Ch.10_政府の組織論_前編|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #13

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課題本として、「H.ミンツバーグ経営論」を設定したので読み進めていきます。

H.ミンツバーグ経営論 | 書籍 | ダイヤモンド社

#12では第9章の『オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図』を取り扱いました。

Ch.9_オーガニグラフ:事業活動の真実を映す新しい組織図|『H.ミンツバーグ経営論』読解メモ #12 - lib-arts’s diary

#13では第10章の『政府の組織論』の前編として「顧客、クライアント、市民、そして被統治者」までの内容を取り扱っていきます。
以下、目次になります。
1. バランスの勝利
2. 公共セクターと民間セクターの違いを超えて
3. 顧客、クライアント、市民、そして被統治者
4. 感想・まとめ


1. バランスの勝利(簡単な要約)
旧東欧の共産主義体制の相次いだ崩壊に際し、「資本主義は勝利した」という声が広く浸透していった一方で、それがどのような影響を持つのかについてわからなくなってしまった。影響はひどくマイナスどころか危険ですらあると思われる。というのも「資本主義は勝利した」という考えそのものが間違っているからである。
我々の社会では産業界と政府の関係全体が混乱してしまっていると思われる。これを何としても解決しないことにはかつての東欧と同じような状況に陥るだろう。
資本主義は決して勝利などしておらず、勝利したのはバランスである。旧西側世界の人々はバランスの取れた社会で暮らしてきたので、民間・公共はじめ、あらゆるセクターに活力がみなぎっている。一方で旧共産圏の社会は完全にバランスを失っており、組織的な活動は全てに渡って国家によってコントロールされ、国家に対抗できる勢力が皆無に等しかった。
皮肉なことに、「資本主義は勝利した」という考えが元で現代では旧西側の社会はバランスを失いつつある。この傾向はイギリスとアメリカでとりわけ深刻であり、バランスが崩れて民間セクターの力が強まったとしてもより良い社会が実現するわけではない。「組織はその構成員とは無関係に自由を手に入れられる」という考え方自体が民主主義を脅かすため、仮に企業が真の自由を手にすれば人々は自由ではなくなるはずなので注意が必要である。

 

2. 公共セクターと民間セクターの違いを超えて(簡単な要約)
民間セクターと公共セクターにどのように資源を配分すべきかをめぐっては延々と議論が続けられてきた。資本主義と共産主義、民営化と国有化、市場の重視と政府による統制、どの議論も例外なく個々の民間勢力を政府全体と対比させてきた。だがこのあたりでこうした二元論には大きな限界があることに目覚めるべきである。
また、民間と国有の組織以外にも同様の注意を払うべき組織形態が二つあるので下記にまとめる。

(1) 共同所有型の組織
-> 農協のようにサプライヤーが統制する組織、相互保険会社や生活協同組合のように顧客が統制する組織、エイビスなど一部の民間企業のように従業員が統制する組織など様々な形態がある。

(2) 所有者のいない組織
-> 自発的に役員となった人々、しかも往々にして極めて多様な人々によってコントロールされる。主に非営利で、非政府組織(NGP; Non-Governmental Organizations)と呼ばれることが少なくないが、同時に非事業組織(NBO; Non-Business Organizations)や非組合組織(Non-Cooperative Organizations)でもある。

従来の政治的発想では上記四つの組織形態を一列に並べて、左端に国有組織、右端に民間組織、両者の間に共同所有組織と所有者のいない組織を配列すると思われる。が、これらは適切ではないと考えられ、理由としては国有組織と民間組織にもやはり共通点が多々あるということである。たとえば組織構造に着目すると民間企業、国営組織は共にヒエラルキー構造を取り、所有者(株主)あるいは国によって厳しく統制されている。言い換えれば直線を折り返してU字型にすべきである。
バランスの取れた社会を実現するためには先に紹介した四つの組織形態を使い分けると良い。これには時間がかかり、道のりは決して平坦ではないが、現在旧東欧諸国の一部で試みられている。


3. 顧客、クライアント、市民、そして被統治者(簡単な要約)
顧客、クライアント、市民、そして被統治者、我々は社会いの中でこれら四つの顔を持っている。顧客あるいはクライアントとしては、政府と対等かつギブアンドテイクの関係を享受している。顧客としては政府から直接に行政サービスを受け、市民としては公共インフラから間接的に便益を得ている。
だが、政府の顧客向けサービスと市民向けのサービスには大きな違いがあり、頻度が異なる。顧客向けサービスに特化した公共セクターの活動は少ない一方で、市民という立場で考えた場合に公共のインフラが非常に多いことがわかる。社会的(例:美術館)、物理的(例:道路や港)、経済的(金融政策)、仲裁的(裁判所)、国際的(例:在外大使館)な性格の各種インフラ、さらには政府そのものを支えるためのインフラ(選挙制度など)も用意されている。


4. 感想・まとめ
#13では第10章の『政府の組織論』の前半の「顧客、クライアント、市民、そして被統治者」までの内容を取り扱いました。公共セクターと民間セクターなどについてはあまり意識する機会が少なかったので、視点として非常に参考になりました。
#14では同じく第10章の『政府の組織論』の「マネジメントにまつわる誤解」以降ついて取り扱っていきます。