数式アレルギーの方が数式が多く出てくる本を読めるようになる方法

機械学習や最近だと量子コンピューティング系の勉強会をいくつか主催しているのですが、慣れていない方がよくぶち当たるのが本に数式多い問題です。
大学1~2年レベルのスキルがあれば読める本を読みやすいと言って薦めてしまうことにより、結果多くの方が挫折してしまうという事件が毎月のように起きます。でも、コツさえ掴めば本当はそんなに難しくはないのです。今回は数式アレルギーの方の苦手意識を無くせればと思って書いてみようと思います。


わかりやすく具体的に解説するために実際に読み解く例がある方が良いので、読解のコツをまとめた「はじめてのパターン認識」を題材にしたいと思います。

まずは考え方のベースをまとめておきます。
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・部分と全体を意識
・目的と手段を意識
・抽象と具体を意識
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上記三点を理解するだけで話の見通しが非常に良くなります。


以下具体的に読み解く上での考え方やコツを箇条書きの形式でまとめていければと思います。(例のごとく重要な順番にまとめますので、上から読んでいって飽きるところまで見ていただけらと思います。)

1. まずは全体像と構成を掴む
とにかくここに尽きます!1冊を通しての論旨の全体像を掴み、構成を把握することです。
本を読んでいて訳がわからなくなったり辛くなったりするのは大概全体の論旨や構成を見失っているケースが多いです。
「はじめてのパターン認識」の読解シリーズでは#1で全体の構成を解説していますが、2章に全体の論旨が集まっています。

機械学習の概論|はじめてのパターン認識1章~2章 #1 - lib-arts’s diary
そのため、本1冊を通して2章がわかればそれで良いです。全て理解しなくては前提で入るとどこかの各論で詰まりますが、このように何章に何が書いてあるかを予め明確にしておくと、難しい話の中でも優先順位を付けることができるため迷いづらくなります。


2. 詳細を読む際は目的を明確にする
詳細は全て理解しようとしてしまうと時間がすごくかかってしまうので、優先順位(priority)をつけて目的をはっきりさせた上で取り組むと良いです。こうすることで分量の多い本だったとしても必要ないところは流してしまえるようになります。読解メモでも難しいところは流すように書いています。
また、この際の判断ですが、馴染みのない分野だと判断に困るので詳しい人に聞くようにしています。ただし、基本ができていない方に聞くとミスリードされるので、自分の得意な分野もしくは基礎教養的な話を通してある程度の相手の思考レベルは確認しましょう。(ベースの教養が重要なのはこういう際に相手の話の信頼度を推し量れるというのも大きいです)
最近量子コンピューティングの本を読み始めたのですが、この辺の優先度がまだわかっていないのでこちらに関しては詳しい方に勉強会で聞きながら進めていく予定です。(優先順位の質問は相手の時間をさほど多くは取らないので、上級者の方も優しく答えてくれるケースが多いです)


3. 数式は定義(前提)と導出結果は必ず抑え、式展開は場合によっては捨てる
定義と式展開は分けるべきです。どちらも追うと大変ですが、定義の式をずっと眺めながら具体的に値を入れたりするとなんと無く感覚がつかめてきます。

関数近似で行う予測・識別|はじめてのパターン認識6,7,8章 #4 - lib-arts’s diary
上記の#4の例のを元に解説しますが、(6.11)と(6.13)がそれぞれ定義式と解いた結果なので抑えねばなりません。過程の計算は場合によっては捨てても良いです。(はじめてのパターン認識が読みやすいのはこの辺の変形過程を飛ばしてくれるので読み流しやすいというのもあります)
こういった読み方は学校だと良くないかもしれませんが、ビジネスマンは時間との勝負なのでこのような進め方はありだと思います。理解するのが目的であり、勉強法は手段です。また、導出結果を結局用いることになるので最終的に使うのは導出結果の式だけなのでそこだけわかれば良いというのもある程度割り切る方が良い時があるのでそこも念頭に置いておくと良いです。


4. プログラムを動かしてInput/Outputを掴む
そもそも何を解いているかがわからなくなっているケースもあると思うので、プログラムを動かしたり読んだりするというのも一つの方法です。ある程度イメージをつかんでから理論を確認するという割り切りも重要だと思います。


5. 高校レベルの数学は必要
とはいえ、高校レベル(一部大学の教養過程含む)を知らなければしんどいです。微分と行列だけでも抑えていればできることの幅が広がります。

高等学校数学 - Wikibooks


上記に色々とまとまっているので独学するのも良いですし、独学だとモチベーションの維持が難しければ家庭教師を誰かにお願いするのもありです。理系の学生であれ1,500〜3,000円/hほどでやってくれるのでそこまで高いわけではないし、詰まったところのサポートとモチベの維持目的であれば十分だと思います。(一応3,000円/hで誰かしら紹介できると思いますのでご興味おありの方は別途ご連絡ください)

 

◆ まとめ

色々と書いてきましたが、意外と漠然とした苦手意識も問題なのかもしれません。

一つずつステップアップしていけば好循環が生まれ、だんだんできるようになって行くのではないかと思います!!