Introduction_はじめに|『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』読解メモ #1

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時折ビジネス系の本も読むようにしたいので、『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』を読み進めていきます。

<エッセンシャル版>マイケル・ポーターの競争戦略 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン

選定の経緯としては、名著のガイダンス的な役割の本を読めればと探していたところ、こちらを見つけ良さそうだったので選びました。また内容としても競争戦略はより深く知りたい内容ではあったのでちょうど良かったというのがあります。
#1でははじめにのところで記載されている、執筆にあたっての背景と、各章のロードマップについて見ていきます。
以下、目次になります。
1. 執筆にあたっての背景
2. 各章のロードマップ
3. 感想・まとめ


1. 執筆にあたっての背景、本の概要
1節では執筆にあたっての背景のところについてまとめていければと思います。この本はHBS(ハーバード・ビジネス・レビュー)や、ハーバード・ビジネス・スクールの運営にあたって、マイケル・ポーター(本書に習い敬称は略します。)と仕事をされている、ジョアン・マグレッタ(Joan Magretta)さんによって執筆されたものです。マイケル・ポーターによって執筆協力もなされているので、かなり参考になる内容であると思われます。
執筆にあたってはマイケル・ポーターの著作は素晴らしいことについて述べた上で、古典の厄介なところとして「誰もが読んでおけば良かったと思うが、誰も読みたいとは思わない」という点をあげています。とはいえ、戦略に本気で取り組もうという人にとっては、ポーターの研究こそが土台となるため、こちらの本を通してマイケルポーターの研究のエッセンスを「企業の経営者や管理職のためにまとめた」とあります。一冊丸々が要旨のようなものだとされています。
この本の前提となる基本的な考え方は実に単純なものであるとされており、「明晰な戦略思考は、どんな状況におかれたどんな経営者にとっても不可欠であり、ポーターの研究が習得すべき基本的な原則と枠組みを与えてくれる」とされています。「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」とポーターはことごとく述べているとも強調されています。
また、以下に本のテーマを絞るにあたってまとめられている、「やらない」ことについてまとめておきます。

・戦略研究者向けの学術向けの本を目指さず、想定読者は経営者、管理職、コンサルタントなどである
・競争と戦略に焦点を絞り、ポーターの研究の全てを要約しようとしない
・後の研究を反映させたりはするが、ポーターの研究を拡張はしない
・How to本ではなく、どのように考えるべきかの指針を示し、優れた戦略とそうでない戦略を見きわめる方法を示す

上記で大体の執筆にあたっての背景や本の概要がつかめたので、1節はここまでとします。

 

2. 各章のロードマップ
2節では各章のロードマップについてまとめていきます。大きく分けると二部構成になっていて、第Ⅰ部は競争、第Ⅱ部は戦略を扱うとされています。
まず第Ⅰ部については「競争とは何か?」ということで、競争について取り扱われています。競争を取り上げる理由としては、「競争があるからこそ戦略が必要になる」という単純な理由とされています。第Ⅰ部では戦略を考えるための重要な下準備として、競争が起きる仕組みを詳しく説明し、競争と競争優位についての最もありがちで企業を誤りに導く思い込みを取り扱うとされています。第Ⅰ部は1〜3章の三つの章で成り立っており、以下それぞれについて簡単に要約します。

第1章 競争 ー 正しい考え方
競争の本質と仕組みに対する思い違いは戦略の誤りを招くが、競争に勝つには「最高を目指す」のが一番というのもよくある誤解である。この考え方は実は自己破壊的で、底辺に向かうゼロサム競争をあおりかねない。組織は独自性を目指して競い合うことでこそ、卓越した業績を持続させることができる。

第2章 五つの競争要因 ー 利益をめぐる競争
第2章では競争が、売り上げをめぐる強豪企業間の直接対決にとどまらない、より幅広いものであることを見ていく。競争とは利益をめぐる広い意味での攻防であり、業界が生み出す価値の分配をめぐる駆け引きである。「五つの競争要因」を使うことで利益をめぐる競争をわかりやすく表すことができる。

第3章 競争優位 ー バリューチェーン損益計算書
「競争優位」という言葉は漫然と使われるようになってしまったが、正しく理解すれば自社の創造する価値(価値創造)とそれを創造する方法(バリューチェーン、そして業績(損益計算書)とのつながりをはっきりたどることができる。

第Ⅱ部では「戦略とは何か」という問いに答えるとされています。

大まかに言って卓越した経済的業績をもたらす戦略とは競争から身を守るための防御手段であるとされており、第4章〜第8章にそれぞれ挙げる5つの基本的な条件をクリアするものを堅牢な戦略と言うとされています。以下、第4章〜第7章についてそれぞれ要約します。

第4章 価値創造 ー 戦略の核 (第一、第二の条件)
戦略の第一の条件としては顧客への独自の価値提案をするところにある。また、独自の価値提案をするにあたって必要となる、特別に調整されたバリューチェーンを持っていることが優れた戦略の第二の条件となる。

第5章 トレードオフ ー 戦略のかすがい (第三の条件)
戦略の第三の条件はトレードオフで、模倣されにくい選択を行うものである。トレードオフを行うというのは制約を受け入れることなので、おそらく最も厳しいものと見ることもできる。

第6章 適合性 ー 戦略の増幅装置 (第四の条件)
戦略の第四の条件は適合性(fit)であり、適合性は単なる連携を超えて、競争優位を「増幅」させ、その持続性を高める働きがある。

第7章 継続性 ー 戦略の実現要因 (第五の条件)
戦略の第五の条件としては継続性がある。企業は変化しすぎるまたは誤った方法で変化することがある。戦略における継続性の役割を理解すれば変化そのものに対する考え方が変わり、組織は戦略を継続することで適応力とイノベーション能力を高めることができる。

ここまでで本書の一通りのロードマップについては把握できたので2節はここまでとします。


3. 感想・まとめ
はじめにを一通り流して見た感想としては、「競争と戦略」についてが非常に興味深いということです。競争においての論述が第Ⅰ部、戦略が第Ⅱ部ですが、第Ⅱ部の戦略が特に面白そうな印象を受けます。独自性、トレードオフ、適合性はよく触れられると思うのですが、7章で戦略の第五の条件として挙げられている継続性が非常に興味深かったです。
確かに戦略は継続的に用いることで成果の出るものなので、この視点は大事にすべきだと思われました。
#1ではこのように「はじめに」の内容を見てきました。
#2ではこれを受けて第1章の「競争 ー 正しい考え方」について見ていきます。