解析学(mathematical analysis)の歴史(解析学の基礎付け〜)|オムニバスでまとめる大学数学 #2

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当シリーズは大学数学をオムニバス形式で取り扱っていきます。
手始めに解析学(mathematical analysis)について取り扱おうということで、#1としては、解析学の歴史にフォーカスをあてて話を進めました。

#1ではポスト微分積分学まで取り扱ったので、#2ではその続きを取り扱っていければと思います。
以下、目次になります。
1. 解析学の歴史(解析学の基礎付け〜)
2. まとめ


1. 解析学の歴史(解析学の基礎付け〜)

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解析学 - Wikipedia

#1では上記の目次の中から「ポスト微分積分学」までを取り扱いました。#2ではその続きということで、「解析学の基礎付け」以降について取り扱っていきます。
y(x)=\frac{a_{0}}{2}\sum_{k=0}^{\infty}(a_{k}\cos{kx}+b_{k}\sin{kx})
上記のフーリエ級数を熱伝導問題に用いるにあたって、この級数の収束について厳密に証明するために、それまでは必ずしもそこまでの厳密さが必要ではなかった級数・関数・実数などの概念の基礎付けが行われていくことになりました。

- 級数
フーリエ級数の生みの親のフーリエは現代的なレベルで厳密な形でフーリエ級数の収束を研究していませんでしたが、当時は級数の収束判定は困難な問題でした。有名なオイラーガウスですら多少であれば級数論に取り組んでいるものの、一般の級数の収束に関する研究はなく、ボルツァーノやコーシーの級数収束に対する理解も現代から見れば不完全なものが残るものとなっています。
級数の収束の厳密化は解析学の基礎づけに必須であり、フーリエ級数の収束問題の十分条件を与えたディリクレの論文は解析学の厳密化の一歩を踏み出した貴重なものと捉えられます。

- 微積分・関数の厳密化
関数概念の近代化もこの頃始まりました。従来の考え方ではオイラーの著作などにあるように、関数はこれまで具体的な式で書き表せるものという認識であったが、フーリエ級数に関するディリクレの論文によって関数も値の対応としての認識に変革して行くことになります。厳密に対応として認識せざるを得なくなったのはフーリエ級数の研究によるものとされています。
フーリエ級数の研究を発端に、従来は直感に任せて進められてきた微積分などの計算に対し、その収束や極限に対する厳密な理論が必要となりました。従来は無限小という実体不明な量に頼っていたが、コーシーやボルツァーノらによって極限や連続、微分積分の可能性についても厳密に論じられるようになりました。
1854年のリーマン積分、1902年のルベーグ積分などもこの流れをくんでいます。

- 集合論・測度論
数学の基礎付けにおいて忘れてはいけないのが集合論ですが、本格的に導入されたのは1874年のカントールによるものである。R・ベール、ボレル、ルベーグなどの業績には集合論は欠かせないものでした。
ルベーグ測度を導入することによって定式化されたルベーグ積分論によって、長さ、面積、堆積などを完全に一般化することに成功し、これによって曲線や局面の長さや面積などを論ずることが可能になりました。
また、ルベーグ積分論はコルモゴロフによって確率論の厳密化にも用いられ、確率論を現代解析学として扱うことを可能としました。このため、純粋数学としての確率論は現代数学では解析学に分類されます。
これによって積分の理論は更に一般化され応用範囲も広まり、ブラウン運動のような複雑な現象ですら数学的に取り扱うことが可能となりました。

- 実数論
解析学は実数の性質に基づいているが、デーデキントやカントールはその実数の性質を深く研究し、実数を特徴づける条件を見出しました。
一見、様々な定義があるようにみえる実数ですが、これらは古典論理の範囲内において全て同値であることが証明されています。

 


・関数論の登場
19世紀に入って、解析学は本格的に複素数を利用するようになりました。複素数変数の関数や微積分を扱う分野は複素関数論、複素解析学などと呼ばれています。ワイエルシュトラスやリーマンによって一変数の複素関数の理論が整えられ、複素関数論は独立した一つの数学として扱われるようになりました。また、多変数の複素関数の理論は20世紀に入ってから、アンリ・カルタン岡潔らによって詳細が研究されました。
また、複素解析学は楕円関数や素数定理とも関連し幅広い応用を持ち、現代では物理や工学においても必須の概念となっています。


関数解析学
微分法は極値を求める問題ですが、これを一般化し、与えられた汎関数極値を持つような関数を求める問題が変分法であり、物理学において広く応用されています。


・超関数
20世紀に入ると偏微分方程式フーリエ解析学において関数や導関数といった概念を拡張することを迫られました。それに対し、ローラン・シュヴァルツは超関数 (distribution) および超関数の意味での導関数を導入することによってこれを成し遂げました。


2. まとめ
#2では「解析学の基礎付け」以降の歴史について確認しました。一旦言葉を追うのを中心にしたため、Wikipediaの内容がそのままの箇所もいくつかありますが、深く考察するにつれて少しずつオリジナリティを入れていければと考えています。
#3では今回も少し触れられている複素解析について取り扱えればと思います。