「国際法の歴史」と「集団安全保障」|法と国家を考える #4

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当シリーズでは「法」と「国家」を考えるというテーマで色々と議論をしていきます。#1では連載の経緯に加え、最初に簡単に注意事項についてまとめた上で、「法」や「国家」の言葉の意味の整理を行いました。

引き続き、#2では「法の精神」と「三権分立」について、#3では「自由権」と「公共の福祉」について取り扱いました。

https://lib-arts.hatenablog.com/entry/law_state3
#4では「国際法の歴史」と「集団安全保障」について取り扱います。
以下目次になります。
1. 「国際法」の概要
2. 「国際法の歴史」の概要について
3. 「集団安全保障」について
4. まとめ


1. 「国際法」の概要
1節では「国際法」の概要について簡単に抑えます。

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国際法 - Wikipedia

上記が「国際法」の概要ですが、国際法(International Law)は「国際社会(the international community)を規律する法であり、条約、慣習国際法、法の一般原則が国際法の存在形式とされる」と記載されています。

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国際法は条約(成文化されたもの)と慣習法(慣習によって成り立つ不文のもの)と法の一般原則によって成り立っており、主に国家や国際機構の行動が規律されるとなっています。

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上記は条約の記述ですが、条約は「一定の国家や国際組織などの国際法主体が同意を元に形成する、加盟当事者間において拘束力を有する規範をいう」とされています。二国間条約の他に多数国間の条約があり、多数国の間での条約では条約成立後に各国が自国内の議会や首相によって認可する批准の手続きが取られることが多いとされています。

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慣習国際法は不文ではあるが条約と同等の効力を有する法源であり、もはや慣習国際法として成立したとされれば国際法として国家を拘束するとされています。

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具体的な例がある方がわかりやすいのと3節で「集団安全保障」について確認するので、国連憲章51条の「自衛権」について簡単に見ておきます。国連憲章51条で「自衛権(self-defense)」は、個別的自衛権(individual self-defence)や集団的自衛権(collective self-defense)がともに「固有の権利」として規定されています。このように国家間における規範として条約や慣習国際法が積み重なった全体を国際法としていると考えておくと良さそうです。

大体の概要については把握できたので1節はここまでとします。


2. 「国際法の歴史」の概要について
2節では「国際法の歴史」について取り扱います。

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上記では実定国際法の成立について記載されています。16世紀〜17世紀のヨーロッパにおける宗教戦争三十年戦争のことを主に指しており、キリスト教におけるルターの宗教改革によって生じた「プロテスタント派」と従来ながらの「カトリック派」との対立からこの戦争は起きたらとされています。この三十年戦争講和条約として締結されたのが1648年のウェストファリア条約(ヴェストファーレン条約も読み方が違うが同義である)で、このウェストファリア条約が近代における国際法発展のきっかけとなり、近代国際法のベースになったとされています。ウェストファリア条約以降は、対等な主権を有する諸国家(主権国家)が、勢力均衡の中で国益をめぐり合従連衡を繰り返す国際秩序が形成され、この条約によって規定された国際秩序はヴェストファーレン体制と呼ぶとされています。

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次に上記では、国際法の対象を主権国家だけではなく、個人も国際法上の権利、義務の主体として位置づけられるようになったことについて記載されています。

少々記載がざっくりしていたので詳細については、スペイン継承戦争(〜1713)の講和条約としてのユトレヒト条約ナポレオン戦争(〜1815)の終結にあたってのウィーン会議第一次世界大戦後(〜1918)のヴェルサイユ条約などに関しても考察しながら抑えておくのが良さそうです。

大体の概要についてつかめたので2節はここまでとします。


3. 「集団安全保障」について
3節では「集団安全保障」について取り扱います。

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集団安全保障 - Wikipedia

まず上記では、集団安全保障は「潜在的な敵国も含めた国際的な集団を構築し、不当に平和を破壊した国に対してはその他の国々が集団で制裁するという国際安全保障体制の一種である」とされています。

以下、「国際法」と話を絡めるにあたって「集団的自衛権」について見ていきます。

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集団的自衛権 - Wikipedia

上記がWikipediaの「集団的自衛権」の記述の冒頭ですが、集団的自衛権は「ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である」とされています。

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次に「集団的自衛権」の権利の性質について見ていきます。国家の自衛権は長らく議論されてきた国際慣習法である一方で、集団的自衛権国連憲章に現れるまで、国際慣習法上の権利として論じられたことがないものであったとされています。

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集団的自衛権の取り扱いとして有名なのが、1986年のニカラグア事件であり、この判決において、集団的自衛権の行使のためには個別自衛権を行使するにあたって必要となる必要性と均衡性に加え、武力攻撃を受けた国が「攻撃を受けた旨の表明」と「援助要請」を行うことが必要になるとされています。

日本ではこの「集団的自衛権」の話と日本国憲法9条の「平和主義」に関して、これまで多くの議論がなされてきています。また、自衛隊についての議論についても多いです。詳細の論評についてはここでは避けますが、各論や感情論が多過ぎる印象で、「平和主義」とは何かについてもっと議論するべきなのではないかと思います。法律とは歴史から学んだ知見であり、国際法は国内法に比べて拘束力が弱いと言われることもありますが、法であり歴史を反映したものとなっています。議論にあたって二元論が多過ぎてどれも極端です。「平和」とは何かについてもっと国家全体で議論していく必要があるのではないでしょうか。

「国際平和」とは何かについて学ぶにあたっては、世界史とそれに付随して発展してきた「国際法」に目を向けながら客観的に議論すると良いのではと思います。現状のメディアについては色々とミスリードが多い印象なので、「国際法」に関する教養を一般教養として皆が身につけられると良いのではと思いました。難しい内容まで理解しなくとも、基本を抑えるだけでもっと冷静で客観的な議論ができるのではないかと思います。


4. まとめ
#4では「国際法の歴史」と「集団安全保障」について取り扱いました。
#5では古代中国における「法家」と「秦」について以前の記事も踏まえて考えてみたいと思います。