Ch.4 会計・ファイナンス①|基本フレームワーク50[グロービスMBAキーワード] #11

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連載の経緯については過去記事に書いていますので省略します。詳しくは#1~3あたりをご確認いただけますと嬉しいです。
#8~#10ではCh.3の組織マネジメント・リーダーシップを取り扱いました。

 #11ではCh.4の会計・ファイナンスのNo.37の損益分岐点分析からNo.39のバランススコアカードについて取り扱えればと思います。
以下目次になります。

1. 4章まとめ①(会計・ファイナンス
1.1 損益分岐点分析(No.37)
1.2 ABC分析_活動基準原価計算(No.38)
1.3 BSC_バランススコアカード(No.39)
2. まとめ

 

1. 4章まとめ①(会計・ファイナンス
1.1 損益分岐点分析(No.37)
・本の内容の要約
No.37の損益分岐点分析は、「費用を固定費と変動費に分類した上で損失と利益が分岐する点、つまり利益がゼロとなる売り上げレベルを求める分析」とまとめられています。固定費は仮にその期間の売上がゼロだったとしても支払う必要のある費用のことで、一方で変動費は一定の生産能力や販売能力の下で売上に比例して発生する費用です。具体的には固定費が正社員の人件費や賃料が該当し、変動費仕入原価や減価償却費などが該当します。損益分岐点を計算するためにはまず全ての費用を一旦変動費と固定費に分けた上で図表37-1のように計算を行っていきます。
利用にあたってのコツ・留意点としては、「計算の厳密性にこだわるよりラフでも良いから前提を詰める必要があること」と、「固定費は数年のスパンで見ると売上に応じて増加していくため、短期間のマネジメントサイクルの中で一定の額となる費用だと考えるべきこと」の二つがまとまっていました。

・読んでみての解釈
計算の厳密性にこだわらないことについてが非常に納得でした。この手の分析を行う際に細かい計算の妥当性を見られることがあるのですが、ナンセンスです(この辺気にしすぎるマネージャーは多いので難しいところですが)。不確定要素を多く含む計算の際は厳密性よりも全体のストーリー性を重視しなければ想定外の要素に弱くなってしまいます。
ドラッカーのSection-29でもありますが、大雑把な値の方がかえって真実を見せる場合も時にはあります。細かい数字の厳密性にこだわると大枠のところで騙されることもあり、この辺はよく使われているテクニックだと思います。これまでの経験上日本人はこの辺の数字的なセンスが弱い人が多い(意外と経歴的には良い人が逆にこの辺に嵌るパターンも多い)ので、注意が必要です。パフォーマンスだけで評価するのではなく、コストに見合ったパフォーマンスなのかを判断していく癖をつけるとこの辺は良いのではないかと思います。

 

1.2 ABC分析_活動基準原価計算(No.38)
・本の内容の要約
No.38のABC分析(活動基準原価計算)は、「特定の製品やサービスとの関連が曖昧な間接費をそれぞれの製品やサービスのコストとしてできるだけ正確に配賦することによって、コストを正確に把握しようとするロバート・キャプラン教授らが提唱した考え方である」とまとめられています。顧客ニーズの多様化に伴い、多品種少量となった結果、相対的に間接費の割合が増大しその配分によってコスト計算結果が大きく異なってしまうといった問題が、これが出てきた背景としてあります。具体的には図表の38-1のような形でコストの実態に迫ろうとしたようです。
利用にあたってのコツ・留意点としては、「細分化することに分析者の注意が行きがちだが、完璧を期すのではなく『Good Enough』のレベル感を目指すのが現実的であること」と、「正確なコストを出すためにも追加の人件費や機会費用が生じてしまうので、どの程度までのこだわりが最も費用対効果が高いかを考える必要があること」の二点が挙げられています。

・読んでみての解釈
考え方としては面白いなと思いました。が、同時に運営の難しい考え方だなという印象も受けました。この辺は解釈論に陥りがちなので、主観的に見られることもあり得ます。計算ツールとして用意して、ブレストやディスカッションのベースに用いるのが良いのではと思いました。

 

1.3 BSC_バランススコアカード(No.39)
・本の内容の要約
No.39のバランススコアカード(BSC; Balanced Scorecard)は、「『財務』、『顧客』、『社内(ビジネス)プロセス』、『学習と成長』の4つの視点で業績管理指標をバランスよく組み合わせ、戦略実行や業績を行うためのロバートキャプラン教授らが提唱したツール」とされています。4つの視点に基づいて20~30のKPI(Key Performance Indicator)を選択し、日々の活動の中でモニタリングをすることで戦略目的の達成を図るとされています。4つの視点は後ろの方ほど時間的に早いため、財務は最終的にきいてくるポイントになります。
利用にあたってのコツ・留意点としては、「BSCは中途半端に用いると逆効果であること(失敗する典型的な要因としてはトップコミットメントがないなどが挙げられています)」と、「BSCはPDCAに結びつけて目的を見失わないようにツールとして程よく活用していくべきこと」の二点が挙げられています。

・読んでみての解釈
KPIの設計は経営判断なのでなかなか難しいポイントだなと感じました。主観的な意見交換になることが多く、客観的なディスカッションができないケースも多いので、会議などの運営方法なども色々とノウハウが必要なのかなと思います。
秀逸だなと思ったのが、4つの視点が時間的に並列ではないというポイントです。財務が後にくることは当然っちゃ当然かもしれないですが、あまりにも無頓着になりすぎるのも良くないし、かといって短期的に見過ぎるのもよくないのでバランスを持った視点が重要だと思います。

 

2. まとめ
主観的に話し合われる場で分析者として話をリードしていくのはこの辺は非常に難しそうですが、逆に意思決定者としてこれらを理解した上で全体のバランスを取っていくのは意識すればできそうなのでそちらの方が良いかなと思いました。
色々と読み進めて見て感じましたが、分析やコンサルティングの一番難しいポイントは必ずしも客観的な視点が求められる訳ではないというところに尽きるかなと思います。バランスを取った形でいかに進めていくかは非常に難しいので注意が必要です。