、コスト、コンプライアンス(法律遵守)などの細々した事柄に使っていたらそれは管理者である。リーダーになるためには、人と接する時間、機会を探し求める時間、ビジョンを描く時間、目標を設定する時間を増やさなくてはならない。リーダーには優れたセールススキルが求められる。対照的に、稚拙なマネジャーは、指令と統制に頼って自分のアイデアを実現しようとする。
リーダーはビジョンと人柄によって尊敬を集められる人物でなければならない。フォロワーがリーダーは自分たちに尽くしてくれていると確信するようでなければならない。真のリーダーシップはフォロワーのために発揮されるべきであり、リーダー自身の利益のために発揮されてはならない。献身的なフォロワーを得られた時、リーダーシップは最大の力を発揮する。
CEOの主な仕事はメンバー相互が緊密に協力し、一丸となって企業の主要目標の達成を目指すような専門家チームを作り上げることである。優秀なリーダーはイエスマンを嫌い、同僚からの忌憚のない意見を求める。そのためにリーダーは建設的に議論を戦わせ、想像的に思考することを奨励する。大局的なものの見方を促し、全力を尽くした上での誤りならば咎めようとしない。
ちなみにマーケティングに関していえば、実に多くのCEOがマーケティング費を単なるコストと見なし、出費の大部分が投資であるという事実を見落としているので注意が必要である。


4. ロイヤルティ_Loyalty(簡単な要約)
ロイヤルティ(忠誠心)とは国や家族、友人に対して深く傾倒した状態を指す、古めかしい言葉である。その言葉がブランドロイヤルティという形でマーケティングの世界でも用いられるようになった。アップルのマッキントッシュユーザーは利便性とは全く違う理由で切り替えを考慮しない。BMWのファンもメルセデスに切り替えようとはしない。顧客の相当数が他社に切り替える意思を持たない場合、その企業は高いブランドロイヤルティを享受しているといえる。
ロイヤルティの高い顧客を確保するには利益のあがる顧客と利益のあがらない顧客を差別することが必要である。賢明な企業は自社の提供物から最も高いベネフィtとを得られるような顧客層を特定し、明確な定義を与えている。こうした顧客はロイヤルティを持続する可能性が最も高く、長期に渡って現金収入をもたらすとともに、口コミで次々と新規顧客を呼び込んでくれる。これがロイヤルティの高い顧客からもたらされる見返りである。
企業はロイヤルティの高い顧客に報いるべきであるが、極めて多くの企業が既存顧客よりも新規顧客の方を優遇していることに注意が必要である。
また、顧客ロイヤルティの向上は、全ての企業が目指すべき事柄であるが、ロイヤルティが競合他社が自社製品の全てを凌駕する強力な価値提案を示してきた際にそれでも顧客を引き止められるほど強力なものではない。



5. 感想・まとめ
#11では国際マーケティング(International Marketing)、インターネットとEビジネス(Internet and E-Business)、リーダーシップ(Leadership)、ロイヤルティ(Loyalty)について取り扱いました。気になったのはマーケティングはコストではなく投資であることについての論述でした。リーダーシップの本題とは関係ないのですが、マーケティングをコストとみなしがちだったので、この辺は少々考え方を修正するように意識したいポイントでした。またロイヤルティの記述が非常に興味深く、執筆当時よりもさらに便利になったこの頃では、従来よりもロイヤルティという要素が多様化してきているのではと感じます。
#12ではマネジメント以降について取り扱います。