小売業者とベンダー、セールス・フォース、販売促進、市場細分化|『コトラーのマーケティング・コンセプト』読解メモ #18

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課題本として、「コトラーマーケティング・コンセプト」を設定したので読み進めていきます。

コトラーのマーケティング・コンセプト | 東洋経済STORE

#1ではまえがきと序文について、#2以降では3~4トピックずつ取り扱っています。

#17ではパブリック・リレーションズ(Public Relations)、品質(Quality)、景気後退期のマーケティング(Recession Marketing)、リレーションシップ・マーケティング(Relationship Marketing)について取り扱いました。
https://lib-arts.hatenablog.com/entry/kotler_marketing17
#18では小売業者とベンダー(Retailers and Vendors)、セールス・フォース(Sales Force)、販売促進(Sales Promotion)、市場細分化(Segmentation)について取り扱います。
以下、目次になります。
1. 小売業者とベンダー(Retailers and Vendors)
2. セールス・フォース(Sales Force)
3. 販売促進(Sales Promotion)
4. 市場細分化(Segmentation)
5. 感想・まとめ

 

1. 小売業者とベンダー_Retailers and Vendors(簡単な要約)
小売業者が弱小だった頃は、製造業者が大きな力を発揮していた。最も強い力を持った製造業者は契約内容や自社製品の棚スペースを一方的に決めることもできた。だが、巨大小売業者(ハイパーマーケット、スーパーストア、カテゴリー・キラー)の登場が、両者の力関係を永久に変えることになった。小売業者は製造業者ではなく顧客の代理人となった。
また、巨大小売業者は製品を大量に発注するため、複数の製造業者を競わせ、自社に最も有利な条件を提示させることもできるようになった。巨大小売業者の勢いを止められるのは競争を仕掛けてくる他の巨大小売業者だけになった。
かつて小売業を成功に導く3つのポイントと言えば、「ロケーション、ロケーション、ロケーション」であったが、インターネットの登場で物理的なロケーションの重要性は低下した。何百万人もの人々がアマゾン・ドットコムで本を購入しているが、誰もその所在地を知らない。
今日の小売業者が、過酷な市場環境の中で生き延びるためには、新たな手法を取り入れることが必要で、以下の四つに取り組むべきである。

1) 今以上に時間をかけて顧客を理解する
2) 資金を投じて、買い物を単なる雑用から特別な経験に変える
3) もっと積極的にプライベート・ブランディングを実施する
4) ウェブサイトを立ち上げ、より多くの情報を発信するとともに、顧客にコンタクトや対話の機会を提供する


2. セールス・フォース_Sales Force(簡単な要約)
どの国も就労者の数多くが販売業に従事しているが、人的販売の高コスト構造に加え、インターネットをはじめとする新たなダイレクト・マーケティングの手法の登場で、セールス・フォースの規模と役割を見直す企業が増えている。
販売員の報酬を決定する際には次のことを念頭に置く必要がある。それは、低賃金の販売員はかえって割高であり、高賃金の販売員の方がかえって安くつくということである。トップクラスの販売員が、平均的な販売員の5倍の売り上げを記録することがよくあるが、5倍も給料をもらっていることはないからである。
一方で、収益性など無視して、とにかく売れれば良いと考える販売員には気をつけた方が良い。販売員の報酬は売り上げに連動させず、利益と連動させることが重要である。
販売におけるマーケティングの役割は、以下のような方法でセールス・フォースを支援することである。

・広告を出すとともに、新規顧客開拓のためにリストを購入する
・販売員が訪問先を絞り込めるよう、最も有望な見込み客のプロファイルを作成する
・主要顧客の意思決定権者のために、購入した際の影響や購入すべき論理的根拠を文書化する
・競合他社の強みと弱み、他社の提供物と比較した自社製品の評価などをまとめる etc

 

3. 販売促進_Sales Promotion(簡単な要約)
販売促進とは、顧客の購買行動を将来のある時点ではなく現時点で起こさせるためのインセンティブや褒賞のことである。広告がブランドに対する市場の態度を形成するための長期的なツールであるのに対して、販売促進は購買者の行動を誘発する短期的なツールである。販売促進は広告に比べ即時的で測定可能な反応が得られるという意味で効果覿面である。
現在の広告と販売促進の比率は30対70と言われるが、かつてはこの比率が逆であった。今日の販売促進の隆盛は長期的なブランドの構築よりも現時点の売上を優先するという、企業の姿勢を反映したものである。
販売促進には小売業者向けプロモーション、消費者向けプロモーション、セールス・フォース向けプロモーションの三つがあり、それぞれへの施策は以下の通りである。

・小売業者向け
-> 値引き、広告アロワンス、ディスプレイアロワンス、無料商品提供

・消費者向け
-> クーポン、割り戻し(リベート)、値引き包装(プライスパック)、プレミアム、ご愛顧報奨、コンテスト、製品デモンストレーション、保証

・セールスフォース向け
-> 商品付きの売上コンテスト

販売促進を実施するとほとんどの場合、売上は向上する。だが、ほとんどの場合結果は赤字になる。多くの場合、販売促進が惹きつけるのは、低価格品目当てのブランドスイッチャーばかりであり、ブランドスイッチャーは、別のブランドがセールを開始すると簡単にブランドをスイッチしてしまう。販売促進によって、他社ブランドのロイヤル・カスタマーを取り込むことはあまり期待できない。したがって、ブランド間の差異がほとんどない製品市場は販売促進に最も不向きな市場である。販売促進はブランド間の差異が極めて大きい製品市場で用いた方がより効果的である。
一般論としていえば、販売促進の多用は慎むべきで、値引き、クーポン、ディール、プレミアムなどを絶え間無く提供していると、消費者のマインド内でブランドの価値が低下する恐れがある。販売促進は自社のブランドイメージにふさわしいもの、ブランドイメージを強化するもの、新たな価値をもたらすものでなければならない。

 

4. 市場細分化_Segmentation(簡単な要約)
企業がマス市場という捉え方をやめるようになったのは、比較的大きな市場セグメントを特定し始めたときからである。だんだん企業は大規模なセグメントからより狭いニッチに目を向けるようになり、「35歳から50歳の家庭の主婦」というざっくりとしたセグメントから「25歳から35歳の知的職業に従事するアフリカ系アメリカ人女性」という狭いセグメントに目を向けるようになった。今日でもまだ市場細分化が不足しているように思われる。
セグメントを特定する方法には下記の3つある。

1) デモグラフィック・グループ
-> 年齢や性別などを用いてグルーピングを行う。集団をセグメントに分割するというよりもセクター(区画)に分割するという意味合いが強い。

2) ニーズ・グループ
-> 「食料品の購入に費やす時間を減らしたい女性」のように特定の共通のニーズを持つかどうかでグルーピングを行う。ニーズがはっきりしているため、様々なソリューションでニーズを満たすことが可能である。

3) 行動グループ
-> 実際の行動に基づいてグルーピングを行う。グループはニーズでなく、実際の行動に基づいて定義されており、グループに共通する特性を調べるため、さらなる分析も可能である。

セグメントを明確に特定できたら次の課題は当該セグメントは既存の組織で管理すべきか、それとも別事業を立ち上げるに値するものなのかを判断することである。後者に該当するセグメントを戦略セグメントと読んでいる。


5. 感想・まとめ
#18では小売業者とベンダー(Retailers and Vendors)、セールス・フォース(Sales Force)、販売促進(Sales Promotion)、市場細分化(Segmentation)について取り扱いました。興味深かったのは小売業者とベンダーの力関係の逆転と、販売促進を利益に結びつけるのが難しいということなどです。また、実際のビジネスにおいては市場細分化(セグメンテーション)の考え方は使いこなしたいところなので、3つの方法については時折振り返りたいと思いました。
#19では販売以降を取り扱います。